オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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天使を従える者

「ガゼフ殿、ここから先は私が受け持とう。選手交代だ、ゆっくり休みたまえ」

「アーカード殿……恩に着る……」

 

崩れ落ちていくガゼフ、それと同時にガゼフの身体は光に包まれてその場から消えていく。アーカードと共に現れたモモンガによって転移の魔法をかけられて村へと転移させられている。アーカードはそれを見送ると改めて立ち上がりながら目の前にいる敵へと視線を向ける。無数の騎士たち、というよりは魔法詠唱者(マジックキャスター)の一団と言った方が正しいのだろう、周囲にはユグドラシルでも見た天使型のモンスターである「炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)」と「監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)」が静かにこちらを見据えている。ハードユグドラシルプレイヤーのモモンガとアーカードはそれを即座に見抜き大した相手ではないと見据える。

 

「何者だ、貴様ら。ガゼフ・ストロノーフを何処へやった」

「殺し屋さ」

 

この村を包囲するかのように展開する者たちが居るという知らせ、それは敵対する者たちが再び襲い来ようとする合図。村を襲う為ではなく、正しくはガゼフを殺すための兵。村を襲ったのも彼を誘き寄せる為に物だと、そしてガゼフはそれを迎え撃ち、奮戦するも限界を迎えるが人間としての凄まじき強さを見せた彼にアーカードは口角を持ち上げながら彼の命を救いあげ、その戦う役目を引き継いだ。

 

「殺し屋だと、ハッそのような輩が我らになんのようだ。我々を殺すような依頼でも受けたか」

「ああっ受けているさ。これから貴様らを殺すものだ」

「愚か者め、殺されるのは貴様だっ!!」

 

隊長であるニグン・グリッド・ルーインは命令を下し、それらを受け取る部下らが天使たちに攻撃命令を下し弾幕のような火の魔法や衝撃波が襲い来る。だがそれらはアーカードの身体を傷付ける事もなく無力化されていく。<上位物理無効>と<上位魔法無効化Ⅲ>。レベル60程度の攻撃、第六階魔法以下を無力化する常時発動型特殊技術(パッシブスキル)。前線に立ち続ける彼にとってはこれも防御系の一端にしか過ぎないスキルではあるが、この世界ではかなり有効らしい。悉くを無に帰しながらアーカードは銃を抜く、白金の銃を右手に構え、左腕を台座にするかのようにしながら構えて引き金(トリガー)を引く。

 

始祖の吸血鬼の身体能力を考えれば銃の反動などないに等しい、轟音と共にスライドから薬莢が弾き出される。それらから吐き出される弾頭は正確に天使らの頭部を撃ち抜きながらも次々と弾丸を吐き出し続ける。気付けば天使の悉くが撃ち抜かれ消滅していた。

 

「なっ―――これは、何が起きて……!?」

「13㎜爆裂徹甲弾、こいつを食らって平気な異形(フリークス)はいない」

 

「……流石アーカードさん。銃の腕は衰えちゃいない……」

 

久しく見るアーカードの射撃を見るモモンガは感動すら覚えていた。アインズ・ウール・ゴウン屈指のタンクとしてギルドに貢献し続けてきたアーカード。不死といっても過言ではないレベルで半端ではない防御力と回復力からアンチスレが凄まじく乱立した程の活躍をした。そして手にする拳銃の威力は半端ではない上に<無限射撃>の魔法付加(エンチャント)がなされており、リロードは気分なチート拳銃と化している。たっち・みーとアーカードがいる時は諦めろと言われるほどにやばい扱いをされていた人物である。

 

「流石アーカード様……!!ああっなんてお美しい……」

 

顔は見えないが恍惚仕切っている声を聞きながらもモモンガは一応情報遮断系の魔法を展開する、アインズ・ウール・ゴウンの軍師であった『ぷにっと萌え』さんにも情報はアドバンテージを生むと厳しく言われた。念には念を入れよ、損は生まない。確かに同意する、そして展開すると情報系魔法の遮断を確認してやってよかったと安心する。

 

「最高位天使を召喚する!!」

「やらせると思っているのかね?」

 

天使が次々と全滅していき、遂に「監視の権天使」も身体に銃痕を刻まれて消滅してしまったのを見るとニグンは切り札となりえるアイテムを取り出す。それは超位魔法以外を封じて使用する事が出来る<魔封じの水晶>、最高位天使を召喚すると宣っていたので警戒してアーカードは腕をカスールで吹き飛ばし、持ち前の身体能力を利用してそれを回収する。

 

「がぁぁあああああっっ!!?」

「さてさて最高位天使というのだから熾天使級(セラフクラス)だろうな。友よ、解析出来るか?」

「触れる事が出来るならば出来るぞ、どれ……はぁっ?」

 

モモンガは<魔封じの水晶>に触れて内部に封じ込められているものを調べる、ユグドラシルでは中身に時限爆裂式の魔法を仕込んで時限爆弾代わりにしてくるプレイヤーまでいた。モモンガは手早く発動阻害の魔法を掛けながら内部を確認すると呆れかえったような声を上げる。

 

「如何した友よ」

「……熾天使級が出てくると思ったら……中に封じられているのは<威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)>だ。第七位階程度の天使だぞ、なんでこれが最高位なんだ……」

「……警戒して損したのか」

「いやぷにっと萌えさんの教えに従うなら損にはならない、警戒はすべきだった」

「そう思っておくか……」

 

雑魚な天使にもほどがある、ユグドラシルでも時間稼ぎどころか数合わせ程度にしか使われない存在。自分達にとっては雑魚に過ぎない。それだって銃で一撃で沈められる、焦って気疲れしてしまった……。

 

『アーカードさん、<魅了の魔眼(エロ光線)>であの隊長格を洗脳しちゃってください。この世界の情報を得たいですし』

『分かったが……その呼び方やめてくれるか、ペロロンチーノに「それさえあればエロゲ―の状況作り放題ですね!!」って言われてからあんまり使いたくなくなってるんだから……』

『ペロロンチーノォッ!!!』

 

この後、敵全員を<魅了の魔眼>で魅了洗脳を施した。内容はナザリックに従う事に幸福感を得るという物、麻薬じみたそれにニグン達はあっさり魅了されて、ナザリックの為ならばと全ての情報を喋る事だろう、例えどんな細工があろうとも、無力なのだから。こうして異世界転移後初のイベントは幕を閉じるのであった。


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