ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうして時は過ぎ、日が暮れる頃。
「ただいまー」
キリトの声。
どうやら買い出しに行っていたらしく、戻ってきたようだ。
「……」
シグレは玄関まで荷物を受け取ろうと向かい、キリトの様子を見て一瞬固まる。
溜息を吐きながら頭を押さえて状況判断。
「…現実に戻ったら、警察に行くつもりか?」
キリトがおぶっている少女。
白いワンピースに身を包んだ黒髪の少女がキリトの背におぶさったまま眠っていた。
「おい…おい、違うぞ!誘拐してきたわけじゃない!森で倒れてたんだ!」
「…わかった、話は現実の警察でしっかりな」
「だから違うって!」
疑うシグレと必死に弁明するキリト。
その声に何だろうと出てきた女性陣…アスナとサチも追及する側に回り、キリトの誤解が解けるまでに小一時間を要した。
その後、キリトの弁明がようやく通じた頃。
「……話だけを聞く限りでは、確かに妙だな」
「だろ?」
キリトの説明にシグレを始めとした皆も違和感を感じる。
先ず、このゲームにはハラスメントコードというものが存在する。
一番分かりやすい例として、男性から女性に対する性的ハラスメント。
コードが発動した場合、被害者側は加害者に対し一定の罰則を与えることができる。
それと同時に、加害者側にも警告が出るはずなのだ。
しかしながら、キリトが気絶した少女を抱き上げても警告が出なかったらしい。
「システムの故障かとも思ったんだが…どうだろうな?」
キリトが可能性を提示する。
割と低めの可能性だが、ゼロではない。
それにシグレが頷き。
「…試してみるか?」
「どうやって?」
シグレが言いながら、隣に座っていたアスナに徐に手を伸ばし、肩に触れる。
「…本当に故障か?」
しかし、警告は出なかった。
その事にシグレはアスナに尋ねるが。
「…どうかしら。私はシグレ君に対してコード規制解除してるから」
さらっと返され、シグレは肩から手を放す。
これでは実験にならない。
というかいつの間に。
というか何故。
色々とシグレは思うところがあったが、それ以上は追及してはいけない、と直感的に悟った。
「…聞くが、サチ。そっちは…」
「あ、うん…私も、シグレに対しては…」
顔を赤くしながら俯くサチに軽く頭を押さえるシグレ。
ちらり、とアスナを見れば、平然と言ってのけた割には頬が軽く赤く染まっている。
「……すまない、俺では確認の方法が無い」
「いや、謝られてもな」
シグレに対しキリトは苦笑。
単純に知っていたのだろうとシグレは察した。
考えてみれば、アスナとサチはシグレと合流するまでキリトと行動していたのだから自然である。
「ちなみにそういう意味だと」
キリトがアスナに手を伸ばすと、肩に触れそうな距離に近づいた瞬間。
「っ…と。こうなる」
キリトの手に電流のようなエフェクトが発生した瞬間、キリトの眼前に表示されるメッセージ。
つまり、ハラスメントコードが発動し、警告が表示された、という事になる。
「…これ以上は追及はしない。話題が逸れるからな」
その様子に、シグレは軽く下を向いて考えを振り払いながら、話題を元に戻そうとする。