ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうして、なんだかんだ過ごしながら、βテスト最終日。
仮想世界とはいえ、MMORPGは他プレイヤーとの交流を楽しむ一面がある。
けれどシグレは誰とも交流を深めることなく、ただ戦い続けていた。
その甲斐あってか、そこそこレベルが上がっていた。
「……」
テストということもあり、進入可能な場所も限られていて、相手にする敵が大体見覚えのあるものばかりになってきていた。
その飽きからか、周りから敵の気配が消えたところで、片手剣の刀身を眼前に持ってくる。
目の前に自分のアバターの顔が映る。
現実とそれほど変わらない顔。
剣の方はすっかり刃こぼれを起こしていて、よくここまで持ってくれたものだと感心する。
「……もう少し、やるか。どうせ最終日だしな」
あと数時間でテスト期間終了。
そうすれば、この世界との関りは終わる。
他のテスター達はログアウトを開始しているのだろうか、などと考える。
そんなことを考えていると。
――βテスト終了5分前になりました。プレイヤーの皆様はログアウトをお願いいたします。テストへのご参加ありがとうございました――
無機質な声のアナウンスが流れる。
これで、仮想世界との触れ合いはすべて終わり。
そう思いながら、ログアウトをする。
「……っ」
ログアウトをし、頭からナーヴギアを外す。
起き上がり、目を閉じて息を整える。
そんな風に静かにしていると。
―カタン。
小さく音を立てて、何かが落ちる音が室内に響く。
「……?」
何かと思い、音がした方…玄関へと向かう。
そこには、小さな封筒が落ちていた。
「…」
封筒を拾い上げ、封を切りながら戻る。
そして、中身を取り出すと、一枚の手紙と。
「これは…」
そこに同封されていたのは、一本のゲームソフト。
初回ロットとして1万本しかない、けれど予約が非常に多く競争率が高いソフト。
ソードアート・オンライン。
その一本が、同封されていた。
「……」
どういう事なのかと、同封された手紙を見れば。
――正式サービスに参加の上、仮想環境での戦い方を確固たるものとしてほしい。
とだけ、書かれていた。
「…」
どういう事なのか、いよいよ疑問が大きくなる。
こんな事をすることが一体何の役に立つのかがまるで分からない。
とはいえ、他に依頼があるわけではない。
だとすれば、報酬すら不明だが、今はこの任務に就く事が、自分のすべき事。
「……いいだろう」
目を閉じる。
現実だろうが、仮想だろうが、時雨には関係ない。
任務とあらば、戦い、殺す。
明確な標的がないのなら、ただ、目の前に立ち塞がる者全てを打ち倒す。
「…」
そして、叶うのならば。
ただ打ち倒すのではなく、かつて自分を守ってくれた父のように。
誰かを守るための力を、得るために。
「……」
そこまで考え、時雨は目を開く。
ここまでしてきた事が、そんな事で帳消しになるとは思わない。
いずれは、報いを受ける時が来るかもしれない。
その最期が、ここで来るのだとしても。
…ただ、戦う。
それしか、出来ることはないのだから。