オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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この世界での戦い

初めての依頼であるンフィーレアの護衛任務、それに従事しながら薬草が取れる森までの道を歩いていく。幸いなことに今のところモンスターの気配などはなく順調に工程を進められている。レンジャーであるルクルットがセラとナーベに色目を使ってちょっかいを掛けるのではと少々心配していたが、如何やら仕事はしっかりするタイプなようで安心した。それとも、ただ単にアーカードにいい所を見せようとしているだけなのかもしれない。

 

「セラ、扱いは気を付けろ。普段のとは感覚がまるで違うからな」

「はいっ大丈夫です、扱いきってみせますよ」

 

そう言って背負っているクロスボウを担ぎながら力強くアピールをする。セラスが持っているクロスボウはアーカードが拳銃にたどり着くまでに長らく使用していたクロスボウで中々に思い出深い武器。セラスも本来はアーカードと同じく銃を使用するが、この世界ではあまりにも目立ちすぎるのでこのクロスボウを与えたのである。

 

「にしてもセラちゃんは俺と同じく弓を使うなんて運命を感じるなぁ!」

「クロスボウと弓は同じじゃないですよ」

「たっはぁ~キッツいなぁ!」

 

相も変わらず口説こうとしているルクルットに呆れつつも、これでも必要な人材なのだからと肩を竦める。そんな中で出てきたのはこれから行く森をテリトリーにしているという強大な魔獣、通称森の賢王であった。

 

「森の賢王、ですか」

「はい、ここからカルネ村辺りまでがそのテリトリーなんです。その影響も滅多な事でモンスターは姿を見せません。他のモンスターには出会わないという意味では楽ですね、まあその賢王に出会ってしまったら最悪な状況でしょうけど」

「大丈夫だぜナーベちゃんにセラちゃん、俺が守るからよぉ!」

「ナメクジ程度に守られるほどやわではありません」

「貴方よりヴァンさんを信頼してるのでいいです」

 

これほどまでに拒絶や冷たい言葉を掛けられているというのにめげずにアタック出来るというのは尊敬するべき事なのか、諦めが悪いと呆れるべきなのだろうかと思っていると突然ルクルットが表情を引き締める。どうやらモンスターの接近に気付いたようだ、真剣な表情でモンスターの方向を指さすと確かに複数のモンスターがこちらへと接近してくるのが見える。それを見てセラスは素早くクロスボウを構える。

 

「この距離ならこのクロスボウで容易く撃ち抜けますけど、如何しますか」

「折角だ、漆黒の剣の皆さんに私たちの力を見て頂きましょう。我々も頼りになるという所をお見せしなければ形式上の雇い主としては情けない」

「リーダーに従おう」

「同じく」

「了解しました、では我々はンフィーレアさんの盾となりますが出来る限りのフォローはさせてもらいます」

 

ぺテルが素早く指示を出す、簡単なものだが各自がそれらを完全に理解して配置につきながら準備を整えていく。連携と経験が程よく調和している良いチームだという事を再認識しながらモモンガ達は前へと出る。敵はゴブリンとオーガの混成した群れ。大した相手ではないという事を理解しながらも普段とは違う戦い方でどこまでやれるかを試すいい機会だと思いながら、モモンはマントの下に隠すように装備していた巨大な剣を抜刀する。

 

「おおっなんと立派な……!!」

「あのサイズの剣を二刀流ってどんな力だよモモンさん!?」

 

モモンが抜刀した剣のサイズは150を超える程の巨大な物、その長さからかなりの重量である筈なのにそれを軽々と片手で、しかも両手に保持しているというモモンの怪力に漆黒の剣は思わず驚きを隠せない。そしてヴァンも懐から武器を出す。それは籠手に何やら丸鋸を付けているかのような特殊な物、そしてヴァンは手のひらにあるトリガーを握るように引くとそれに呼応するように丸鋸が勢い良く回転し始めていく。あの勢いの丸鋸なら易々と樹木を削り取って倒してしまうだろう。

 

「行きますっ!」

 

クロスボウを構えたセラがそのトリガーを引く、その途端クロスボウからは凄まじい速度の矢がまるで銃弾のような速度で射出されていく。それも連続して何本もの矢が撃たれていく、飛来する複数の矢の雨をゴブリンらは頭部に受けて次々と倒れていく中を切り込むかのようにモモンとヴァンが殴りこんでいく。全身を使って、剣を自らの一部と化すかのように洗練された職人の技のような一閃がオーガへと到達、それとほぼ同時にヴァンの拳がもう一体のオーガの頭部を潰しながら両手両足を回転する丸鋸の手刀によって、一瞬で二体のオーガが両断される。それらの隙を詰めるかのようにナーベが魔法を詠唱、指先から紫電迸る<雷撃(ライトニング)>が襲い掛かりゴブリンを貫通してオーガを焼く。

 

「す、すげぇ……」

「ミスリルどころの腕前じゃない、オリハルコン……いや、アダマンタイト級に匹敵するんじゃないか!?」

 

一瞬にして多くの同胞が殺された事に動揺し恐怖したゴブリンたちは脱兎のごとく退却し逃げ去っていく、それをセラが構えたクロスボウが狙い撃ってあっさりとゴブリンとオーガの集団は殲滅された。

 

「いやぁ本当にお強いですねモモンさん達は!!」

「正しく鬼神のごとき活躍とは、あのような事を言うのであるな!!」

「マジでビックリしちまったもんな!俺達がフォローする暇もないぐらいに手早い連携が出来てたもんなぁ!!」

「僕たちもあれぐらいになる位に頑張らないといけないですね!」

 

漆黒の剣の皆はモモン達の活躍に興奮している様子、冒険者として彼らもそれなりに腕が立つと自負はしているが改めて上の存在の力を目の当たりにすると嫉妬ではなく興奮と憧れを抱いてしまう。自分達もあそこまで行きたい、努力していってみせるという素直な気持ちが沸き上がる分、彼らは間違いなく伸びるとモモンとヴァンは確信している。

 

「にしてもさ、セラちゃんのクロスボウってなんで連射出来るんだ?クロスボウって威力高いけどその分手間がかかる筈だけど」

「それは特殊な細工がしてあってな、多くの矢を装填しそれを放てるようにしてある。その分、手入れに手間がかかるがな」

 

嘗てアーカードが使用していたクロスボウ、ユグドラシル内では<スーパークロスボウ>とも呼ばれていた。高圧ガスを利用して矢を連続して放てるという物で矢もマガジン式で弾幕を張る事も出来る。但し、余りにも高速で矢を撃つので直ぐにマガジンが空になって再装填が必要で当てるにも本人の力量に依存するという弱点がある。だがこれはアーチャーとガンナーがどちらも使えるという利点もあるのでユグドラシルではそれなりに人気の武器の一つだった。

 

「こりゃ俺の弓はいらないかな?」

「その分、矢をあっという間に使い切る。腕が肝心だ、それに再装填の間にお前が矢を撃ってフォローするという手もある」

「おおっ成程!ヴァンさん、もしかして俺の事セラちゃんの相手として良い感じに見てる!?」

「チームの役割としてはありだとは思っている。それだけだ」

「たっはぁ~手厳しいぃ~!」

 

そんな中で、本来魔法詠唱者であるモモンガは自分がこの世界で前衛としてそれなりに出来る事に安心感を得ていた。矢張り前もってコキュートスに剣の使い方を習ったのは間違いではなかったようだ。

 

『モモンガさん、コキュートスの教えは正しかったな』

『そうですね、まあその分結構スパルタでしたけど……』

『そういう所は親そっくりだな』

『全くその通りですね』


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