ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第78話:望む再会と、望まぬ再会

19層の丘。

十字の丘、と呼ばれる底は、時間のせいなのか、天気のせいなのか薄暗く、枯れ木が不気味に映る。

 

 

「……」

 

 

薄暗い雑木林の中を一人、シグレは駆ける。

アスナとストレアにはシグレが頼み事をしていて、それを果たすためにここにはいない。

おおよその場所は聞いていたので、その場所から動いていなければいい、と思いつつ。

 

 

「っ…やはりか」

 

 

やがて目的地に近づくと、人影が見える。

その人影の数は、シグレが想像していた数より多い。

ヨルコ、カインズ、シュミット。

そして、フードを被った別の人影が三つ。

一つの人影は、ヨルコとカインズに対し剣を突きつけ、牽制をかけている。

一つの人影は、地に付すシュミットの近くにしゃがみ、面白そうに見ている。

一つの人影は、見覚えのある包丁のような武器を振り上げ、今にもシュミットに振り下ろそうとしている。

 

 

「っ……」

 

 

シグレは緋月を抜き、振り下ろされる包丁を間一髪止める。

 

 

「ん?…誰かと思えば、久しいな?」

「…再会を喜び合う仲になった記憶はないがな」

「HAHAHA!」

 

 

男の言葉に、シグレは面白くなさそうに返す。

男は何が面白いのか、ただ、嗤う。

刀で受け止めたまま、シグレは状況を把握する。

シュミットは麻痺。

ヨルコとカインズは牽制で動けない状況。

 

 

「シグレさん、どうして…!」

 

 

ヨルコがどうしてここに、といった感じで声を上げる。

シグレはそれには答えず、包丁を弾き上げる。

 

 

「うぉっと…」

 

 

突然の衝撃に一瞬よろける男。

シグレはその隙を見逃さずに、ヨルコ達に剣を突き付けている男の懐に潜り込み、一気に刀を振り上げる。

次の瞬間、剣を突き付けていた男の腕が、肩の辺りから吹き飛び、体と分割され、男の腕が宙に舞う。

 

 

「っ…!?」

 

 

突然の衝撃的ともいえる光景に、誰かが息を呑む。

やがて主から切り離され、吹き飛ばされた腕は光の粒となって消え、剣が地面に落ちる。

 

 

「ぐ……」

 

 

VRで痛覚がないとはいえ、腕を失ったことに対する幻肢痛か、男がよろめく。

 

 

「前より少し腕を上げたようで、嬉しいぜ…楽しめるからなァ?」

「…ふん」

 

 

腕を失った男には目もくれず、楽しそうに包丁をシグレに向ける。

そんな彼に、刀を構えるシグレ。

だが。

 

 

「だが、あの時とは状況が違うな」

「…状況?」

 

 

シグレの言葉に男が聞き返す。

そんな男に、構えを解かずにシグレは続ける。

 

 

「俺にお節介を焼く連れが、援軍を呼んでいる。直にここに30人程度が来るだろうが…実質二人で相手をするつもりか?」

「……」

 

 

シグレと男が睨み合う。

その様子は、決闘の直前、ともいうべき緊迫感で静かに、風の音だけが響くが。

 

 

「ちっ…」

 

 

先に動いたのは男の方で、手を挙げると他の二人も武器をしまう。

…うち一人は腕がないので利き腕でない方の腕で剣を拾っていたが。

 

 

「…行くぞ」

 

 

男の言葉に、フードの男たちは何事もなかったかの如く去っていく。

姿が見えなくなるまで見送ったところで、シグレは刀をしまうのだった。


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