ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
やがて、静かな状況を取り戻したところで。
「…シグレ。助けてもらった事は感謝するが…なぜ分かったんだ」
シュミットが麻痺から立ち直り、シグレに尋ねる。
シグレは一瞬考え。
「……勘違いするな。俺はお前たちの助けに入ったわけではない……奴らを追っていただけだ」
「奴らって…あの殺人ギルドをか?お前は一体…」
シュミットが問いを続けようとしたが、それは他でもない、シグレによって遮られる。
「俺の事より、気にすべきは…こっちだろう」
言いながら視線を雑木林の方向に見やると、アスナとストレアが一人の男を連れてくる。
シルクハット調の帽子に、黒い丸サングラスで顔を隠す男は、まるで事情を知らないと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
「…グリムロック」
シュミットが呟くように名を呼ぶ。
「……どうする、事情を自分で話すか?」
「いや、是非推理を聞きたいものだね。探偵君?」
グリムロックの言葉に、シグレは一つ息を吐く。
「…先ずはグリセルダが売却の為に持っていた指輪。それは結婚相手である、この男の物でもある」
「結婚相手のストレージ共通化…」
「なら…グリセルダが殺された時、指輪はどうなったか…」
シグレの言葉に、カインズがはっとしたように。
「グリムロックの物になった…?」
「そうだ。殺人如何はどうであれ、指輪はグリセルダから文字通り…奪われた」
見たところ、プレイヤーを示すカーソルが緑だから、直接手を下してはいないだろう、という事をシグレは補足する。
「そうして、指輪を手に入れたはいいが…指輪事件の関係者…特に、売却に反対したお前たち三人を消し、事件を闇に葬ることを考えた」
言いながら、シグレはヨルコとカインズに目を向け。
「…武器を作ってもらったのなら、今回の件について内容は話したのだろう。少し頭が切れれば、この状況を狙って、お前達三人を葬ることを考えるのは容易だろうな」
「そんな…本当なのグリムロック。どうして…」
シグレが突き付けた推測に、ヨルコがショックで崩れ落ち、彼女をカインズが支える。
その様子を意に介すこともなく、グリムロックは話し始める。
「…探偵君が言ってくれた事は大方当たっているよ」
言いながら、グリムロックは観念したのか、それとも抵抗する気がなかったのか話を続ける。
グリセルダという人物は、彼にとっては現実でも夫婦関係であった事。
このゲームに巻き込まれて、自分は塞ぎ込んでいく中、彼女は活き活きとしていたという事。
その中で、自分にとって理想の妻である彼女は、消えてしまった、と。
だからこそ、永遠の思い出の中に封じ込める為に、合法的殺人が可能なこの世界で、彼女を手にかけようと考えた事。
それこそが、彼が妻を殺そうと考えた理由である事。
「探偵君、君にもいずれ、この気持ちがわかるだろう。手に入れた愛情が、失われようとした時には…ね」
「……お前の言うその気持ちには興味がないが、失う辛さなら、お前以上に知っているつもりだ」
悪びれもしないグリムロックに、シグレは静かに返す。
その目はしっかりとグリムロックを見据える。
「尤も、貴様のように自分からそれを手放す人間の感情など…興味もないがな」
言いながら、シグレは思い出すように続ける。
奪われたシグレと、自分から手放したグリムロック。
失った、という意味では似ているが。
「…アナタなんかと…シグレを一緒にしないでよ」
ストレアが苛立ちを隠しもせずに言う。
「シグレの事、何も知らないくせに…分かったようなことを言わないでよ!」
「…やめておけ」
「シグレ…」
そんなストレアを止めたのは、他でもないシグレだった。
ストレアは納得がいかない様子だが、それでも当の本人に止められては、それ以上は言えなかった。
「…ストレアさんの言葉には私も同意見よ。それに…」
アスナが向き直り、グリムロックに言葉をぶつける。
「貴方が抱いていたそれは愛情じゃないわ……ただの支配欲よ!」
「っ…!」
その言葉に思う所があったのか、グリムロックはその場に崩れ落ちる。
そんな彼の処遇は自分たちに任せてほしいと、カインズとシュミットが連れていき、ヨルコが追いかける。
こうして、一連の事件は幕を閉じることとなったのだった。