ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
** Side Sachi ***
翌朝。
「シグレは一人で…?」
ケイタの言葉に、一瞬言葉を失う。
昨日あんな事があったばかりだというのに、あの人は。
「ねぇ、私…」
「追いかけたい、だろ?」
私の言葉に、ケイタは分かっているかのように尋ね返してくる。
「サチは、まぁそう言うだろうなって思ってたよ」
「じゃあ…!」
「…けど、追いかけられるのか?」
「っ…」
ケイタの指摘に反論できない。
実際のところ、シグレが攻略に本気で挑んでいるとしたら、ただ足手まといになるだけ。
いくらシグレに鍛えてもらったからといって、実戦となれば話は別。
そんなことは分かっている。
「…正直なところ、そういう意味では俺たちも追いかけるのは反対だ」
「そうだな。俺たちが閉じ込められた時に、正直思い知らされたよ…シグレとの実力差ってやつ」
「それに、シグレが助けてくれた命だから、無駄にするわけにいかない。それはサチだって同じだろ?」
テツオ、ササマル、ダッカーの言葉に言い返せなかった。
彼らの言っていることもわかるし、私が無理にシグレのいる場所に飛び込めば危険は大きいだろう。
「…だったら、俺とアスナが同行するっていうのは、どうだ?」
歯痒い思いをしていると、その晩はお礼も兼ねて泊まってもらっていたキリトに提案される。
「俺と、アスナで、サチを守る。その上でシグレを探す。安全マージンは考慮するし、絶対に無茶はさせない…どうだ?」
「でもなぁ…」
キリトの提案にケイタは渋る。
実際のところ、彼らはキリトやアスナの実力をよく知っているわけではない。
だから、守るといっても彼ら自身が伏してしまえば、その瞬間私が危険なのでは、と。
「…それにきっと、無理に止めていたら、きっと1人ででも飛び出して行っちゃうわ…そうでしょ?」
「……そうかも」
アスナの言葉に私は申し訳なくなるも、それを否定できなかった。
ほんの少しとはいえ、彼を知って、その内に芽生えたこの想いは、捨てたくないと思ってしまったから。
「…貴女の想いも分かるから、今は味方してあげる」
「ありがとう…アスナ」
小声でそう言葉を交わす。
女同士の会話だから、他の皆に聞かれたくなかった。
「…やれやれ、こっちの負け、だな」
「ケイタ…」
本当にやれやれ、といった様子で頭を掻くケイタ。
「…ごめんね、我侭言って」
「いいよ。ただ絶対に…皆で生きて、ここに帰って来いよ?」
「うん。絶対に帰ってくるから…シグレと一緒に」
そうして、私は月夜の黒猫団に見送られ、キリト、アスナと一緒に行動することとなった。
ギルドホームを出て。
「…ところで、どうやって追いかけるの?」
アスナの問いに、考えあり、と言わんばかりに。
「もしあいつが攻略を進める気なら、攻略組の足に合わせることなくどんどん上層に進んでいくはずだ。だったらおそらく今は…」
「…49層」
「そんなところのボスに1人でなんて…そんなことしたら…!」
「あぁ…いくらシグレでも危険すぎる。急ごう!」
キリトの言葉が真実かどうかは分からない。
けど、それでも可能性があり、それに命の危険が伴っている以上は、行かなくてはならない。
*** Side Sachi End ***