ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第81話:迷わぬ決意と、想い

そんな感じで、皆でボス討伐に行く空気になっていたのだが。

 

 

「…なんでよ」

 

 

それに反対する声が上がる。

その声の主は、ストレアだった。

 

 

「なんで…死んじゃうかもしれないんだよ!?」

「…ストレア」

 

 

ストレアがシグレに縋るように身を寄せる。

その表情は不安に揺れていた。

 

 

「っ…今回だけでいいから、行かないで。止まってよ…アタシも…一緒にいるから…ね?お願いだから…」

 

 

ここまで反対するというのは、カーディナルを知っているが故、なのだろうか。

ストレアが必死に、シグレに考え直すよう懇願する。

けれど、シグレは溜息を一つ吐き。

 

 

「…ストレア」

 

 

言いながら、ストレアの頭に手を乗せる。

一瞬肩を震わせるが、抵抗する様子もなく、むしろさらに身を寄せてくる。

 

 

「やだよ…アタシ、アナタには死んでほしくない…!」

 

 

モンスターとの戦いで死ぬわけではない、システム的な追放。

何が起こるか、少なくともその場にいる誰にも分からなかった。

…ユイやストレアにさえも。

 

 

「……そうだな。俺も所詮プレイヤーだ、カーディナルからすれば消すくらいは余裕なのだろう」

 

 

シグレはストレアの髪を梳くように撫でながら、言葉を続ける。

 

 

「…だが、自分が死ぬかもしれない、なんて些細な理由で止まるつもりはない」

「些細って…」

 

 

目の前の温もりを、ただ感じながら、ストレアは考える。

彼を失いたくない。だから、止める。

そうしなければ、きっと、二度と触れることができなくなると、考えたから。

けれど、彼は止まらない。

なら、自分は今までどうしてきたか、とストレアは思い直す。

思い直して、すぐに結論が出る。

 

 

「……分かったよ。仕方ないなぁシグレは」

 

 

ほぼ強引に同行した。

今回だって、同じにすればいい。

だから。

 

 

「うん。アタシは…絶対にシグレを守るよ。カーディナルなんて知らない…アタシが、絶対に守るから」

「…そうか」

 

 

少しだけ頬を涙で濡らしたストレアの表情は真剣なものだった。

その真剣な表情に、ただシグレは頷くだけ。

 

 

「なら…期待しておくか」

「ん…」

 

 

やれやれ、といった感じで頭を撫でるシグレと、それを気持ちよさそうに受け入れ、身を寄せるストレア。

その様子に。

 

 

「…なんか、最近シグレとストレアの距離…すごく近く感じるんだけど、気のせいか?」

 

 

キリトが疑問半分、からかい半分に尋ねる。

それに答えたのはシグレではなく。

 

 

「うん…アタシ、シグレの事…好きみたいだから」

 

 

抱きついたままのストレアだった。

表情は窺えないが、なんとなく恥ずかしさを感じているのだろう、少しだけ言葉が途切れ途切れだった。

 

 

「…いいなぁ」

 

 

羨ましそうに呟くサチに。

 

 

「あの時のは失敗だったかしら…」

 

 

ストレアに対し、この感情を教えた事を少しだけ後悔するアスナ。

そんな二人に気づいてか気づかずか。

 

 

「んーっ…」

 

 

ぐりぐりとシグレに顔を押し付けるストレア。

 

 

「ふふっ…」

 

 

その様子を、姉にあたるユイは微笑ましげに見守っていた。


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