オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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計画進行

「我に求めよ。さらば汝に諸々の国を嗣業として与え地の果てを汝の物して与えん。汝、黒鉄の杖をもて彼らを打ち破り、陶工の器物のごとくに打ち砕かんと」

 

夥しい数の死体とそれから流れ落ちていく鮮血。後ろに立つセバスは背後から不意打ちをしようとした愚か者を回し蹴りにてあの世へと送り出した、それをアンデルセンが唱える聖書にある言葉が魂を浄化し、無へと返しながら次なる生へと旅路を迎える。

 

「されば汝ら諸々の王よさとかれ、地の審判人よ教えを受けよ。恐れをもて主につかえ、慄きをもて喜べ。子に接吻せよ。恐らくは彼は怒りを放ち汝ら途に滅びん」

 

怒り狂っているとはいえ彼は神父、その役目は果たす。今世の行いが愚であるならばそれを即座に切り捨て新たな生へと送り出してやるのも自らの役目だと彼は考えている。至高の御方が一人、アーカードによって創造された神父、その役目は敵対する者であろうとも次の人生は我らに平伏し利を成させる為でもあると考えている。よってアンデルセンが例え愚かな者であってもその魂を浄化し送り出す、そうあれかしと創造されたからだ。

 

「その怒りは速やかに燃ゆベければ。全て彼により頼む者は幸いなり……貴様らの今世には意味はない、だが次はある事だろう。それを願い今を悔やみそのまま死んでゆけぇ……AMEN!!!

 

ゴロリとアンデルセンの手によって首を刎ねられた死体が転がった。筋骨隆々の男、身体の各部に入れ墨のような物を入れているがそれだとしてもアンデルセンに敵う訳もない。単純な戦闘力であればアンデルセンはシャルティアとタイマンを張る事が出来る。倒す事が出来なくても長時間戦い続けてスキルを使い切らせたうえで大きく疲労を与える事は容易にできる、それが最強神父:アレクサンド・アンデルセンなのである。

 

「アンデルセン様、ここの拠点の物資は全て確保完了致しました」

「宜しい。では我々の役目は終わった、ナザリックへと帰還する。セバス、お前の気も少しは晴れた、そうじゃないか?」

 

先程とは一転して穏やかな表情になったアンデルセン、そう問われたセバスは少しだけ晴れたと素直に白状した。彼はツアレを攫いに来たという者達に対して嫌悪感と怒りを抱いた。そしてそれを命令した連中に少しでもやり返したいという思いを僅かながら抱いていた。だがアンデルセンが相手を殺している時点で十分に晴れていたのだが……改めてこうして行動出来てスッキリした部分もあった。それを聞いてアンデルセンは穏やかな笑みを浮かべてそれは良かったという。

 

「では帰ろう。お前はツアレにナザリックで覚えておくことの大切な事を教えておいた方が良いだろうな。俺の方である程度は教えてやったが、仕事の方は分からんからな」

「有難う御座います。ではさっそく指導をしておきます」

 

そんな話をしながら準備が整ったので、転移魔法が封じ込められたスクロールでその場から転移する二人。そしてそれからそこへセバスが出会った少年クライム、ブレインが命令を受けて八本指の拠点へと足を踏み入れるのだが……死屍累々の光景を目にして言葉を失うのだが、それは別の話。

 

 

「むっ……」

「如何したヴァン」

 

エ・ランテルにてレイブン候からの依頼を受諾した漆黒の英雄ら、彼らは魔術師が展開した<浮遊板|(フローティング・ボード)>に乗せられてそれを<飛行(フライ)>の魔法で引っ張る魔術師の背中を見ながら見えてきた王都の景色を見ているときの事、ヴァンが声を上げた。

 

『……デミウルゴスが見えた。戦闘中だな』

『えっマジですか何処?』

『ほらっあそこ……って流石に無理か、俺の視力だから見えたからな』

 

始祖の吸血鬼が優れているのは身体能力だけではない、それらを構成している全てのパーツが優れている。腕力、脚力は当然ながら瞳も優れている。それが捉えたのは仮面を装着したデミウルゴスが炎の壁、恐らく<獄炎の壁(ヘルファイヤーウォール)>を発動し冒険者と思われる二人を焼き殺している。その後、迫ってきた相手をスキル<悪魔の諸相:豪魔の巨腕>で殴り飛ばしている。

 

『俺ちょっとデミウルゴスに会ってきますよ。今魔皇ムーブ中でしょうし、名を売るのにも利用出来るでしょ』

『分かりました、んじゃ俺の方から今からアーカードさん行くよって伝えときますね』

『頼むわ』

 

「セラ、途中下車だ。ついて来い」

「はいっ!」

 

そういうとヴァンは立ち上がった。冷たい風が全身を撫でるように通り過ぎていく、そんな中で指を出してその風を感じる。

 

「風力、温度、湿度、一気に確認…ではやるか……<弾丸飛行(バレット・フライ)>!」

 

セラがヴァンの背中にしがみついたのを確認すると彼はゆっくりと浮遊板から身体を投げ出した。まるで物を静かに投げたかのような自然体で板から身体を投げ出した、そして彼は一気に加速してデミウルゴスの元へと閃光のような速度で飛行していく。それを魔術師が唖然とした表情で見つめる中、モモンが言葉を上げる。

 

「彼が保有するアイテム、その中にあのような速度を出せるものがある。一日に数回しか使えないがな」

 

そういうと魔術師は顔を見合わせて取り合えず残った漆黒の英雄戦士であるモモンと美姫ナーベを一刻も早く連れて行くために飛行に集中した。

 

弾丸の如き速度で空を引き裂いていくヴァン、その目的地はただ一つ。魔皇としてふるまうデミウルゴスの元。そして地上が近づいてくるとセラは自分から手を放して少し離れたところに着地する、そして自らは轟音と共にデミウルゴスの元へと着地する。ゆっくりと身体を持ち上げて声を上げる。

 

「私の相手はどちらだ……?」

 

漆黒の双璧が一人、漆黒の英雄紳士・ヴァン・ヘルシング。彼が齎すのは希望か絶望か、はたまた別の物か……。


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