オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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第九階層に存在するアーカードの私室。吸血鬼だからか明かりはそれほどまでつけられてはおらず、薄暗くなっている。照明自体は存在しているが吸血鬼の特性上、夜目は利くので暗闇の中でも十二分に物は見える。そんな薄暗い室内では二つの紅い光が妖しく輝いている。それが見据える先にあるのは自らの両手、そして瞳の光を反射するかのように光を放つ針。時折光が隠れたりもするが、光は輝きをやめない。

 

「よしっここでこいつを埋め込むか」

 

針を置きながら近場に置いていた掌に収まる程の小さな宝玉、それを針を通していた物へと置くと宝玉が溶けるかのように崩れて一体化していく。完全に一体化したのを確認してそっとそれに触れてみるとそれ全体から声が聞こえてきた。

 

『技術の発展は最初に軍事、次にエロと医療に使われるのだ。これはエロの偉大さを物語っている!!』

「……成功はしたが真っ先に流れるのがこれか」

 

溢れてきたのはナザリックのNPC達が呼ぶ至高の御方四十一人が一人、アインズ・ウール・ゴウンの中で遠距離攻撃では随一を誇り『爆撃の翼王』とも呼ばれた事があるシャルティアへの生みの親であるペロロンチーノの声だった。アーカードが今行っているのはシャルティアの褒美の制作、趣味の裁縫とマジックアイテムや過去の記録などをフル活用したペロロンチーノの人形であった。

 

『そう……この俺こそが……爆撃の翼王、エロゲーマイライフのペロロンチーノだっ!!』

「これはあれか、ウルベルトさんと一緒に台詞を作ってる時の奴か……後者は絶対にいらんだろ」

『うおっほぉうこれはまた……溜まりませんなぁ……(じゅるり)ヒィッまだ何も言ってねぇだろ姉ちゃん!?』

「……ああっあの時か」

 

テストの為に何度も触れて記録されているペロロンチーノの声を聞いて行く度のそれがいったいどんな状況の物なのかが彼の脳裏に過っていく。懐かしきあの時代、様々な意味での完全最高の黄金期。アインズ・ウール・ゴウンにとっても、自分にとっても最高の時だった。ペロロンチーノには色々言われたりされたりもしたが、なんだかんだで仲も良かった。一緒に馬鹿をしたり、自分が窘めたり、怒られるペロロンチーノの盾にされてので致し方なく茶釜さんを静めたり……今思うと自分はかなりギルドの潤滑剤としての役目が多かった気がする。

 

特に一番多かったのがキレる茶釜さんとペロロンチーノの喧嘩という名の茶釜さんの一方的なリンチ仲裁、同着でたっちさんとウルベルトさんの意見の食い違いによる口喧嘩の仲裁と妥協案の提示とその後の後始末が多かった。

 

「本当に、楽しかったな……」

『何しんみりしてんだよ。また来れるさ、俺は絶対に大丈夫さ。また―――ここに来てくれよ』

「―――」

 

思わず、その時に息を呑んだ。思わず昔を懐かしみ気分が落ち込んでしまった時に流れた言葉、それは自分が治療のために一時ギルド脱退をする時にペロロンチーノから言われた励みの言葉だった。ギルドの皆から言われた、元気になってくれ。お前がいてこそのこのギルドなんだと、様々な思いが込められた言葉の一つ、それを聞いたアーカードは手持ちの宝玉にその言葉を移した。シャルティアには悪いかもしれないが、この言葉は渡せないと思ったのかもしれない。

 

「ああっそうだな。私が落ち込むなどらしくない……私はアインズ・ウール・ゴウンのアーカードなのだからな」

 

そう思いながら人形に触れる。自分らしくいればいいと改めて思わせてくれた彼に感謝を想いながら―――

 

『アーカードさんの魔眼ならエロゲ―の状況作り放題ですよね!!催眠系の奴とかすげぇいいじゃん!!うっひょ想像したら漲って来たぁぁ!!!』

「ペロロンチーノォォォオ!!!!」

 

感動を返せ!!と言わんばかりにアーカードが人形を地面へとたたきつけるのであった、そして拾い直した後でアウトな音源が入っていないかを確認していきそれらを別の物へと移し替えていくのだが……その際にペロロンチーノのあれな言葉やらを大量に聞く羽目になったアーカードは溜息と共に肩を大きく落としていた。そして同時になんでこんな音声が残っているんだと激しく思うのであった。

 

 

「面を上げよ」

『ハッ!!』

 

改めて王座の間、そこに階層守護者を集結させたモモンガとアーカード。二人で協議を重ねた結果のこれからの方針やらを語るという事で集まって貰っている。

 

「今回、シャルティアが大きな手柄を上げた事は非常に喜ばしいと同時にこの世界にも私とアーカードさん、いやナザリック地下大墳墓に近しい存在がいると確認出来た。世界級アイテムの存在、故にこれから行うこの世界での情報収集は細心の注意を払う必要がある」

「そこで我が友モモンガと協議を重ねた結果、各守護者に世界級アイテムを預ける事となった。この意味は言わずとも理解が及ぶと私は確信している」

 

ナザリック地下大墳墓の外にて作戦行動を行う階層守護者には世界級アイテムを持たせ、この世界に未だある可能性がある世界級アイテムの対抗策とする。そして行動を行う際にも何か問題が発生した場合には即座に連絡、危険が起こった場合には撤退を視野に入れる事を厳にする事を伝える。誰にどのアイテムを渡すかは後々決定するとして今回の本題ともいえる物へと移行する。

 

「シャルティアよ。お前への褒美だがアーカードさんとこれも協議を重ね。我々が相応だと判断したものを用意した」

「モ、モモンガ様!恐れながら矢張り私はそのような褒美を受け取るなど畏れ多く……」

「そう言ってくれるなシャルティアよ。お前が受け取ってくれないと私たちも困ってしまう、これはこれから手柄を立てた者へと与える物のテストケースともいえる。それに過度な謙遜は逆に侮辱となる」

「も、申し訳ございません!!お、恐れながらしかとお受け取らせて頂きますっ!!」

 

少々脅しているようになっている事に二人は少し罪悪感を覚えるが、守護者たちの忠誠心の事を考えるとこの位の事を言わないと受け取ろうとはしてくれないだろう。他の守護者達がいったいどのような物を送るのだろうかと少しソワソワしている、そして同時にシャルティアへの羨望の視線が向けられて行く。

 

「シャルティアへの褒美はお前の働きに見合う物だと私たちは確信している。受け取るがよい」

「有難き幸せでありんす……これは……本でありんすか?」

 

モモンガより手渡された物を胸に抱いたのちに改めて見る彼女に何処か愛らしさを覚える二人。

 

「そうだっそれは<百科事典(エンサイクロペディア)>というアイテムだ。様々なモンスターの情報などが掲載されており、自分で書き加える事も出来るものだ。それ自体は大したものではないが……それはペロロンチーノさんが使っていた物だ」

 

<百科事典>はモモンガの言う通り大したアイテムではない。ユグドラシル開始時、プレイヤー一人一人に配られるアイテムで所謂自分で編集出来るポケモン図鑑のようなものだ。自分で書き込んでいく事が可能なのでモンスターの戦闘能力や弱点など書き込んでいくのが有効活用に繋げる事が出来る。が、ペロロンチーノの物には彼らしい物が書かれまくっていたのでそれらはモモンガとアーカードが削除している。そんな事を知らない守護者達だが、それがペロロンチーノの物だと分かった途端に凄まじい物が流れた。

 

「な、なんとっ……!?」

「くぅぅぅぅっっ……!!な、なんて羨ましいぃぃぃっ!!」

「シ……至高ノ御方ノ持チ物ヲ……頂クノカシャルティアハ……!?」

「世界級アイテムに匹敵する褒美、という訳ですな……」

「す、凄い……」

「世界級アイテムの入手、やっぱり凄い偉業なんだね……」

 

彼らからすれば至高の御方の持ち物は世界の至宝と呼んでも差し支えない。そんな物を頂けるという事は至上の喜び、改めて<百科事典>を持っているシャルティアの手が震え始める。自分の創造主の持ち物が自分の手の中にあるという興奮が迸っている、そして自分にこれほどの至宝を与えてくれたモモンガとアーカードに一層の忠義と全てを捧げる事を誓う。この様子にモモンガとアーカードは若干やりすぎた……?と思い始めなくもないのだが、折角作った自分の作品をしまう訳にもいかないと決意を固めてアーカードは声を上げる。

 

「さてシャルティアよ、次の品だ。これは私からと思ってくれ、これもお前の働きに見合うと思っているぞ」

「は、はいっ!!」

 

既に泣きそうになっているシャルティアだが、必死に精神を立て直しながら顔を上げる。胸には受け取った<百科事典>を抱きしめている、そのせいで明らかに胸に詰められているパッドが歪んでズレているのだが本人はそれに気付けずにいる。まあそれはしょうがないという物だろう。

 

「さてっ送る品は……これだ」

 

守護者は一体どんなものが送られるのかと喉を鳴らす中でアーカードの指が鳴る。その瞬間、アーカードの隣にアーカードとほぼ同サイズの影が出現する。純白と黄金の翼に輝く翼、鳥を思わせる嘴を持つマスクのような兜、威風堂々たる佇まいをしているバードマンがそこにあった。それを見た瞬間シャルティアは思わず、立ち上がってしまった。許しを得る事もなく立ち上がる事は本来無礼に当たる筈なのにそれすら頭から消し飛んでいた。そこにあったのはシャルティアの創造主、至高の御方が一人、ペロロンチーノそのものであったのだから。

 

「どうやらその反応を見る限りお前もよく似ていると思ってくれているようだな」

「似てっ……ア、アーカード様……こ、これは……」

 

なんとか衝撃から精神を立て直すがそれでも酷くぐらついている状態、声と身体も震えている。アーカードも少しやりすぎたかなと思いつつも話をする。

 

「落ち着くのだシャルティアよ、これは私が制作した人形だ。<1/1スケール・ペロロンチーノ人形>というべきかな」

「人形……!?本当に人形なのですかアーカード様!?い、いえ確かにペロロンチーノ様の気配は感じませぬが……これはあまりにも……!!」

 

シャルティアは落ち着きかけている、そこで漸く目の前のペロロンチーノが本物ではないと理解したがそれでも余りにも似すぎている。正しくペロロンチーノの生き写しその物だ、他の守護者達もシャルティアと同意見なのか目を丸くし本当にペロロンチーノが現れたのかと錯覚するほどの超クォリティであった。

 

『ちょっとアーカードさん本気出し過ぎでしょ!?』

『い、いやぁ似てる方がいいかと思ってさ……MAXレベルで<裁縫>取ってるからフル活用したんだけど……』

『その結果がこれですよ!!?これじゃあ俺の<リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン>出せないじゃないですか!!?これじゃあ保留にしないとマジでシャルティアが壊れますよ!?』

『……ごめんなさい』

 

本人からすれば親切心と喜んでくれるのではないかという善意からやった事なのだが、これは想像以上に不味かったのかもしれない。

 

「すまないシャルティア、お前の気持ちを考えずに……」

「い、いえそんなアーカード様が御謝りになられる事など一つもございませんでありんす!!ただ、本当にペロロンチーノ様かと見間違うほどだったので……し、しかしこれを本当に私が頂いても……!?」

「ああっその為に作ったのだ。それとこのままだと受け取りにくいか」

 

そう言ってアーカードは<ペロロンチーノ人形>に触れてあることを念じる、すると人形はそれに応じるようにポンッ!という音と共に両手で抱えられるほどの大きさのデフォルメ人形へと変化した。この人形は等身大のリアルタイプと小さいSDタイプに変化する事が出来るのである。それを見たシャルティアは愛らしくなったペロロンチーノの姿に超興奮してしまい、先程の<百科事典>の影響もあったからか、キャパオーバーを起こしてしまい気絶してしまった。

 

『……アーカードさん』

『……本当にごめんなさい』

 

その後、守護者達には働きに応じて褒美として各守護者の創造主のアイテムを授ける事もあるという事を説明しその場を解散。シャルティアは自室に運び込み、ベットに<ペロロンチーノ人形>と共に寝かせることにした。

 

そして―――シャルティアはそれから出来るだけSDタイプの<ペロロンチーノ人形>を胸に抱くようになり、笑顔が絶えなくなった。そして<ペロロンチーノ人形>からペロロンチーノの音声が流れるとアーカードから説明されると再び気絶するのであった。

 

「モモンガさん……俺ってプレゼントのセンスないのかな……」

「アーカードさんが凄いショックを受けていらっしゃる……!!?」




アーカード「反省もしているし後悔もしている……善意が害になるなんて……」

モモンガ「やばいアーカードさんがガチ凹みしてる……」

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