ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
少女…ユイの名を呼ぶストレアだが、ユイはストレアの事がわからないのか、サチの背後に隠れてしまう。
隠れてしまったユイに対し、ストレアは伸ばしかけた手を下ろし、次の言葉を繋がずに黙ってしまう。
「…知っているのか?」
シグレの問いに、ストレアは頷く。
「この子は…ユイ。私と同じメンタルヘルス・カウンセリングプログラムの試作1号…アタシの姉にあたる…AIだよ」
「…え、AI…?」
ストレアの説明に、隣に座っていたアスナが驚いた表情でストレアを見返す。
どうやらそれはキリトも同じだったようだ。
AI…人工知能というのは、世間の流れとしては問題解決の手順としての研究が主流で、人格をコンピュータで再現する事は含まれない。
その事もあってコンピュータにおける人格の形成はそれほど発展していないはずだった。
だからこそ、ストレアのような、それこそ人だと思えるレベルの存在がAIと言われても、そうですか、と信じるレベルにはならなかったのだ。
「…どうやら本当のようだ。尤も色々あって、今のこいつはカウンセリングプログラムとしては機能していないようだが」
「それはシグレがアタシを傷物にするからー」
「……だから言葉を選べと」
シグレの捕捉に茶々を入れ、再度シグレは溜息。
「よく分からないが…ストレアはこの子の事を知ってるんだよな?それなら…」
キリトの言葉にストレアは首を軽く横に振り。
「アタシとユイは完全に別枠で管理をされてたから、ユイに何があったかは分からないよ。ただ…こんな事って……」
「……プログラムで言うところのバグってことか?」
「もしそうなら、アタシにも同じ症状が出るはずだよ」
キリトの意見にストレアは否定で返す。
「…だとすると、何が……」
「ユイ本人に聞ければいいけど…その様子だと無理そうだし…」
皆が悩む中、キリトがユイに近づき。
「こんにちは。ユイ…でいいかな?…俺は、キリトっていうんだ」
キリトがユイに近づき、視線を合わせるためにしゃがんで話しかける。
サチの背後から、恐る恐る顔を出し。
「キ…ト……?」
「…ちょっと難しいかな?」
舌足らずな感じで、それでも何とかキリトの名を呼ぼうとするユイにキリトが苦笑する。
「呼びやすいように呼んでくれていいよ」
「ん…キ…ト……パパ」
「…んん?」
まさかそう呼ばれるとは思ってなかったのか、一瞬言葉を失うキリトだが。
「ダメ…?」
「…そんなことない。いいよ」
不安そうに言うユイにキリトがOKを出すと、嬉しさからかサチの背後から飛び出してキリトに抱き着き。
「パパ…!」
「はは……」
幸せそうな娘を抱きしめる父親、という構図に見える。
その様子は確かに家族のようで微笑ましいものだった。
「…そうなると、母親は誰になるんだ?」
「シグレがパパなら、アタシがママでもよかったんだけどねー」
「……誤解を招くようなことを言うな」
「…ストレア?」
「あ、はい、スミマセン」
「…本当に何があったの?」
軽く窘められただけで黙ってしまうストレア。
その様子に純粋に疑問が浮かぶアスナだったが。
「……アスナ」
「サチ?」
「知らない方がいいことっていうのも…あると思うんだ」
サチに言われ、無言で頷く。
これは逆らってはいけない何かだと、直感で察したらしい。
「とりあえず…食事にしようぜ。6人でさ」
純粋に、そうしたいと考えていたのか、あるいは話題を変えたいと思ったのか。
キリトの言葉に異を唱えるメンバーはいなかった。