ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
その日の夜。
「……」
シグレは一人ベッドから起き上がり、刀を手に取る。
今日作ったばかりの刀。
窓から入る月明かりに照らされた刀身は妖しく光り、妖刀というに相応しい輝きに見える。
明日の事もあってか、皆はもう休んでいるのだろう。
宿のロビーにも彼らはいなかった。
それが、シグレにとっては好都合だった。
刀を鞘に納め、静かに宿を出る。
そうして、宿を出て少し歩いたところで。
「…やっぱり、来ると思ったよ」
そうして声をかけてくる、聞きなれた声。
「…ストレアか。どうした、もう夜も遅いが」
「それはこっちの台詞だよ。明日討伐に行くんでしょ?」
ストレアの言葉に一瞬シグレは言葉を止める。
けれど、ストレアは分かっていたかのように。
「…行くつもりなんでしょ?……今から」
指摘され、溜息しか出ないシグレ。
それが何よりの肯定だとストレアには見抜かれていて。
「…やっぱりね」
「……何故わかった?」
「アナタの癖みたいね。図星突かれると黙っちゃうんだもん。それにアタシは一度同じ目に遭ってるんだよ?忘れちゃった?」
実際そうなのだから何も言えなかった。
付き合いが長いと、行動を読まれやすくなるのは考え物だとシグレは思いながら、ストレアに視線を向ける。
「アタシも連れて行って」
「……」
向き直って真剣な表情になるストレアにシグレは一瞬言葉を失うが。
「…俺が何のためにこんな時間に一人で動き出しているかを察してほしいんだが」
「分かってるよ。自分を犠牲にしてでも、生存者を増やすため…だよね」
「なら…」
「でもアタシは、アナタを犠牲にはさせないよ」
ストレアはシグレの言葉を遮る。
それはまるで、何を言われても考えを変えるつもりはない、と言わんばかりで。
「アナタが自分を呈して皆を守ろうとするのと同じだよ。アタシは、アナタを守るって…決めたから」
「…何故そこまで」
そこまで言われ、シグレは尋ね返す。
なぜ自分なんかに、と。
それに対してストレアは顎に指をあて。
「んー…内緒っ」
面白そうな笑みを浮かべながら、そんな風に答えを返した。
その言葉にシグレは毒気を抜かれ。
「…分かった。但し…俺の言うことには従ってもらう。いいな?」
「わかった。でもその代わり…覚えておいて。アナタが死んだら…アタシも自殺するつもりだから」
「……覚えておこう」
ストレアの言葉に、シグレは彼女を置いていきたいと考えたが、ここで言い争う時間もないと判断し、そのまま二人、向かうことになった。