ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~   作:アルタナ

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第85話:抗う者たちの戦い

貫いた剣が乱暴に引き抜かれ、シグレは力を失い、その場に崩れ落ちる。

受け身を取らずに落ちた事から、意識を失っていることは明らかだった。

 

 

「シグレえええぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

ストレアが叫び、アスナとサチは息を呑み、声が出せなくなる。

 

 

「くそっ!」

 

 

キリトは悔しさで吐き捨てる。

その次の瞬間、シールドはあっさりと消滅する。

カーディナルが目的を達成したから、だろうか。

消滅を確認すると、皆が一斉にシグレに駆け寄る。

 

 

「シグレ君…!」

 

 

駆け寄り、様子を確認するアスナ。

片腕を失い、気を失ったシグレのHPゲージは風前の灯といえるレベル。

彼女の表情が、絶望に染まる。

 

 

「そんな…!」

 

 

サチもまた、絶望を叩きつけられる。

あらゆる蘇生手段は機能しない。

初日に言われた事を覚えているからこそ、何も手を打てない。

 

 

「やだ、起きてよシグレ…死んじゃやだよ…!」

 

 

ストレアが必死に揺さぶる。

しかし、シグレは答えない。

どれだけ揺すっても、胸元に穴をあけられたシグレの体には、力が入らなかった。

 

 

「っ……」

 

 

キリトは皆を守るように、前に出る。

 

 

「…シグレと一緒に、下がっててくれ」

「キリト…?」

 

 

両の手に、片手剣を構えて。

 

 

「キリト、お前…剣を…両手で…!?」

「…ここは、俺が決める!」

 

 

両の手に片手剣を握るキリトに、クラインが驚くように言う。

しかしキリトはそれに答えず、ただ目の前の敵に一気に相手に距離を詰める。

 

 

 

二振りの剣を自在に操るキリト。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

相手の一振りの大剣を抑えつつの一進一退の攻防。

とはいえ、シグレが戦う中で健闘したおかげか、相手のHPゲージは全体の半分程度まで減っていた。

 

 

「…スターバースト…ストリーム…!」

 

 

キリトがスキルの発動を宣言する。

それと同時に、キリトは二振りの剣を巧みに振るい、一気呵成に斬りつけていく。

敵のボスは対応しきれず、悲鳴を上げる。

 

 

「な、なんだあのスキルは…!」

 

 

1対1ではシグレと同じことになりかねないと懸念したクラインが加勢しようとしたが、キリトのスキルに圧倒され、その足を止める。

それほどまでに、今のキリトの力は圧倒的だった。

 

 

「…速く…!もっと速く……っ!」

 

 

滅多切り、という表現が似合うレベルでの高速で力強く、大胆で、かつ効果的な斬撃。

シグレの苦戦が嘘のような善戦。

ボスのHPがあとほんの僅かとなった所で、最後の足掻きと言わんばかりに大剣をキリトに振るうが。

 

 

「うあああぁぁぁぁっ!!!」

 

 

獣のような咆哮を上げながら、キリトが止めの一撃を放つ。

突き出した剣はボスを貫き、それでHPを完全に削られたボスは、光の粒となって消えた。

 

 

「はぁ、はぁ…っ」

 

 

キリトが肩で息をし、それでも何とか息を整える。

 

 

「パパ…!」

 

 

心配していたのか、ユイがキリトに近づき、キリトがユイの頭を撫でる。


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