ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうしてやってきたのは57層。
「…どこに行くの?」
「人に会いに行く」
先を歩くシグレについて行きながらアスナが尋ねる。
それに振り返らずにシグレは答える。
そうして歩いて行く先は、アスナも知らない。
やがて、着いたのは建物の間の路地裏。
昼間でも日が差さないレベルのその場所は、一番日が高い時間を過ぎた今では夜のような暗さすら感じる。
「…よう、来たナ?」
暗がりから姿を現したのはフード姿の人物。
見た目を隠したその風貌からでは声しか判断材料がなく、女性なのか、声変わりしていないレベルの男性なのかすら判断がつかない。
「ほう、お前が女を連れて歩くなんて珍しい。これはいい事を知った」
「…俺の情報など欲しがる奴なんているのか?」
「『幻影の死神』サマは有名人なんだぞ?そりゃ高く売れるさ」
シグレと親しげに話す様子から、どうやら見知った仲なのだろう、とアスナは推測する。
「…で、紹介はしてくれないのカ?」
「人に名を聞くときは自分から名乗るのが礼儀、だと思うがな」
「ま…それもそうか」
言葉を交わし、フード姿の人物はアスナに向き直り。
「…情報屋なんダ。最初は名乗ろうと思ったんだガ、こいつが名乗らせてくれないんダ。だから『鼠』って呼んでくれればイイゾ、『閃光』サマ」
「……?」
鼠と名乗った情報屋の言葉に、アスナが首を傾げる。
閃光、という言葉が通じていないようだった。
「……もしかして、知らないのカ?『閃光のアスナ』って結構有名だゾ?」
「えぇ!?そ、そうなの…?」
「俺に聞かれてもな……」
そして言われた言葉に驚きながら、確認するようにシグレに尋ねるが、シグレは他人事のように返す。
尤も、街で活動することが殆どなかったために知らなかったのだが。
「他にもシグレの近くだと『黒の剣士キリト』に『蒼き戦乙女サチ』、『死神の護り手ストレア』……」
「…とりあえず色々言いたいことはあるが…まずは本題に入ってもらっていいか?」
「おっと、そうだったナ」
シグレの言葉に、ようやく話が本筋に戻る。
とはいえ、その内容はアスナは知らない。
状況から察するに、シグレが依頼した情報を情報屋が仕入れ、その情報を依頼主であるシグレに伝えるため、ということはアスナにも察しがついたが。
「…ところで、閃光サマは一緒でいいのカ?」
「……」
情報屋の問いに、シグレはアスナに視線を向ける。
ここから先を聞くかどうかの判断を任せようという意図だった。
それが伝わったのか、そうでなくとも離れるつもりはないという意思の表れなのかはわからないが、アスナはシグレを真剣な眼差しで見返す。
「…続けてくれ」
「あぁ……とはいっても、お前が言った本人を見つけたわけじゃナイ。下っ端らしき奴がこの層にいるのを見かけタ…上手くいけば」
「…そいつから情報を引き出せばいい、か。手がかりとしては十分だな」
シグレが謝礼だ、と幾らかの謝礼金を渡し、情報屋は確かニ、と受け取る。
「…ま、あんまり無茶はスルナヨ?」
「あぁ」
「それが空返事じゃなけりゃイイけどナ」
程々に、と言い残し、情報屋は転移結晶を使ったのか、どこかに消えていった。
「…ねぇ、シグレ君。今のって……?」
「あぁ、あれは…」
アスナの問いにシグレが答えようとした瞬間。
―――あああぁぁぁぁぁっ!!―――
突如街の中に響く女性の悲鳴に、会話を中断せざるを得なかった。