ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
そうして訪れた50層。
「…こんな街並みだったか」
アスナの先導に従って歩きながらシグレは辺りを見回す。
一人…あるいはこの頃にはストレアもいただろうか。
いずれにしても碌に街を歩くことが少なかったシグレは、まるで初めて訪れた街並みを見るように言う。
「もう…街の様子も覚えていないなんて、本当に無茶するのね」
「…ふん」
苦笑交じりのアスナに、視線を逸らすシグレ。
そこには気恥ずかしさがあり、それを隠すために視線を逸らしたのだが、アスナにはバレバレだったので意味がなかったが。
「ここよ」
言いながら、慣れたように扉を開けるアスナ。
「こんばんは、エギルさん」
「…おぉ、アスナか。どうしたんだこんな時間に」
アスナが声をかけると、カウンターでしゃがんでいたのか、店主と思わしき人物がカウンターから顔を出し、親しげな挨拶を交わす。
「…」
親しげな会話の声に、邪魔をするのも気が引けたが、とりあえず話を聞かなければ先に進まないと思い、無言で店に入るシグレ。
「ん?お前さん、アスナの連れか?」
「…まぁ、そうなるか」
「そうか、なら初めましてだな。俺は斧使いのエギル。攻略に参加もするが、こうして雑貨屋もしてるんだ。贔屓に頼むぜ」
「あぁ…俺はシグレ。宜しく頼む」
シグレとエギルは握手を交わす。
「…アスナに聞いたが鑑定スキルがあるそうだな」
「あぁ、そりゃあ一応はな」
「早速ですまないが、見てもらいたいものがある」
「…?あぁ。とりあえずここであれこれ言うこともないだろ。後ろに来てくれるか?」
「あぁ」
シグレは握手した手を放し、さっそく本題に入る。
その様子にエギルも応じてくれて、店の裏まで招いてくれた。
そうして、裏に入れてもらい、事情を説明する。
「圏内でHPが全損!?」
事情を説明すると、エギルも驚いたようだった。
「決闘の線も考えたが、いろいろと不可解な点が多い」
「…睡眠PKの線も考えたけど、直前までヨルコさんと一緒だったっていうし……」
シグレとアスナが自分達の見解を述べつつ、シグレが例の剣を取り出し。
「不可解な部分が残る中で、唯一確かな物的証拠が……こいつだ」
それを机に置く。
形状こそ刀身に棘がついた形だが、特に禍々しいという様子もない、見た目上は普通の剣。
エギルは剣を手に取り。
「…プレイヤーメイドだ。作成者は……グリムロック、となっているな。特段何かスキルがついているわけでもない…普通の武器だ」
鑑定を行い、分かった事を述べる。
ただ作成者については、エギルも心当たりがなかったのか、それ以上は何も言わない。
心当たりがないのはシグレとアスナも同じだった。
「リズベットなら…何か分かるか?」
「どうかしら。エギルさんの言う通り、一線級の刀匠じゃないとすると、いくらリズでも…」
シグレがアスナに尋ねるが、アスナはその考えを棄却する。
どうやら、手詰まりか、とシグレが考えた所で。
「…一応、それの固有名を聞いていいか?」
「あぁ。ギルティ・ソーン……罪の茨、ってところか」
固有名を答えながら、剣をシグレに返す。
鑑定はあくまで鑑定。
その剣の情報が分かるのみで、それ以上のことが分かるわけではない。
「……試してみるか」
言いながら、シグレは剣を逆手に持って立ち上がり、腕を伸ばす。
すると、その切っ先が自分の胸にあたり。
「っ!?ちょっと…!」
アスナが咄嗟に止めようとするが、それは一歩間に合わず。
シグレはその剣を、腕の力で思い切り自分の体に突き刺す。
「…ぐっ」
すると、バチ、とエフェクトが発生し、剣は弾かれる。
その作用反作用で、シグレが後ろに吹き飛ばされる。
それはちょうど、第1層で兵士相手に行ったのと同じ現象。
HPは減らないが、ノックバックする程度。
まさにその通りだった。
「少なくとも、通常の状態では剣は突き刺さらない……か」
床に尻餅をついた体制のままで再度思考に入りかけたが。
「っバカ!無茶しないでよ!」
「…これは無茶ではあるまい。現にHPが減っている様子もない」
「そういう問題じゃないでしょう!?それで人が一人死んでるのよ!?…貴方が死んだら……!」
激昂して、シグレに視線を合わせて詰め寄るアスナ。
そんなアスナにシグレは仰け反り、弁解をするも効果なし。
アスナはシグレが拾う前に剣を奪い取り。
「これは、エギルさんが持っていて下さい!」
「お、おう……」
勢いそのままに剣を預けられ、ただ頷いて剣を受け取るエギル。
不機嫌そうな表情を隠そうともしないアスナに、男性陣二人は何も言い返せなかった。