ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第32話:決意 / Strea

*** Side Strea ***

 

 

 

あれから、どの位経っただろう。

数分とも、数時間ともとれる感覚。

 

 

「…っ」

 

 

次の瞬間、アタシの中にある、何かが切り離された気がした。

そして数秒後、アタシの体は、何かに弾き飛ばされた。

けれど体に衝撃は来ない。

代わりに感じるのは、温かさ。

シグレが支えてくれたのかな?

 

 

「…おい、聞こえるか?」

「ん…」

 

 

微睡みに身を委ねていると、シグレに声を掛けられ、目を開く。

目を閉じた先には、心配する様子も何も表情に出ていない、いつものシグレの表情。

少しくらい心配してくれてもいいんじゃないかなぁ、と思ったのは秘密だ。

 

 

 

次の瞬間、私はある違和感に気づく。

私の記憶のメンテナンスが中断されていたのだ。

 

 

「え…なんで……?」

 

 

それだけではない。

カーディナルからのアクセスが来なくなっていた。

きっと、もうアタシからのアクセスもできないだろう。

つまりそれは、アタシという存在が完全にカーディナルから切り離されてしまったわけで、早い話NPCになってしまったようなものだろう。

 

 

「シグレ…?」

「…どうやら、うまくいったのか」

 

 

シグレの名前を呼ぶと、シグレは小さく笑みを浮かべる。

その様子に、アタシも笑みが零れた。

 

 

「…そうかも。メンテナンスが中断されてるし」

 

 

手を伸ばし、シグレの頬に掌をあてる。

シグレの手はアタシを支えているので、やりたい放題だ。

 

 

「ところで、カーディナルにアクセスできなくなってるんだけど…?」

「…半ば強引に、切断したからかもしれないな」

「強引に?」

 

 

アタシが尋ねると、シグレは傍らに落ちた剣を拾い。

 

 

「…こいつでな」

「……え?」

 

 

つまり、シグレは刀でアタシとカーディナルの接続を、斬った?

その説明があまりに無茶苦茶すぎて。

 

 

「あ、あっはははは!そんな無茶苦茶だよシグレ!!」

 

 

思わず笑ってしまう。

普通、もっとこうキーを操作するとかいろいろあると思っていたのに、予想以上に原始的な方法だった。

 

 

「……でも、カーディナルから切り離されたってことは、私はもうMHCPじゃないね、きっと」

「だとすれば、立場的にはNPCとさほど差異はないか」

 

 

実際、プレイヤーの監視システムへのアクセスもできなくなってる。

これじゃプレイヤーと大差ないんじゃないかな。

 

 

「アタシ…シグレに傷物にされちゃった」

「…人聞きの悪いことを言うな」

「あぅっ…」

 

 

意味深な感じで呟くと、シグレに額を小突かれ、声が出てしまう。

でも実際のところ、プログラムは切り離されたのだから間違ってはいない。

いないんだってば。

 

 

「アタシのプログラム、どうなっちゃうんだろ…いくら切り離されてもカーディナル下にあったら、いずれは消えちゃうんじゃ…」

「……それなら、俺のSAOのセーブデータに保存すればいい」

 

 

呟くと、シグレは答えを返す。

その答えにアタシはもう一度シグレを見る。

 

 

「いいの?それってつまり、アナタとずっと行動を一緒にすることになっちゃうし、迷惑なんじゃ…!」

 

 

それは本心だった。

シグレの提案を受け入れれば、アタシは確かに消えずに済むかもしれないけれど、迷惑をかけてしまうのではという不安はあった。

けれど、それに対し。

 

 

「……もう慣れた」

「そっか…じゃあ、移行するね」

 

 

目を閉じて言うシグレに、感謝を込めながら移行を開始する。

きっと彼のアイテムストレージに私は入ることになるだろう。

 

 

 

やがて、移行が完了し。

 

 

「それにしても、そっかそっかー」

「…なんだ」

「シグレはすっかり、アタシがいないとダメになっちゃったんだなーって」

「……もう寝ろ」

 

 

アタシの言葉に、シグレはアタシを下ろし、剣を拾い上げて立ち上がった。

やっぱり、根っこは素っ気ないなぁ。

 

 

「もう、シグレのいけずー」

 

 

アタシも立ち上がり、シグレの後を追う。

 

 

「シグレ…アタシを助けてくれて、ありがとね」

「…借りを返しただけだ」

 

 

アタシがやったことに比べれば、シグレがやったことは十分すごいことなんだけどなぁ。

 

 

「ね…今日は一緒に寝よっか」

 

 

だから、何があってもシグレは最後まで、アタシが守ってあげるからね。

 

 

 

*** Side Strea End ***


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