オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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神父、暴走間際

「な、なんだソリュシャン何があった!?」

「ア、アーカード様申し訳ございません!!どうかアンデルセン様を御止めください!!」

「どうかお気を確かに、どうかどうか落ち着いてくださいアンデルセン様!!!?」

 

ツアレの事も無事にセバスが報告を行い、ナザリックにて働く事が決定した。そして彼女をセバス付きの仮メイドとして経験を積ませることを決定してナザリックで一件落着だと落ち着きをもって、<人化の指輪>にて紅茶を楽しんでいるときの事だった。ソリュシャンから緊急の連絡がアーカードへと舞い込んできた。すぐさまモモンガに<転移門>を開いて貰って現地へと急行するのだがそこでは柄にも合わずに慌てふためいているソリュシャンと必死にアンデルセンに羽交い締めを仕掛けて動きを封じているセバスの姿があった。

 

「許さん……許さんぞぉ……ごみの分際でぇ、カスの分際でぇ……至高の御方々が住まうナザリックに所属するメイドの命を狙っただとぉお!!!??許せるかぁぁあああ!!!」

 

怒髪天を衝く。正しく今の状態を表す言葉だろう。アンデルセンは通常は優しい神父様だ、ナザリック内ではだれに対しても優しく接し望むであれば共に至高の御方への祈りを捧げる事も拒否しないどころか喜んで一緒に祈ってくれる。怪我をすれば子供の心配をするかのように優しく回復を掛けてくれる、正しく神父の鏡のような人物。だがそれはあくまでナザリック内部に対してのみの話。それに敵対、反発する者に対しては容赦の欠片も掛けない。それは既にナザリックのメイドとして働く事となったツアレにも適応される。アーカードは正しく激昂しているアンデルセンに軽く恐怖を覚えながらも至高の御方たらんとする態度を崩さずに懐から銃を抜き、上へと向けてトリガーを引く。

 

「「ッ!!」」

 

拳銃にしては重く低い音が館に響き渡る、それに反応してセバスはアンデルセンから離れ構えを取る。アンデルセンも瞬時にその手に銃剣(バヨネット)を持ち十字架の構えを取る。だがその元がアーカードだと理解できると直ぐに構えを解く。

 

「セバス、ご苦労だったな。よくぞ私が来るまでアンデルセンを抑えていてくれた。寧ろよく抑えられたな」

「お褒め頂き感謝の極みに御座います。たっち・みー様にそのように創造された身であるからこそ出来たのでございます」

 

先程までの様子から一転して完璧な執事の礼をするセバス。アインズ・ウール・ゴウン最強の騎士であるたっちさんに創造されているセバス、そんな彼もナザリックのNPCの中でも指折りの強さを持つ。レベルは当然100、そして守護者序列3位【肉弾戦最強】であり純粋な格闘戦では最も優れている。そんなセバスだからこそアンデルセンを抑える事が出来たのだろう。彼以外で単独でアンデルセンを抑えられるNPCなど数えるほどしかいない。

 

「アンデルセン、説明を。何故お前はセバスに羽交い締めにされていた。何故激昂していたのかを明確且つ正確に説明しろ」

「ハッ……まずはお恥ずかしい所をお見せしてしまい申し訳ございませぬ……」

「よい、お前はナザリックの為に怒った。その怒りは正しい物、しかしセバスには謝罪しておけ」

「はいっ……済まなかったセバス。神父である私があのような姿を……恥ずかしい限りだ」

「お気になさらないでくださいませアンデルセン様。元を正せば私が安易な行動をとった上、貴方のお怒りは私としては嬉しい物がございます」

 

話を聞くとどうやらアンデルセンをとがめる理由はなかった。彼はセバスとソリュシャンが王都からの撤収準備の間、ツアレにこれからメイドとして働く上での注意事項や覚えておくべき事を指導していたらしい。ここはナザリックの者には優しいという事が出ている。そんな中、館に侵入者が現れた。それはツアレを誘拐するためにやってきた、邪魔をするならば貴様から殺すぞと言い出した。そしてそれらは禁句を言った。

 

「てめぇのくそみたいな主にいいな、その女を返してほしければ俺達八本指に懇願しろってな!!」

「……ア"ア"ッッ……!!?」

 

アンデルセンの逆鱗、至高の御方への侮辱。それに触れた者らは物の見事にアンデルセンに瞬殺された。そこへ挨拶回りと小麦の購入などを終えたセバスとソリュシャンが戻ってきた。静かに激昂するアンデルセンに慌てふためきながら説明するツアレ、そしてそれを聞いたセバスは今にも飛び出していきそうなアンデルセンを必死に抑えつけ、ソリュシャンは大慌てでアーカードへと<伝言>を飛ばした。という事だった。

 

「成程な……。アンデルセン、ツアレを助けようとしたのは素晴らしい。彼女は人間だが既に我らと同じ場所を居とする者、彼女もまたお前達と同じく私と友の庇護下の存在」

「仰る通りに御座います」

「しかし……その八本指か、少々不快だな」

 

それを聞いた途端にアンデルセン、セバス、ソリュシャンの瞳に鋭い光が灯るがそれを止めながらアーカードは言う。

 

「そうだな……ふむっ以前デミウルゴスがモモンとヴァンの武勇を立てる為に魔皇を作るという提案をしていたな。それを乗じさせるというのはありだな、よしこれで行こう。アンデルセン、セバス、ソリュシャンはこのまま待機、別命あるまで勝手な行動はするな」

「「「はっ!!」」」

「私は一度ナザリックに戻りモモンガさんに報告を済ませる、何時間はかからんさ。アンデルセン」

「はっ」

 

顔を上げるアンデルセンにアーカードは言った。

 

「我らに仇なす愚か者に対する行動は、分かっているな」

「然り」

 

ゆらりと悪霊のごとく立ち上がるとアンデルセンは高らかに語りだす。

 

「至高の御方に仕える者、その者としてすべき事を全て成し、主たる神、至高の御方が望む者を全て遂行する……それが我らが使命」

「素晴らしい、流石はアンデルセンだ」

 

今、始祖の吸血鬼に仕える最強の神父が、解き放たれようとしている。




神父、出撃準備開始。

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