ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第23話:ワガママと、不安 / Sachi

** Side Sachi ***

 

 

 

翌朝。

 

 

「シグレは一人で…?」

 

 

ケイタの言葉に、一瞬言葉を失う。

昨日あんな事があったばかりだというのに、あの人は。

 

 

「ねぇ、私…」

「追いかけたい、だろ?」

 

 

私の言葉に、ケイタは分かっているかのように尋ね返してくる。

 

 

「サチは、まぁそう言うだろうなって思ってたよ」

「じゃあ…!」

「…けど、追いかけられるのか?」

「っ…」

 

 

ケイタの指摘に反論できない。

実際のところ、シグレが攻略に本気で挑んでいるとしたら、ただ足手まといになるだけ。

いくらシグレに鍛えてもらったからといって、実戦となれば話は別。

そんなことは分かっている。

 

 

「…正直なところ、そういう意味では俺たちも追いかけるのは反対だ」

「そうだな。俺たちが閉じ込められた時に、正直思い知らされたよ…シグレとの実力差ってやつ」

「それに、シグレが助けてくれた命だから、無駄にするわけにいかない。それはサチだって同じだろ?」

 

 

テツオ、ササマル、ダッカーの言葉に言い返せなかった。

彼らの言っていることもわかるし、私が無理にシグレのいる場所に飛び込めば危険は大きいだろう。

 

 

「…だったら、俺とアスナが同行するっていうのは、どうだ?」

 

 

歯痒い思いをしていると、その晩はお礼も兼ねて泊まってもらっていたキリトに提案される。

 

 

「俺と、アスナで、サチを守る。その上でシグレを探す。安全マージンは考慮するし、絶対に無茶はさせない…どうだ?」

「でもなぁ…」

 

 

キリトの提案にケイタは渋る。

実際のところ、彼らはキリトやアスナの実力をよく知っているわけではない。

だから、守るといっても彼ら自身が伏してしまえば、その瞬間私が危険なのでは、と。

 

 

「…それにきっと、無理に止めていたら、きっと1人ででも飛び出して行っちゃうわ…そうでしょ?」

「……そうかも」

 

 

アスナの言葉に私は申し訳なくなるも、それを否定できなかった。

ほんの少しとはいえ、彼を知って、その内に芽生えたこの想いは、捨てたくないと思ってしまったから。

 

 

「…貴女の想いも分かるから、今は味方してあげる」

「ありがとう…アスナ」

 

 

小声でそう言葉を交わす。

女同士の会話だから、他の皆に聞かれたくなかった。

 

 

「…やれやれ、こっちの負け、だな」

「ケイタ…」

 

 

本当にやれやれ、といった様子で頭を掻くケイタ。

 

 

「…ごめんね、我侭言って」

「いいよ。ただ絶対に…皆で生きて、ここに帰って来いよ?」

「うん。絶対に帰ってくるから…シグレと一緒に」

 

 

そうして、私は月夜の黒猫団に見送られ、キリト、アスナと一緒に行動することとなった。

ギルドホームを出て。

 

 

「…ところで、どうやって追いかけるの?」

 

 

アスナの問いに、考えあり、と言わんばかりに。

 

 

「もしあいつが攻略を進める気なら、攻略組の足に合わせることなくどんどん上層に進んでいくはずだ。だったらおそらく今は…」

「…49層」

「そんなところのボスに1人でなんて…そんなことしたら…!」

「あぁ…いくらシグレでも危険すぎる。急ごう!」

 

 

キリトの言葉が真実かどうかは分からない。

けど、それでも可能性があり、それに命の危険が伴っている以上は、行かなくてはならない。

 

 

 

*** Side Sachi End ***


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