ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第4話:取り戻すために、伝えるために / Asuna

** Side Asuna **

 

 

彼が出て行ってから、どの位経っただろう。

少なくとも、数時間は経っている。

何故なら、外はもう暗くなっているから。

チュートリアルの時は、夕暮れだった。

宿の中の家具が月明かりに照らされ、静かに照らされている。

 

 

「っ…」

 

 

電気を点けてすらいないが、ずっと蹲っていたせいで気づかなかった。

けれど、不思議と、明かりをつけようという気は起きなかった。

考えれば考えるほどやりきれない思いが募る。

現実ではないこの世界から、戻れなくなって、このままここにずっといたらどうなってしまうのか。

考えたくもない。

 

 

「…」

 

 

本当なら、今頃私は家族で食事を摂っていたのだろう。

あるいは食事が終わっているだろうか。

ところが今は、仮想世界の、暗い宿の中で一人。

予想もしていなかった、望まぬ現実を押し付けられたという、一種の絶望。

その絶望に押し潰されそうであるという自覚はあるが、どうすれば彼のように立ち上がれるのか。

 

 

「……」

 

 

ふと、彼が言った事を思い出す。

どうせここで死ぬのなら、足掻いて死ぬことを選ぶ、と。

彼はきっと、ゲームクリアに向かって走り出したのだろう。

そしてそれを目指すのは、彼一人ではない。

そんな人たちに比べて、今の私はこんなにも弱い。

けれど。

 

 

「…こんな風にしてる場合じゃ、ない」

 

 

帰りを待つ者がいるなら、考えろ、とも彼は言った。

家族、友達、私が大切に思う人達。

そんな人達のところに帰るために。

私の現実を取り戻すために。

 

 

「…よし」

 

 

立ち上がり、細剣を手に取り、部屋を出る。

辺りは暗かったが、関係ない。

 

 

彼は、強かった。

戦いの技術もだが、何より心の強さも。

だからこそ、彼は前に進めているのだと思う。

けれど、負けていられない。

負けているようでは、絶対に帰れないから。

 

 

 

だからこそまずは、自分が戦えるようにならなきゃいけない。

守られるのではなく、守れるくらいに。

あの時私を助けてくれた、彼のように。

 

 

「…待ってなさい。必ず追いついて見せるから」

 

 

そして、追いついたら言ってやろう。

彼の強さは、私から見て相当の物だった。

剣の強さも、心の強さも。

…けれど、少なくとも一つだけ、彼は間違っている。

 

 

「…貴方が死んで悲しむ人は、いるのよ」

 

 

貴方が死んで悲しむ者は、少なくともここにいると伝えるために。

そして何より。

 

 

「…名乗ってなかったから」

 

 

強くなって、彼に追いついたら名乗ってやるんだ、と。

そう思いながら歩きだす。

さっきより、気分は晴れていた。

 

 

** Side Asuna End **


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