ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第83話:罠と、危機

シグレは分断された事に気づいていたが、そちらに構う余裕はなかった。

 

 

「……」

 

 

ボス自体は以前と変化はない。

だが、こうして部屋の罠が作り変えられている以上、相手の力が変化している可能性がある。

つまり、以前戦ったそれとは、別の存在と捉えるべきだとシグレは考えていた。

無意識に、刀を握る手に力が入る。

 

 

相手が、その手に握られた大剣をシグレに向けて振り下ろす。

けれど、それをまともに受けるシグレではない。

その剣を横に跳んで躱す。

 

 

「っ…」

 

 

振り下ろされた剣は地面を容赦なく抉り、傷跡を残す。

ここから第二激に入るには、剣を再度振り上げ、地面から抜くというステップが必ず入る。

だからこそ、着地してから再度対応すればいいと考えていた。

…しかし。

 

 

「な…!」

 

 

その状態から相手は視線をシグレに向け、地面を抉りながら一直線に大剣を横薙ぎに振るってくる。

その速度には着地して方向転換をする余裕もなく、シグレに出来たのは、手に持っていた刀で受け止め、衝撃を緩和するのみ。

しかし、相手の巨体に釣り合うほどの大剣を、細身の刀で防げるかといえばそんな筈もなく、刀もろとも吹き飛ばされ、シールドに背中から激突する。

 

 

「が…ぁ……っ」

 

 

その衝撃に声を漏らし、その場に落ちるシグレ。

痛みこそないが、衝撃に対し一瞬動きが鈍るシグレに、容赦なく近づいてくる。

その大きな足音は、今のシグレにとっては死の足音。

 

 

「っ…」

 

 

とはいえ、シグレとて黙ってやられることを受け入れる性格でもなく、刀を支えに立ち上がる。

HPは一撃で三分の一程度減っており、あと二回受ければHPが全損するか、その近くまで行くことが容易に想像できた。

相手は、そんなことは構わずに、再度大剣を振り上げ、シグレに振り下ろす。

 

 

「ちっ…」

 

 

咆哮を上げながら振り下ろしてくる大剣を刀で受け止める。

とはいえ、まともにやりあうことができるわけもなく、シグレは押され続け、HPも徐々に減少していく。

 

 

「く、ぅ…!」

 

 

しかし、その鍔迫り合いも長くは続かない。

このままではいずれ押し負ける。

そう判断したシグレが、横に退いたからである。

 

 

 

…しかし、それは悪手であり。

 

 

「ぐ……」

 

 

横に飛び、無防備になったシグレの左腕を、肩から斬り飛ばす。

それは皮肉にも、先日、笑う棺桶のフードの男にシグレがやった事と同じように。

刀を持つ右腕でなかった事が幸運とはいえ、重症に変わりわない。

 

 

…吹き飛んだ片腕が、光の欠片となって霧散した。

 

 

「ちっ…」

 

 

シグレは舌打ちをする。

こうなってしまうと、大剣を刀で受け止めるのがかなり厳しくなると考えたからだ。

つまり、シールドである程度狭められたこの中で、剣戟を躱す以外の方法が取れなくなったという事になる。

これまでの単独撃破では、躱すだけの十分な広さがあったから出来た。

しかし今は狭められた範囲で、相手の大剣は幅が広く、それも困難な状況だった。


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