ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
その後、シグレとストレアの2人は町に戻っていた。
というのも、シグレがメインで使っていた武器を失ったから。
といっても、今まで使っていたのも店売りだったので、この町で買えば何の問題もないのだが。
「その…シグレ?さっきは…ごめんね。取り乱して…邪魔しちゃった」
「…別にいい。また挑めば済む話だ」
ストレアの言葉に、シグレは彼女の表情を見ずに返す。
その様子に、ストレアはシグレが怒っているのだろうと考え、いつもの調子で強く出られなかった。
実際のところは、シグレもまたストレアを気遣って見ていなかっただけなのだが。
「…それより、いくつか聞きたいことがある」
「うん…」
シグレはストレアに言うが、やはり返ってくる声に覇気がない。
溜息を吐きながら、けれどどうしたらいいか分からず、静かに二人は宿へと向かった。
そうして、二人部屋を取り。
「…それで、だ。今日はどうした?いつもなら、あそこまで強く止めたりはしなかったろう」
「それは…」
ストレアはシグレの言葉に一瞬止まる。
シグレが疑問に感じていたこと、それはあのボスと対峙した時の怯えようだった。
二人でボスと対峙するのは初めてではない。
だが、あそこまで怯えるのはおかしいと思ったのだ。
「……言い辛いことか?」
シグレの言葉に、ストレアは頷いた。
「なら、無理には聞くつもりはない…だが、一つだけ。礼を言っておく」
「え…?」
シグレの言葉に意外そうに顔を上げる。
ストレアは疑問だった。
シグレにとっての目的を邪魔したのに、なぜお礼を言われるのか、と。
「なんで…お礼?」
「…単純なことだ。どういう理由かは知らんが、お前の行動で、俺は命を救われた…礼を言うのは当然かと思っていたが」
そういえばこれで二度目だな、と苦笑するシグレ。
ストレアはその様子に俯いてしまう。
自分が悪いはずなのに、彼は私を責めない。
それどころかお礼さえ言われてしまう。
「ごめん、ごめんね…シグレ…!」
そんな今の状況にストレアは俯いたまま、目頭が熱くなることを感じていた。
それが何かなど、ストレア自身にはわかっていた。
「…落ち着け、俺は怒っていない」
「でも…」
「言われた本人がいいと言っている。それ以上に責める理由がどこにある」
ストレアの様子に、やれやれといった感じでシグレは彼女の頭を撫でる。
「だが、敢えて言うなら早くいつもの調子に戻れ。明日までに戻らなければ…その時は怒る」
「うん、うん……!」
泣きながら、シグレの言葉に頷くストレア。
その声色は、泣きながらというのもあるが、徐々にいつもの調子に戻っていた。
「…でもねシグレ。こういう時は、抱きしめてほしかったかな」
「そういうことは、大事な人が出来たらやってもらえばいいことだ…誰にでも頼むことではない」
ストレアの言葉にシグレは苦笑。
それにストレアは。
「分かってないなぁ、シグレは」
「…は?」
ストレアは視線を上げ、涙を拭いきれていない視線でシグレを見る。
シグレはどうしたのかとストレアを見返すと、彼女は笑みを浮かべながら。
「隙ありっ」
「っ…」
ストレアは顔を寄せ、シグレの唇に自分のそれを押し付けた。
触れるだけのそれですぐに離れるも、顔を寄せたまま。
「ね…今日もう少しだけ、時間…あるかな?」
「…何だ?」
至近距離…吐息がかかる距離で。
「…全部、話すから…シグレに聞いてほしいんだ」
決意に満ちたストレアの瞳に。
「……分かった」
シグレは一つ、頷いた。
今日の夜は、少しだけ長くなりそうだった。