ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
「いやいや、さすがだねシグレ」
「…そうでもないだろう。一歩間違えれば俺は負けていた」
ストレアの言葉に謙遜するようにシグレは言う。
けれどその言葉にストレアはにやりと笑い。
「よく言うよー。シグレってば…使ってなかったじゃん、アレ」
「…アレ、と言われてもな」
「アレはアレだよ。システムアシスト」
ストレアの言葉にあぁ、と頷き返す。
シグレからすれば大した事ではなかったのか、何を今更、という感じで返す。
傍から見れば、ただの談笑。
ストレアがからかうように言うのを、溜息交じりに受け流すシグレ。
しかし。
「…マジかよ。こっちは使ってたってのに」
それでも、全力どころかシステムアシストのないシグレにすら届かないのか、と自信を失いかけるキリト。
その様子を見てか。
「……だから、動きが読めた、というのもある」
「は?」
「システムアシストは確かに強力だ。現実では不可能な動きもできるようになる…が、あくまで決まった動きをするだけだ」
システムアシストにより、現実ではありえないような動きも可能になる。
それが顕著になるのがスキルの発動といえる。
だが、技である以上、その技を知っていれば、対処もできるというもの。
「こっちが構えているところに、スキルを発動して飛び込んでくる…スキルがどういうものか分かっていれば、反撃は容易だ」
「お前それ、簡単に言うけどな……」
つまり、シグレはキリトのスキルの動きを完全に見切り、それを躱した上での反撃に出たということだ。
当然だが、そんなことは容易に出来るものではない。
まして、キリトは攻略組として、シグレの後追いの形とは言え前線で活躍するという、トップクラスの実力の持ち主である。
ゲーム中のレベルは拮抗している、といえるはずなのだが。
「…お前、滅茶苦茶だったんだな」
「いきなり何だ」
溜息交じりのキリトの結論に、シグレは言い返す。
恐らく誰に聞いてもキリトと同じような答えを返すだろう。
ゲームの中で現実ではありえない速度、力の攻撃を、現実の動きのみで対応したのだから。
それと同時に思うのは。
「というよりシグレ」
「?」
「それ…楽しいか?」
キリトは疑問を投げかける。
ゲームの楽しみ、特にこういったファンタジーのタイプでは、現実と異なる体験が醍醐味だと考えていた。
だからこそ、そういった部分を使わないシグレに疑問を感じていた。
「……さぁな」
キリトの問いに、シグレははぐらかす。
アジトでの戦いで悟った、自分がここで戦う理由。
その思いは、今も変わらない。
変わらないが、それを言えば、また何か言われるだろうと考え、明言はしなかった。
その様子を、誰も気にしない。
「……」
ただ一人、この世界でシグレが最初に出会ったアスナを除いて。
「…さて、そろそろ戻るか」
キリトの言葉に、皆が武器をしまう。
つまり、それに異を唱える者はいなかった。