ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
アスナだけに一悶着あったが、外に出る。
少しだけぎこちなかったアスナも、少し時間が経てばいつも通りだった。
「……」
シグレは外に出たはいいが、別に目的があるわけでもないので、顎に手を当てて考える。
考えるテーマは、どうやって時間を潰すかについて。
「…どうやって時間潰そうか、考えてるでしょ?」
「………」
してやったり、という言葉が合いそうな表情でアスナに言われ、シグレは無表情に、けれど反論もできずに押し黙る。
一人であれば街の外に出るなり、そうでなければ宿で休んだりできるのだが、二人、まして女性と一緒ではどう行動すればいいかまるで分らなかったのだ。
「もしよければだけど…カフェでもいかない?この層で結構いいお店があるの」
「…構わんが」
シグレが考えていると、アスナが案を提示する。
その案に、シグレも断る理由がなかったので単純に応じることにした。
そうして、街中の喫茶店にて。
「……」
現実でもこういった店に縁がなく、シグレは辺りを見回す。
その様子は目新しい物が気になる子供そのもので。
「もう、あんまりきょろきょろしない!」
「っ…」
アスナに軽く小突かれ、シグレは驚きで視線を戻す。
店内にいた別の客に軽く笑われる。
そんなこともあり、とりあえず席に着く。
「……」
とりあえず、メニューを手にするシグレだが。
「…コーヒーで」
無難な注文をするのだった。
それにアスナも乗り、結局はコーヒー2つの注文となった。
「それにしても…貴方、その様子だと仲いい女の子とかいないでしょ。一緒にいたストレアさんとも少し距離置いてるみたいだし…」
「む…」
アスナの言葉に図星を突かれ、言葉を失うシグレ。
それを面白がられるかとも思ったのだが、アスナは面白がる様子もなく、カップを両手で持ってその中に視線を落としながら。
「…そっか、フリーなんだ」
そう呟いていた。
アスナの言葉はシグレにも届いていたのだが。
「……」
それ以上は何も言わないのだった。
シグレとて、アスナの言わんとすることが分からないほど鈍感ではない。
とはいえ、それに対してどう返すべきかわからなかったシグレはそれ以上は何も言わない。
というより、言えない。
けれど、アスナはそれを分かっていたといわんばかりに、それ以上の言葉を求めない。
その代わりに。
「シグレ君。私…負けないからね。サチさんにも、ストレアさんにも」
「……そうか」
宣戦布告ともとれる宣言を聞いたシグレは、ただ一言返すだけで精一杯だった。