ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そんなこんなで朝食を終え。
「それで、これからどうする…AIとはいえ、攻略を進める以上連れて行くのは無理がある気がするんだが」
「うーん…」
シグレの言葉にキリトが悩む声を上げる。
キリトがユイと打ち解けてからというもの、すっかりキリトにべったりで、今もキリトの隣で、肩に頭を預けて気持ちよさそうに眠っている。
実際のところ、全員がほぼ同じことで悩んでいた。
「ねぇストレア…この子は貴女みたいに戦えるわけじゃ…ないのよね?」
「…アタシも一から十まで知ってるとは言わないけど…厳しいかもしれない」
サチの言葉にストレアが悩むような声を上げる。
だとすれば、この先攻略に戻ることになった時にまた同じことで悩んでしまうことは容易に想像がついてしまう。
とはいえ、当初の予定通りはじまりの街に行くべきかというと、今となってはその理由は薄い。
あの時は、ユイがAIだということが分からなかったから、手掛かりを集めるという意味で意味があった。
しかし、その事実が分かっている以上、その意味が薄れてしまっていた。
「でも…記憶がない今のユイちゃんにとっては、いろいろ見て回るっていうのは…意味があるんじゃないかな」
「…そう、だな。俺もそう思う」
とはいえ、何も手を打たないよりはマシ、というべきか、アスナが当初の予定を再提案し、キリトも同意する。
シグレも、その提案に特に異論がなかったのか。
「…そうか」
一言だけ、小さく返した。
「ん…パパぁ……」
タイミングを計ったようにか、寝言でキリトを呼ぶユイに、キリトは軽く笑みを漏らす。
その様子は微笑ましいもので、家の中はほのぼのした雰囲気だった。
「…さて、俺は少し外にいる」
「どこに行くの?」
「狩りだ。いくら休みとはいえ、腕が鈍っては元も子もない…安心しろ。22層のどこかにはいる」
刀を手に持ち外に向かうシグレ。
けれど。
「それなら…私も行くわ」
「私も」
一人で行くことをアスナとサチが許すわけもなく。
彼女らも武器を装備し、シグレの後に続いた。
「…別にそこまで無茶にはならないと思うが」
「ねぇシグレ…こういうのなんて言うか知ってる?」
シグレの言葉にサチが笑顔で質問を投げかけ。
「…自業自得、っていうんだよ?」
「……」
答えを言うサチの笑顔の裏にある圧ともいうべき迫力に、シグレは視線を逸らすだけだった。
そうして、家の外に出る。
この層は基本的に長閑な雰囲気ということと、ほとんどソロで活動していた事もあり。
「はっ…!」
刀一振りで魔物をあっさりと倒してしまう。
ほぼ一撃で倒してしまうため、アスナとサチは出番がほとんどない状態だったりする。
その戦いぶりは、スキルに依存した戦い方というよりは。
「…シグレって、現実でも何かやってたの?」
「?」
敵のモンスターの気配がなくなったところで、アスナが尋ねる。
シグレは質問の意図を計りかねてか、納刀しながらアスナに視線を返す。
「貴方の太刀筋は、ただ攻略のためだけに突き進んできただけにしては、動きが完成されている…っていうか。私はそこまで詳しくないけど…」
「…そう、かも。ひょっとして剣道とか……」
アスナの考えながらのような言葉にサチも同意する。
その言葉に、シグレは一つ溜息を吐き。
「…まぁ、昔、剣道はやっていたが」
「へぇ…学校の部活、とか?」
「……さてな」
アスナの質問をシグレははぐらかす。
少しでも突っ込んだ質問になると、シグレは絶対に答えない。
「…そろそろ戻るか?キリトの娘も目を覚ます頃だろう」
「あ、うん…」
答えの代わりに、戻る提案をするシグレ。
その提案に異を唱える理由もなかったので、それ以上の追及はできなかった。
そんなこんなで戻り。
「…さて、どうする。まだ陽は高いが…行くか?」
「あぁ、そうだな」
シグレの提案にキリトも賛成し、第1層へと向かうこととなった。