ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
アスナに連絡を取ってもらっている間。
「…ねぇ、アナタは…どういう風に考えてる?」
「……?」
ストレアがシグレに尋ねる。
その表情は真剣なもの。
だとすれば、とシグレも真剣に返す。
「……お前は、どう考える」
「アタシ?」
尋ね返され、指を顎に当て、んー、と考える。
「…決闘、とか?」
「まぁ、妥当な線だが……システム的な抜け道の線はあると思うか?」
「それはないよ」
シグレの意見をばっさりと、はっきり否定するストレア。
そこまではっきり否定をするストレアに少し驚くも。
「…その根拠は?」
「忘れたの?アタシはもともとカーディナル監視下のプログラムだったんだよ?そういうアンフェアな事をカーディナルが許さないことくらい、分かってるよ」
それに関してはシグレも否定をしなかった。
現にストレア自身、プレイヤーを監視する中で、そういったことはほとんど起きていなかった、と続ける。
「……だとすれば、お前の言う通り決闘か、あるいはそれを用いたトリックが存在するか」
「なんかシグレ、探偵みたいだね」
なんとなく分かっていたが、いざ言われると言い返したくなるのは何故だろう、とシグレは思う。
シグレ自身、巻き込まれた感覚ではいるが柄でもない、とも思っていたのだ。
「大丈夫だよ」
「何がだ」
「戦ってる時のシグレもかっこいいけど、こういうシグレもかっこいいから!」
サムズアップするストレアに、シグレはただ無言。
またいつものか、と溜息を吐き。
「……もう少し真面目に」
「アタシは大真面目だけどね?」
ストレアを諭すもどこ吹く風。
それどころか。
「アタシとしては…このくらいしたいんだけどねー」
言いながら、シグレの左腕に抱きつくストレア。
結構強めに抱きしめているのか、ストレアの胸の谷間に腕が挟まれるようになり。
「……」
無言になる。
いくら女性好きという程ではないシグレとはいえ、男性である以上は多少は意識するというもの。
まして、そういった経験が現実で皆無だったシグレにとってはいかんせん刺激が強すぎる。
そのせいか。
「…恥ずかしくは、ないのか」
途切れ途切れにそう言うだけで精一杯だった。
けれど、何だかんだで付き合いが長い事と、メンタルヘルス・カウンセリングプログラムとしての経験からか。
「ふふっ…当ててんのよ?」
笑いながらそんな風に言う。
シグレからすれば、何が楽しいのだろうとは思うが、抱き着きながら楽しそうに頬を腕に寄せてくるストレアを拒否する術を、シグレは持ち合わせていなかった。
「…なんか、いいね。こういうの」
「相手が俺で申し訳ない、と言うしかないがな」
いつもの明るい様子ではなく、どこか落ち着いた様子のストレア。
そんな彼女に苦笑で答えるシグレ。
「そんなことないよ。アナタじゃなきゃ…こうしたいって、思うこともなかっただろうし」
「……」
どこか、安らぎすら感じさせるストレア。
「…変、だよね。アタシ…プログラムなのに、こんな風に思えるなんて」
「……俺には技術的な事はよく分からないが」
どこか自嘲するように言うストレアに、シグレは口を挟む。
先ほどまでの緊張は大分薄れていた。
「いいんじゃないのか?…人らしくて」
「…人じゃないのに?」
「……俺は逆に、お前をプログラムという型に嵌った存在だと考えた事はないな」
「……それはアタシに対して失礼じゃないかな?」
怒っているように言うが、それほどでもないストレア。
「それでもプログラムだから、かな。分かんないんだ……どうして、アナタと一緒にいると、こう…ほんわり暖かいような感じがするんだろ」
「……それは俺に聞かれても分からない話だ」
「そっか。でもまぁいいや…嫌な感じじゃないし」
感情を理解できていないが故の真っ直ぐな行動、といったところか。
ストレアはただ、自分の内から湧き上がる温かさの理由が分からなかったが。
「…それはきっと、ストレアさんが、シグレ君のことを好き…っていうことなんじゃないかな」
「好き…?」
「そ。恋…っていうこと」
連絡を取り終えたのか、アスナが合流し、二人の様子を見ていたのか、ストレアに助言をする。
優しい笑みを浮かべながら、とても素敵なことだと思うわ、とアスナは続ける。
「そっか、好き、かぁ…んふふっ」
それでストレア自身も納得したのか、笑みを浮かべながら更にシグレに身を寄せる。
「…うん。アタシはシグレの事、好きだよ。大好きっ」
恥ずかしげもなく、そんなことを言ってのけるストレアに。
「……そうか」
また一つ溜息を吐くシグレ。
真っ直ぐに想いをぶつけられた恥ずかしさで調子を乱していた事は言うまでもない。
調子を戻すためなのか、話を進めるためなのか。
「それはそうと、シュミットとやらと、連絡はついたのか?」
抱きついたままのストレアから意識を外し、アスナに尋ねる。
話題の転換にアスナも対応し、真剣な表情で。
「ついたわ。場所を伝えたから、今から来るって」
「…そうか」
アスナの報告に、シグレは一言で返し、アスナの先導の下で待ち合わせ場所へ向かう。