オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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吸血と眷属

エ・ランテルの共同墓地、そこで起こったアンデッドの大量の発生。それを引き起こしたと思われる一団の撃破を終了したモモンガ達、そんな彼らがこれから行おうとしていたのは、セラスが自身のスキルでそれなりに強い事を見抜いたクレマンティーヌに対してのアーカードによるスキルの実験であった。クレマンティーヌはアーカードの<魅了の魔眼>を受けた事による魅了を受けている状態になっているが、如何にも様子がニグンに対して行使した時とは異なっている。端的に言えば性別の違いだろう。

 

<魅了の魔眼>その物は相手に魅惑の効果を与える物だが、クレマンティーヌはアーカードに対して女として魅了されてしまった。強烈な恋愛感情と魅了が掛け合わせてしまいこの状況が出来上がっている。ニグンの場合はアーカードのカリスマ性に魅了されたに近い状態だが、異性の場合はそこに恋愛感情がプラスされてしまう。

 

「<魅了の魔眼>……これはかなり強力だな」

「そうですね、マスターの場合は<始祖の吸血鬼>ですから魔眼の力が更に強いのでそれもあると思います」

「成程。吸血鬼としての格というやつか……」

 

セラスも同じ魔眼を使う事は出来るが、アーカードほど強くはない。そこは吸血鬼としてのランクの差という奴だろう。

 

「さてクレマンティーヌ、改めて言っておくが私は吸血鬼だ。人ならざる化け物だ」

「吸血鬼……?」

 

ヴァン・ヘルシングとしての姿から本来のアーカードとしての姿に戻る。同時に<人化の指輪>も外して完全に元に戻るとクレマンティーヌも目の前にいるのが吸血鬼であることを完全に理解したのか驚きを隠せないといった様子だ、言う必要はないかもしれない。だが魅了されている彼女は逃げる事はない、単なる自己満足だがアーカードはやっておきたかったのだ。

 

「私の眷属になる、それは人ならざる者へと成り果てるという事だ。殺されぬ限り死ぬ事の無い吸血鬼となる」

「……私が、吸血鬼……構いません、いえ寧ろ私を吸血鬼にしてほしいのです!!」

 

頬を赤くしたまま、神への祈りをささげるかのように手を組んで懇願するクレマンティーヌ。そこに迷いなどはなく真っすぐな物がある、それは魅了されたからなのかは定かではない。

 

「貴方と同じ時を刻む事が出来るのならば私もその存在へとなりたい……永遠の忠誠を誓わせてください!!」

「……それはお前の意思だな」

「はいっ今まで生きてきてこれほどまでに燃え上がるような感覚なんて初めてです……この思いを、永遠に感じていたい……そして、貴方のお傍にお仕えしたい……」

 

彼女にとってアーカードから受けた<魅了の魔眼>によって与えられた感情は初めて体験する燃えるような恋情だった。愛を受ける事も本気で誰かを愛する事もなかった彼女にとってそれは刺激的すぎた。それが魔眼による偽物だったとしても構わない、もう自分はこれなしでは生きていけない。この愛に生きたいと心の奥底から思った。狂ってしまっている自分に残っている女がまだ残っていた、それが本気で望んでいる。この偽物に本当に生きていたい。

 

「良いだろう、これからお前を私の眷属とする」

 

膝を付く、彼女と目線を合わせながら軽く喉元を撫でてやる。触れられただけで全身を駆け巡っていく快感、ゾクゾクとした物と電流のようなものが全身を突き抜けていく。たとえ今殺されたとしても後悔がないレベルの快感に身を震わせる。首筋が伸び切ったところで指を止めながらそっと彼女の首元へと口を持っていく、口内から鋭い牙が姿を見せながら息がその首筋を刺激する。そして―――

 

「スキル発動<吸血>」

 

アーカードはクレマンティーヌの首へと牙を突き立てた。牙が皮膚を破り、肉を裂く。そこから血が溢れていくがそれらが彼へと吸われていく。この世界で初めて味わう血の味、人間の頃では考えられない程に酷く甘美な味わいがする。濃厚な血の味が口内を支配する中でアーカードはその美酒に酔いそうになりながらも血を吸い続ける。

 

「あぁぁっ……んぁっ……ひゅっぁぁぁぁっっ……」

 

モモンガは目の前で行われている<吸血>の光景を見ていたが次第に見ていることが辛くなってきた。それは余りにも簡単だった。

 

「ナーベラル、私達は霊廟の奥へと入るぞ。依頼を果たすとしよう」

「承知致しましたモモンガ様」

「で、ではセラスここは任せるぞ」

「お任せくださいモモンガ様、確りとここは守っておきますので」

 

ナーベラルを連れて霊廟へと足を踏み入れていくモモンガ、ハッキリ言ってその光景を見ていられなくなったのだ。吸血鬼に血を吸われるという事をされているクレマンティーヌ、彼女が発する声は皮膚が破られた苦痛の声でもなく、肉を裂かれた悲鳴でもない。まるで性交をしているかのような悦びを孕んだ嬌声のようだった。吸血をされる側が与えられるのは苦痛ではなく凄まじいまでの快楽、同時にアーカードの血の一部が彼女に流れ込まれ、クレマンティーヌは彼の眷属となる。

 

「ぁぁっ……んんっっ……」

「……羨ましいなぁ……」

 

セラスは血を吸われているクレマンティーヌに思わず羨望を感じてしまった。彼女もアーカードの眷属ではあるがそれでも主人に血を吸われるという行為に如何してもそんな感情が生まれてしまった。自分も吸われたいという思いを抱いていると吸血が終わったのかクレマンティーヌから離れる。クレマンティーヌの身体は見た目は変化はないように見えるが、瞳が血のように赤く染まり吸血鬼の証拠でもある牙がそこにあった。

 

「これでお前は人間ではなくなった。どうだ吸血鬼(ドラキュリーナ)となった気分は」

「―――世界が違って見えます……ご主人様……」

「それは上々。お前は私の物だ、私のために全てを尽くせ」

「承知致しました。このクレマンティーヌ、アーカード様の眷属として恥じぬ働きをすることをお誓い致します」

 

モモンガが霊廟の中でンフィーレアを無事に保護し戻って来た時に見たのは、完全に眷属となりアーカードに跪くクレマンティーヌの姿であった。


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