ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
*** Side Asuna ***
朝からストレアさんがいない。
それ自体は、ひょっとしたら買い物かも、とか一瞬気楽に考えた。
けれど、そうだとしたらあまりに時間が早すぎる。
「それに…」
キリト君が言っていた、シグレ君がいないという事。
それもまた怪しい。
経緯はどうあれ、シグレ君を死の淵から救い、彼と行動を共にしているストレアさんと共に姿を消しているという事。
この事実から、二人は共に行動している可能性が高い。
だとすれば。
「まさか…!」
でもいくらなんでもたった二人で、規模の大きいギルドのアジトに乗り込むなど、命知らずにもほどがある。
シグレ君は赴くかもしれないが、少なくともストレアさんが共に行動しているなら止めるだろう。
そう思い、その可能性を除外する。
…除外、しようとする。
けれど、しきれない。
これまでフロアボスを何度も単独で撃破した彼のことだ。
死地に赴くこと自体にそれほど抵抗はないのだろう。
だからこそ、可能性を除外しきれなかった。
とはいえ、町のどこにも二人の姿は…
「…っアスナ!」
そう思い探していると、どこからか名前を呼ばれる。
声の方に振り返れば。
「ストレアさん…っ何があったの?」
息も絶え絶え、という言葉が余りに似合いすぎる様子のストレアを見つける。
極度の疲労なのか、息をあがらせながら、装備は消耗し、全身に傷が見て取れる。
いかにも、何かありました、と言わんばかりだった。
「お願い、アスナ…このままじゃシグレが、シグレが……!」
「落ち着いて、ストレアさん!いったい何が…」
ストレアさんに駆け寄ると、ストレアさんに縋るように抱き着かれ、そのまま俯いてしまい表情は窺えない。
けれど、いつもの明るい彼女からすれば、この様子は尋常ではない。
肩を震わせながらシグレ君の名を呼ぶストレアさん。
「シグレが、死んじゃうよ……!」
「っ……」
何とか言葉を繋ぐストレアさんに、私は何かを言う余裕を失くしてしまった。
その後、後から合流したキリト君、サチさんと共にストレアさんを何とか宿に連れていき、話を聞いた私達は言葉を失った。
きっとそれは無理もない。
危険ギルドを討伐するため、アジトに乗り込む作戦。
それを遂行するために大規模な討伐隊が組まれるほどのアジトに、たった二人で乗り込むという命知らずな行為。
それだけなら、いやそれだけでも十分に問題だが、それにもかかわらずストレアさんの安全を確保するために、自分が残り、彼女だけを転移させるということ。
「つまり…俺達を危険から遠ざけるためとか言いながら、自分一人で戦ってるってのか」
苦虫を潰すような表情で言うキリト君。
ストレアさんはただ俯いていた。
それは心配だけではなく、シグレ君を止められなかったという罪悪感もあるのかもしれない。
「シグレ…どうしてこんな……!」
サチはシグレ君の無事を祈るようにしながら、ただ震えていた。
皆が皆静かにそれぞれの思いを吐露する中、私はレイピアを手に立ち上がる。
「アスナ…?」
「…私、行くわ。シグレ君のところに」
ストレアさんが呼ぶ私の名前は弱々しかったが、私はそれに背を向けながら答える。
これからする事など、一つしかない。
このままこうしていても、彼が安全に戻ってくる可能性が上がるわけではない。
ならば。
「…行って、シグレ君を連れ戻すの。お説教が必要みたいだから」
これしかないだろう。
当分は監視をつける必要もあるだろう。
ストレアさんも一緒に。
「なら、俺も行くよ…あいつに、俺たちが守られるだけの弱い奴じゃないってことを教える必要がありそうだ」
私の言葉に、キリト君が同意してくれる。
君なら、そういう風に言うって思ってたよ。
「…さ、ストレアさん。案内してくれる?」
「っ…うん!」
ストレアさんに案内をお願いし、彼のもとに向かう。
必ず無事に連れ戻し、お説教をするために。
*** Side Asuna End ***