ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第4話:今、できること

そうして、なんだかんだ過ごしながら、βテスト最終日。

仮想世界とはいえ、MMORPGは他プレイヤーとの交流を楽しむ一面がある。

けれどシグレは誰とも交流を深めることなく、ただ戦い続けていた。

その甲斐あってか、そこそこレベルが上がっていた。

 

 

「……」

 

 

テストということもあり、進入可能な場所も限られていて、相手にする敵が大体見覚えのあるものばかりになってきていた。

その飽きからか、周りから敵の気配が消えたところで、片手剣の刀身を眼前に持ってくる。

目の前に自分のアバターの顔が映る。

現実とそれほど変わらない顔。

剣の方はすっかり刃こぼれを起こしていて、よくここまで持ってくれたものだと感心する。

 

 

「……もう少し、やるか。どうせ最終日だしな」

 

 

あと数時間でテスト期間終了。

そうすれば、この世界との関りは終わる。

他のテスター達はログアウトを開始しているのだろうか、などと考える。

そんなことを考えていると。

 

 

 

――βテスト終了5分前になりました。プレイヤーの皆様はログアウトをお願いいたします。テストへのご参加ありがとうございました――

 

 

 

無機質な声のアナウンスが流れる。

これで、仮想世界との触れ合いはすべて終わり。

そう思いながら、ログアウトをする。

 

 

「……っ」

 

 

ログアウトをし、頭からナーヴギアを外す。

起き上がり、目を閉じて息を整える。

そんな風に静かにしていると。

 

 

―カタン。

 

 

小さく音を立てて、何かが落ちる音が室内に響く。

 

 

「……?」

 

 

何かと思い、音がした方…玄関へと向かう。

そこには、小さな封筒が落ちていた。

 

 

「…」

 

 

封筒を拾い上げ、封を切りながら戻る。

そして、中身を取り出すと、一枚の手紙と。

 

 

「これは…」

 

 

そこに同封されていたのは、一本のゲームソフト。

初回ロットとして1万本しかない、けれど予約が非常に多く競争率が高いソフト。

ソードアート・オンライン。

その一本が、同封されていた。

 

 

「……」

 

 

どういう事なのかと、同封された手紙を見れば。

 

 

――正式サービスに参加の上、仮想環境での戦い方を確固たるものとしてほしい。

 

 

とだけ、書かれていた。

 

 

「…」

 

 

どういう事なのか、いよいよ疑問が大きくなる。

こんな事をすることが一体何の役に立つのかがまるで分からない。

とはいえ、他に依頼があるわけではない。

だとすれば、報酬すら不明だが、今はこの任務に就く事が、自分のすべき事。

 

 

「……いいだろう」

 

 

目を閉じる。

現実だろうが、仮想だろうが、時雨には関係ない。

任務とあらば、戦い、殺す。

明確な標的がないのなら、ただ、目の前に立ち塞がる者全てを打ち倒す。

 

 

「…」

 

 

そして、叶うのならば。

ただ打ち倒すのではなく、かつて自分を守ってくれた父のように。

誰かを守るための力を、得るために。

 

 

「……」

 

 

そこまで考え、時雨は目を開く。

ここまでしてきた事が、そんな事で帳消しになるとは思わない。

いずれは、報いを受ける時が来るかもしれない。

その最期が、ここで来るのだとしても。

 

 

…ただ、戦う。

それしか、出来ることはないのだから。


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