オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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困惑

視界に広がっていたシステム情報内には時刻もあった、それがユグドラシルのサービス終了である0時を告げた。瞳を閉じて一つの世界の終わりを待っていたモモンガとアーカード。だが再び瞳を開けた時、待っていたのは未だ変わらずに死の支配者と始祖の吸血鬼の姿をしているお互いの姿であった。

 

「……あれ、アーカードさんそこにいます、よね?」

「あ、ああいるぞ。これってダウンが延期になったのか?」

「いえでもそんな通知は一切来てませんよ」

 

サーバーダウンによる強制排出が行われる様子が全くない。お互いが未だにプレイヤーとしての姿をしているうえで意識があるのが良い証拠となっている。ダウンのロスタイムか、それとも何か好ましくない問題が発生した事によるサーバーダウンの延期なのだろうかと思考が巡っていく。

 

「な、なぁモモンガさん大変だ俺の奴壊れたかもしれん。コンソールが開かない」

「えっマジですか!?んじゃ俺が……って俺のも開かない!?」

「他の機能も通じないっって如何なって―――」

 

二人して何とか状況の確認のために出来るだけの手立てを打とうとするのだが何の感触もなく焦燥が生まれていく。一体何が起きているのか全くもって把握が出来ない。必死に手を動かしても虚空を掴むだけで何も応えない。この状況を何とかしようとする中でそれを邪魔する物があった、いや正確には歓喜に震え咽び泣く声だ。

 

「ア、アーカード様!よ、よくぞご帰還していただけましたっ……!!」

「「えっ」」

 

その声に思わず視線を送るとそこには跪いたままの体勢でこちらに顔を向けながら、歓喜に溢れている声と感涙を流しているアルベドの姿がある。あり得ないという思考が二人に巡る、彼女はNPCだ。言うなればプログラム通りの行動しか出来ないしそれ以外の行動なんて失敗する。RPGの村の中にいる村人が自発的に外に出て行動するかのような出来事に言葉を失う。夢で見ているかのような不思議な感覚だ、しかしこのまま美女が泣いているのを放置するのもダメだろうと思ってアーカードは言葉を必死に紡ぐ、ロールプレイガチ勢としての能力をフル活用しながら。

 

「アルベド、如何やらお前には深い心配を掛けてしまったようだな。止むを得ない状況だったとはいえ済まなかったな」

「とんでもございません!!至高の方々が去っていかれたのは私などでは理解出来ないような深いお考えがあったが故。それならばアーカード様が私などに謝罪することなどありません!」

「これはケジメだ、私はここを離れてしまった。お前が私の事を思っているのであれば私の謝罪を受け入れて欲しいのだ」

「な、なんと慈悲深く勿体ないお言葉……!!この守護者統括アルベド、心してお受けさせて頂きますっ……!!」

 

更に歓喜の涙を流しながら頭を下げるアルベドにアーカードは乗り切ったと思いつつもこの状況は明らかに可笑しすぎるという事を理解する。確かに自由度が売りでもあったユグドラシルだったがここまでの自由度なんてない、これではまるで……彼女が生きているようではないか!?アーカードが自分の考えに驚きを感じていると途端に感情が静まっていき平常心に近い状態へと戻った。

 

「(あ、あれ?)」

「アルベドよ、お前がアーカードさんの帰還を喜ぶ気持ちは良く理解出来る。だが今はその帰還を喜ぶ前よりもやるべき事がある」

「はっモモンガ様、なんなりとご命じください!」

「うむっでは1時間後に守護者を第六層の闘技場に集めよ。そしてセバス、お前はプレアデスを連れてナザリック地下大墳墓を出て周囲を探索せよ。時間は1時間、そして範囲は周囲1キロとする」

「承知致しましたモモンガ様」

「アルベド、アーカードさんの事はまだ伏せておけ。重要な知らせがあると言って招集するのだ」

「承知致しましたモモンガ様」

 

アーカードの目の前でテキパキした指示を出しながらもまるで魔王であるかのような口調と威厳のある姿を見せるモモンガ。そう自分に影響されてロールプレイに力を入れるようになったモモンガのスタイル。その指示に従ってアルベドやセバスやメイドたちが玉座の間から退出していく中でモモンガは身体から力を抜いて玉座に溶けるかのように座り込む。

 

「はぁっ~……」

「モモンガさん、凄い堂に入ってたぞ魔王っぽいロール」

「なんだかそこまで焦りや緊張がなくて……何か一定以上の感情の揺れがあると、それが強制的に抑えられているような感じがするんですよ」

「アンデッドって種族の関係かな、俺もそんな感じがしたよ。精神状態異常が利かないとかの関係か」

「恐らくは」

 

自分がプレイヤーキャラクターとして設定している種族などの特性が反映されているとも取れる状況と事象、益々これが夢だと思いたくなってくるのだが……二人同時に同じ夢を見ているとも考えにくい。

 

「もしかして俺達……ゲームの世界に取り残されたとか、そういう感じなのか……?」

「そんなひと昔のネット小説じゃあるまいし……」

「だけど説明がつかないぞこれ……だけどそうなるとモモンガさん、あれは正解だったかもしれないぞ」

 

アーカードの言葉に思わず何がですかと聞き返す、それはアルベドのビッチ設定をギルメンを愛している設定に変えたことであった。

 

「さっきのアルベドの話だとゲームにログインしていなかったメンバー、いや引退していたメンバーは去ったって認識されてるみたいだ。彼女は生きていると仮定する、それは親がいきなり居なくなったってことにならないか?」

「……確かにそうですね、そうなると俺は大丈夫だとしてアーカードさんって大丈夫ですかね……NPC作ってましたよね、しかも一人は愛が重い系じゃありませんでしたっけ」

「……よしログアウトしよう」

「だから出来ないんですって!!」

 

一先ずそれは置いて置く事にしてアーカードは続ける。少なくともアルベドは自分が帰ってきた事を喜んでくれていた、即ち彼女は自分を好意的に思ってくれている。ギルメンを愛しているという設定故か、自分達の味方であると考える事が出来る。

 

「兎に角、先ずは闘技場に行きましょう。今出来る事をしていってから考えましょう」

「でも闘技場でやることって……あっもしかしてスキルとか魔法とかか」

「はいっ今の俺達でも出来るのかどうかを試しておかないと」

「……でもさ、俺の武器って確か宝物庫になかったっけ」

「あっ」

 

そう、アーカードは治療のためにユグドラシルを辞める時に必ず戻るという願掛けにと愛用の武器をモモンガに預けていたのである。その武器は何時でも帰ってきてもいいようにモモンガが宝物庫に厳重に保管している。この意味不明な状況ならば武器は取りに行くべきなのだろうが……モモンガとしては出来れば宝物庫に行く事は避けたい。何故なれば、あそこには彼の自走式黒歴史がいるのだから。

 

「ま、まあ何かあっても俺がアーカードさんを守りますから!!この<スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン>もありますし!!」

「……ごめん頼むわ」

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