ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第54話:謎の少女 - III

翌朝。

 

 

「…起きていたか」

「うん、おはようシグレ君。キリト君は?」

「あいつはまだ起きていない。用があるなら叩き起こすが?」

 

 

シグレが起きると、アスナとストレアも起きていて、出かける準備は出来ているようだった。

キリトが起きていないことを気にしたアスナがシグレが尋ねるが、刀に手をやりながら『叩き起こす』と言うシグレに軽く冷や汗を流す。

 

 

「…抜刀はしない、よね」

「さすがにそこまでする気はないが」

「だ、だよね!あ、あはは…」

「……それはそうと、随分静かだな」

 

 

そんな会話を交わす最中に静かになっているストレアに声をかけるシグレ。

するとストレアは顔を上げ。

 

 

「…ごめんね、シグレ」

 

 

と一言、シグレに謝罪をする。

それに対し、本当に理由が分からないシグレは疑問符を浮かべるのみ。

 

 

「……何がだ?」

「あの時、私が足手纏いになったから…」

 

 

ストレアのいうあの時、というのはアジトに二人で奇襲をかけた時の事だろうと察する。

こんな所で死なせるわけにはいかない、と思い転移をさせたシグレだが、それに責任を感じさせてしまっていたらしい。

 

 

「…お前が謝ることじゃない。あれは俺の独断だ」

「でも…私がもっと上手く立ち回れれば…シグレをあんな場所に一人にしなくて済んだんじゃないかって思うと…っ!」

 

 

俯いて肩を震わせ始めるストレアに溜息交じりに頭を掻くシグレ。

 

 

「ストレア」

 

 

シグレは、はっきりとストレアの名を呼ぶ。

次に言われる罵詈雑言を覚悟してか、恐る恐る顔を上げるストレア。

ストレアから見たシグレの表情はいつも通りで、それが少しばかり怖く感じた。

 

 

「…さっきも言ったが、俺は怒っていない」

「……ほん、とに?」

「あぁ…それに、お前がどれだけ善戦しようと、俺は最初からああするつもりだった」

「なんで…」

「忘れたか?俺はそもそも一人で行くつもりだったんだが」

 

 

苦笑交じりの言葉にあ、と思い出したように言うストレア。

 

 

「そっか、そうだったね。でもそれって、私もアスナとサチと同じでシグレを怒っていいんじゃないかな?」

「…それを隣にいるアスナが許せばな」

「……なんか、アタシの立場が一番惨めじゃない?何これ」

 

 

いつも通りのストレアにクスクスと笑みを零すアスナに、やれやれ、といった感じのシグレ。

どうやらサチの説教もありながら、自分を責め続けていたのが不調の原因だったようだ。

そんな会話をしていると。

 

 

「おはよう」

 

 

キリトが目を覚ましたのか、部屋から出てきた。

 

 

「起きたか」

「あぁ…サチ達はまだ、みたいだな」

 

 

シグレが声をかければ、少女の事を気にしているのか、サチ達がいないことにすぐに気づくキリト。

 

 

「…それにしても、危なかったな」

「ん…何でだ?」

「なかなか起きてこないお前に痺れを切らしたアスナが、こいつでお前を叩き起こせと」

「ちょっと…言ってないわよ!?」

「アスナこわーい」

「ストレアまで!?もう…!」

「あ、あはは…ちなみにシグレ、本気で実行するつもりじゃなかった、よな?」

「…さてな」

「そこで濁すな…怖いから」

 

 

会話の中でシグレの冗談から始まる、平和な一時。

その騒ぎで、というわけではないだろうが。

 

 

「みんな…あの子が、目を覚ましたよ!」

「本当か!?」

 

 

部屋を飛び出すように出てきたサチが、慌てたように言う。

キリトの確認に頷きながら、サチは一度部屋に戻り。

 

 

「…大丈夫?歩ける?」

 

 

少女を支えるようにしながら連れてくるサチ。

その少女の姿を、おそらく初めて見るであろうストレアは。

 

 

「え…?」

 

 

驚いたように声を漏らす。

 

 

「……ユイ?」


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