ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
シグレは分断された事に気づいていたが、そちらに構う余裕はなかった。
「……」
ボス自体は以前と変化はない。
だが、こうして部屋の罠が作り変えられている以上、相手の力が変化している可能性がある。
つまり、以前戦ったそれとは、別の存在と捉えるべきだとシグレは考えていた。
無意識に、刀を握る手に力が入る。
相手が、その手に握られた大剣をシグレに向けて振り下ろす。
けれど、それをまともに受けるシグレではない。
その剣を横に跳んで躱す。
「っ…」
振り下ろされた剣は地面を容赦なく抉り、傷跡を残す。
ここから第二激に入るには、剣を再度振り上げ、地面から抜くというステップが必ず入る。
だからこそ、着地してから再度対応すればいいと考えていた。
…しかし。
「な…!」
その状態から相手は視線をシグレに向け、地面を抉りながら一直線に大剣を横薙ぎに振るってくる。
その速度には着地して方向転換をする余裕もなく、シグレに出来たのは、手に持っていた刀で受け止め、衝撃を緩和するのみ。
しかし、相手の巨体に釣り合うほどの大剣を、細身の刀で防げるかといえばそんな筈もなく、刀もろとも吹き飛ばされ、シールドに背中から激突する。
「が…ぁ……っ」
その衝撃に声を漏らし、その場に落ちるシグレ。
痛みこそないが、衝撃に対し一瞬動きが鈍るシグレに、容赦なく近づいてくる。
その大きな足音は、今のシグレにとっては死の足音。
「っ…」
とはいえ、シグレとて黙ってやられることを受け入れる性格でもなく、刀を支えに立ち上がる。
HPは一撃で三分の一程度減っており、あと二回受ければHPが全損するか、その近くまで行くことが容易に想像できた。
相手は、そんなことは構わずに、再度大剣を振り上げ、シグレに振り下ろす。
「ちっ…」
咆哮を上げながら振り下ろしてくる大剣を刀で受け止める。
とはいえ、まともにやりあうことができるわけもなく、シグレは押され続け、HPも徐々に減少していく。
「く、ぅ…!」
しかし、その鍔迫り合いも長くは続かない。
このままではいずれ押し負ける。
そう判断したシグレが、横に退いたからである。
…しかし、それは悪手であり。
「ぐ……」
横に飛び、無防備になったシグレの左腕を、肩から斬り飛ばす。
それは皮肉にも、先日、笑う棺桶のフードの男にシグレがやった事と同じように。
刀を持つ右腕でなかった事が幸運とはいえ、重症に変わりわない。
…吹き飛んだ片腕が、光の欠片となって霧散した。
「ちっ…」
シグレは舌打ちをする。
こうなってしまうと、大剣を刀で受け止めるのがかなり厳しくなると考えたからだ。
つまり、シールドである程度狭められたこの中で、剣戟を躱す以外の方法が取れなくなったという事になる。
これまでの単独撃破では、躱すだけの十分な広さがあったから出来た。
しかし今は狭められた範囲で、相手の大剣は幅が広く、それも困難な状況だった。