ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第60話:過去 - I

「まずは、そうだな…アスナ。お前は俺に聞いたな。剣道をやっていたかどうか、と」

 

 

シグレの確認するような問いにアスナは頷く。

その確認にシグレも頷き。

 

 

「その問いに関しては、肯定で返す。一応家に道場がある家だったからな…厳しい中で親に鍛えられたりもしていた」

「…今は?」

「…それも話す」

 

 

サチの問いに保留で返し、言葉を続ける。

 

 

「…当時は辞めるつもりもなかったが、ある事件を期に、辞めざるを得なくなった」

「……ある事件?」

「死因はさておき、俺の両親が立て続けに死亡した……兄弟姉妹がいない俺は、それを期に一人になった」

 

 

あっさりと、いきなり言われれば驚く事実を話すシグレ。

しかし、それだけでは止まらず。

 

 

「…その後、ある家族に俺は引き取られることになった」

 

 

それ自体は別に不思議なことではない。

だからこそ、誰も何も言わなかった。

 

 

「だが、数日後…俺は孤児院に預けられることになった」

「…生活に困ってたところ、無理して引き取ったから?」

 

 

そのいきさつに、アスナが理由を推測で尋ねる。

一番考えられるのは、そうかもしれない。

しかし、シグレはそれを否定する。

 

 

「…おそらく違う。俺の親が持っていた土地、財産が欲しかっただけだろう…俺がその親戚の家に行っても、金の話ばかりだったからな…現に、後になってからだが、俺の実家はどこかの企業に売却されたと聞いた」

 

 

自重するように言うシグレ。

結局、シグレのいう親戚にとって、引き取った彼は、ただの荷物でしかなかったということになる。

 

 

「そうして、最低限の生活道具と、親の形見の木刀一本のみを持たされ、俺は半ば捨てられるように孤児院に預けられた」

「…私はその孤児院で働いていたの。その時、彼を預けて去っていくあの人たちの顔は忘れられないわ。憑き物が落ちたような顔だった…」

 

 

自分がその親戚に歓迎されていないと子供ながらに悟っていたシグレは、本当に笑顔がなかったとサーシャは語る。

 

 

「…孤児院に彼は入ってきたけど、彼は誰とも関わろうとしなかったわ。何かに取りつかれたみたいに毎日木刀での素振りをしていた」

「俺にとっては剣だけが、唯一残された、親との繋がりだった…剣を振らなければ、すべてを失いそうだった」

 

 

それぐらいまでに不安定だった、ということだろうと誰もが察する。

親を失い、家を失い。

 

 

「その時から、学校での剣道は辞めた。続けるには金がかかるが…俺には金がなかったからな」

 

 

財産は親戚に奪われ、何も残らなかった。

孤児院では最低限の生活をするだけで精一杯で、それ以上は贅沢という状態だったから。

 

 

「…だが、剣道だけでなく、孤児院での生活すらも失うきっかけになる事件が起きた」

「……」

 

 

シグレは言葉を続ける。

シグレの受難は、まだ終わらないということだった。

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