オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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冒険者としての活動

エ・ランテル。三重の城壁に囲まれている城壁都市。正しく都市その物が壁といった印象を受ける。その城壁を二つ潜ったところのエリアは市民のためのエリアで様々な立場の住民が日々の営みがある。商いに勤しむ商人が声を張り上げて盛んに客を呼び込んでいた。しかしある一団が歩いている姿を見ると思わず目が留まり、声が静まり返る。先頭を歩く漆黒に輝きつつも金と紫の文様の入っている全身鎧は様々な羨望の視線を集める。その隣を歩く全身を漆黒に染めているかのようなロングコート、漆黒のテンガロンハットと全身を黒に統一しているサングラスを掛けている男。だがそれ以上に目を引くのは後ろの二人の女性だろう。

 

すらっとした細い身体に豊かで艶やかな黒髪をポニーテールにしている、白い肌は太陽の輝きを受けて真珠のように輝く。男であればだれもが見惚れるだろう、そんな女性がもう一人。艶やかでキメ細かい輝きを放つショートに揃えられたブロンド、纏っているマントは自己主張の激しい胸部を隠すかのように。そんな絶世の美女二人を連れている戦闘の漆黒の二人にも視線が集まっている。一体何者なのかと。

 

「モモンさー……ん。周りにいるやぶ蚊共を駆除してもよろしいでしょうか」

「ダメですよナーべさん、ここでは私たちは人間としているんですから。無用な問題は避けないと、まあ気持ちは分かりますけどね」

「も、申し訳ございませんセラス様……」

「私にも様はなしですよ。今は同じチームの同僚なんですから」

「し、しかし……」

 

『アーカードさん、セラスを連れてきて貰って有難う御座います。宿屋の事もありますし、一緒に来てもらうのは正解でした』

『セラスは人間に差別的な意識も薄いからな、玉藻よりも適任だろうと思ってな』

『ああっ……玉藻って確かカルマもマイナスでしたもんね……でも本当は食われるかもっておもったからでしょ』

『……まあな』

 

冒険者としての登録も無事に済ませ、紹介された宿屋で男に絡まれた。質の悪い奴らだったがそれらを一蹴した、がその時にポーションを割ってしまったので弁償したという事が起きた。矢張りモモンガの全身鎧は目立つのではないかと思いつつも、それよりもナーベラルとセラスが一番目立っているのだと。これから漸く冒険者組合で依頼を受けて自分達を顔を売ろうとしているのだが……少々先行きが不安である。

 

「惚れました!!一目惚れですお嬢様方!!」

「回れ右して帰っていただけます?」

「話しかけないでくださいミジンコ」

「ああっ冷たいお言葉が更に胸にしみる……?!!」

「「はぁっ……」」

 

……連れてくるのはセバスみたいな男の方がよかったのかもしれないっと本気で思い始めた二人であった。

 

 

「改めまして……本当に申し訳ありません。私たちは『漆黒の剣』というチームを組んでおります、私がリーダーをしているペテル・モークです。うちのチームの仲間であるルクルットが失礼を……これはチームの目や耳としてとても優秀な野伏なんですが……その、女性に目がないというか節操がないというか……」

「おいおいそんな言い方ないだろうぉ?今回はマジで本気さ、全身に電流が奔る程の恋さ、ああっなんて麗しいぃ!!」

「いい加減にしろって……ええっとそれで」

 

曰く本気の恋をしたというルクルットの事を放置して後の二人の紹介をされる。森祭事(ドルイド)のダイン、そして魔法詠唱者である『術士(スペルキャスター)』の異名を持つニニャ。魔法の天才として名高く、本人は恥ずかしがっているがその腕前は確か。生まれつきの特殊能力ともいえるタレントである『魔法適正』を保有し魔法の習熟が通常の倍近く早いらしい。ゲーム的に例えば魔法職系の経験値倍加、と言った所だろうか。

 

そして同時にこの街には更に特異なタレント持ちが居るという事も聞く事が出来た。ンフィーレア・バレアレ。あらゆるマジックアイテムを使用可能という物、それを聞いて思わず緊張が走る。ユグドラシルでは職業によっては使用不可のアイテムなどもあった、それを完全に無視出来るというのはかなりの強みになるし危険にもなりえる。注意しておく必要がある。

 

「私がリーダーのモモン、こちらはサブリーダーの」

「ヴァン・ヘルシング、気軽にヴァンと呼んでくれて構わない」

「そしてナーベとセラ・ヘルシングです」

「ほほう、という事はヴァン氏とセラ氏はご家族という事でしょうかな?」

「そのような物と思ってくれても構わんよ、私にとってはまだまだ手の掛かる小娘であることは変わらないからな」

「ええっ!?ちょっと酷くないですか!?」

「ならさっさと成長する事だ」

 

むっ~っと唸りながらジト目で睨みつけるセラスの視線を軽く受け流すアーカードにモモンガは矢張りロールプレイガチ勢は頼りになるなぁと改めて安心する。設定上ではあるが二人は親子という事になっている、まあ実際にセラスはアーカードの眷属という設定なので家族というのは間違っていない。

 

「それで仕事についてはエ・ランテル周辺でのモンスター・ハントで宜しかったかな」

「はいっ報酬は冒険者組合を経由して街から支払われる報奨金という事になります」

「(ドロップ品目的に近い物だな……)私に異存はないがリーダー、君は如何かな?」

「私も問題はないよ」

「異存はございません」

「お二人が問題ないのでしたら私も問題ないです」

 

問題もないという事でモモンガ達は漆黒の剣と共にモンスターを討伐することになったのである。

 

「ではまず一言……ヴァンさん、ぜひお義父様と呼ばせてください!!」

「せめてセラを口説いてからにしろ。セラ、その気はあるか」

「皆無ですね、というかタイプじゃないです」

「あうぅうんでも俺は諦めないぜ、この真実の愛を知っていただくまでは!!」

「本当にすいません、モモンさんにヴァンさん……」

「「いえいえ……」」

 

既に互いに準備も揃っているという事ですぐに出立する予定だったのだが……ここで予定外の事が起きる。自分達に直接指名の依頼が舞い込んできた、しかも噂のタレント持ちのンフィーレア・バレアレから。思わず疑問に思いつつも礼儀を考えて漆黒の剣との依頼を優先しようとも考えたが、是非とも関係を築いておきたいというモモンガの考えから、逆に自分達が漆黒の剣を雇ったうえでンフィーレアの依頼を受けるという事になった。

 

『しかし、あの宿屋の一件がこんな事に繋がるなんて……ラッキーと思っていいんですかね』

『思ってもいいんじゃないかな。あらゆるマジックアイテムを使用出来る、出来る事ならば手中に収めておきたい人材だ。関係を築くにはちょうどいいと思っておこう』

『そう言えばアーカードさん、セラスは基本ガンナーですけど武器は大丈夫なんですか?』

『昔俺が使ってた奴を使わせるさ、あれならこの世界でも問題ない』

『ああっあれですね!』

 

そんな会話が<伝言>で行われながら、モモンガ達はエ・ランテルから出立するのであった。




ヴァン・ヘルシング:2004年公開の映画タイトル。モンスター・ハンターであるヴァン・ヘルシングの活躍を描くモンスターアクション映画で作者が大好きな映画の一つ。ちょうどヘルシングで繋がりがあるので名前として採用。

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