ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
やがて通知が消え。
「…平気か?」
「あぁ。いや…強いな、さすがに一人で攻略をしてきただけのことはあるな」
シグレがキリトに与えたダメージは自然回復であっさりと回復し、問題はなくなっていた。
シグレの言葉にキリトは笑いながら返す。
キリトからすれば、決闘中のシグレとはまるで別人とも思えるほどのシグレの雰囲気だった。
「…どうする。まだやるのか」
「いや…そろそろ戻ろうぜ」
「分かった」
言いながら、二人は肩を並べ、女性陣の元に戻る。
「…シグレ」
「?」
「次は負けないからな?」
「……ふん」
愛想なく返すシグレの口元は、軽い笑みが浮かんでいた。
それにキリトが気付いたかどうかは、定かではなかったが。
「お疲れ様」
アスナが声をかけながらシグレとキリトに冷たい飲み物を手渡す。
「感謝する」
シグレが飲み物を受け取りながらアスナに感謝の意を告げると。
「……うん」
小さく頷いて、視線を逸らしてしまう。
その頬が赤く染まっているのが見えたキリトは。
「青春だな…」
見た目と似合わないような事を考えていたのだった。
けれど、それで終わるはずもないわけで。
「っ…シグレ、凄かったね。貴方を追いかけて、多少貴方に近づけたかなって思ってたけど、まだまだ、だったね」
「そんなこともあるまい…お前も、俺を追いかける中で力をつけてきただろう。サチ」
「そう…かな。まだまだ臆病だけどね…」
「…その臆病さは忘れるな、と言ったはずだが」
「うん、覚えてるよ。でも…」
強くなれたかどうかは主観的には分かりにくいものだからこそ、サチはまだ不安なのかもしれない。
その不安を完全に取り去ることはおそらく誰にもできないだろうが、シグレはそれでいいのではと考えていた。
「……ねぇ、シグレ」
「何だ」
「また…あの時みたいに、いろいろ教えてくれる?」
「教えられることがあれば…な」
サチの頼みに、シグレは考えながら言う。
直接見たわけではないが、おそらく相当力をつけているはずだろうと考えていたからこそだが。
「…私ね。まだまだ弱っちぃけど、シグレと肩を並べて戦えるようになりたい。貴方の…後ろじゃなくて、隣で」
「……物好きだな」
サチにとって、ゲーム攻略をして開放を目指すことは勿論大切なこと。
けれど、それ以上に大切なのが、シグレと肩を並べることのようだった。
「さっきのシグレとキリトの戦い見てたら、私なんてまだまだだなー…なんて」
「……臆病な事を責めるつもりはないが、臆病すぎるのも考え物だな」
まずは少し自信をつけることが先決か、等と考えながら。
「…一度、決闘をやってみるか?」
「私と…シグレで?」
シグレの提案にサチは想像したのか、軽く顔が青褪めていた。
「……無理かな、私じゃ」
「そうか」
あはは、と笑うサチに、自分の提案を撤回するシグレであった。