ソードアート・オンライン ~戦い続けるは誰が為に~ 作:アルタナ
その後、シグレはようやくといったところでベッドから降り、久しぶりに地に足をつく。
「…外の空気も久しぶり、といったところか」
「うん、そうだねー」
あれから、ストレアが預かっていた刀を受け取り、装備をする。
今は22層の森の中を、特に目的もなく歩き続けていた。
シグレが目を覚ましてすぐ、皆でこれからについて話し合ったのだが。
「…それで、どうする。75層は開通したのなら…攻略に戻っても構わないが…」
「いや、お前は少し休め…本気で。病み上がりで最前線とか、それこそ自殺行為だろ」
シグレが言うが、キリトに反対意見を出される。
早い話、少し調子が戻るまでゆっくり過ごせということらしい。
VRでリハビリというのは必要なのか、シグレは若干疑問だったのだが。
「私もキリト君に賛成かな。シグレ君、ずっと寝てたわけだし…勘も鈍ってるだろうし」
「そう、だね。ちょっと…そういう意味だと、私も心配…かな」
アスナとサチにも反対意見を言われ、ストレアは言わずもがな。
そうなれば多数決でシグレが折れるしかないわけで。
「…分かった。今は少し休む」
実際、74層でボスに殺されかけた手前、反論の余地がなかった。
溜息を吐くシグレ。
そんなわけで、とりあえず、休息を兼ねて外を歩くか、と考えたわけだったのだが。
「…散歩ぐらい一人でもいいんだが」
「いいの。アタシが一緒にいたかったんだから」
すっかりルンルン気分のストレアにやれやれ、といった感じのシグレ。
話を聞いてシグレからは全く想像がつかないが、今のような明るさが嘘のように落ち込んでいたというストレア。
一人でもよかったのだが、腕に抱きつかれ、全く離れる様子がない。
「やっぱり…暖かい」
「…?まぁ今日はいい気候だが」
「もう、そういうことじゃないよー」
言いながら、あっ、と視線を前に向けるストレア。
「あっちの湖行ってみよ?早く早く!」
「お、おい…」
ストレアに引っ張られ、バランスを崩しそうになるがなんとかついていくシグレ。
そこまで距離があったわけでもないので、すぐに着いたのだが。
「こんなに奇麗な所だったんだ…知らなかったなぁ」
「…知らなかったのか?」
人は少ないが、それでも目につきにくい木陰に入り、二人並んで視線は湖の方へ。
感慨深げに言うストレアに、疑問を投げかけるシグレ。
ストレアはその疑問に、うん、と小さく頷き。
「シグレが起きる前は…そんな事考える余裕がなくて」
「…そうか」
家を出てから、片時も離れようとしないストレア。
「……正直、ここから先攻略を続けたら、何が起こるかアタシにも分からない」
「そうか」
「だから…本当はシグレには前線に立ってほしくないって、止まってほしいって……そう思ってるんだ」
どこか辛そうな笑み。
しかし。
「なら…尚の事、先に進まねばなるまい」
シグレは真剣にそう返す。
「それは…死にたいから?」
「どうして…いや、キリトか」
「……」
ストレアの返しにシグレは溜息。
「もしそんなだったら、アナタの事、全力で止めるけど?」
「安心しろ。そういう目的ではない」
ストレアの言葉にシグレはあっさり返す。
実際、目的は攻略であり、嘘は言っていない。
あの戦いで、その目的を悟ってはいたが、今すぐである必要はない、とは考えていた。
「…うん、信じられない!」
「おい」
「だから、これからもついていって、しっかり見張るから、覚悟してね?」
笑顔ではっきり言われ、一瞬言葉を失うが、よくよく考えれば結局何かが変わるわけでもない。
それにすっかり慣れた自分に笑いながら、分かった、と返すシグレだった。