オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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所謂番外編です。


閑話:給与の行方

「やっぱり働きには確りとした対価があるべきだと思うんですよ。あれだけ働いてくれてるのに無給無休(ダブル)なんてあんまりだと思うので導入するべきだと思うんですよ」

「確かになぁ……そこら辺はブラックで働いてたモモンガさんらしい意見だな」

 

円卓の間。ナザリックの至高の御方である二人が会議する決まった定位置。そこで行っている話はナザリックの意識改革について、そしてNPC達の働きに対する正当な報酬について。

 

「みんな至高の御方に仕える以外の喜びはないって言いますけどやっぱり働きには相応の物があるべきですよ。なんかブラック企業の長みたいな感じがして気分も良くないですし」

「言いたい事は理解出来る。それについては俺も賛成しておくが……仮に給料を支給したとしてこの世界で満足出来るものが手に入るのかっていう問題も出てくるぞ」

「そうなんですよねぇ……」

 

仮に守護者たちに給金として自分達が冒険者として稼いだ金を与えるとしてもそれらを彼らが使うのかも怪しい。この世界で彼らを満たすだけのものがあるのか、そして異形種の集まりでもアインズ・ウール・ゴウンでは街に出ての買い物も難しい物ばかり。特に蟲王であるコキュートスなどは買い物などは確実に出来ない、自分達のように<人化の指輪>などの人間に化けるアイテムなどを使用する事も考えたが、そこまでの数もないので難しい。

 

「かと言っていきなり休みを導入しても向こうは戸惑うだろうし、その前段階として給料は導入したいんだよなぁ……」

「う~む……なんとも言えんなぁ……給料を出すにもそれを使う先がない、それを活用する為の休みも物がないから作れない……手詰まりになってきてるなぁ」

「「如何したものか……」」

 

そんな風に思わず頭を抱えてしまった二人。盲目的且つ狂信的に尽くしてくるNPC達は二人にとっては異常に映ってしまう、それを少しずつ改変していくための土壌づくりも中々に難しい。そんな時に二人に名案が浮かび上がってくるのであった。

 

「あっそうだ!!アーカードさんこんなのってどうですかね!!?」

「―――ふむふむ、いやそれ中々いいアイデアだな。それならこれをこうして……」

「あ~成程……多分行けますね!!」

 

 

「さて階層守護者達よ、今回集まって貰ったのは日頃からの献身と活躍に感謝する。この世界についての調査に地盤固めなども順調に進んでいる。故に皆にある事を提案するつもりだ」

「これは私とモモンガが以前から考えていたことだ、お前達にはとある物を与える事を私たちは考えている」

「とある、ものですか?」

 

集められた階層守護者達へと言葉を綴る二人、守護者達は二人から向けられる言葉に喜びを感じそれを胸に刻みつつ二人が自分達に与える物について思案が出る。それは少なからずシャルティアが世界級アイテムを入手したことで得た褒美に対して憧れを抱いているから。創造者である至高の御方(ペロロンチーノ)の持ち物に加えて至高の御方(アーカード)お手製の物を送られているからこそ生まれる気持ち、そんな中で二人からの言葉に期待するなという方が難しいという物だろう。

 

「ああ、アルベドやセバスには以前話したかもしれんが、お前たちに給金を与える計画を立てている。それについて意見を出した事も忘れている訳ではない。だがお前たちは慣れない世界で非常によくやってくれている、故に私とアーカードさんなりにお前たちの褒美として用意したのがポイント制の給与だ」

「ポイント制……?」

 

モモンガとアーカードが考え付いたのは現金ではなくポイントによる給与であった。これならばナザリック内でも使うことが可能である上にこれらを利用する為に休日を使うという事も適応できる為、効率的だと二人は考え付いた。そして休日を使わせるためにポイントで引き換える物というのは……

 

「引き換えについてはまだまだ検討中だがそうだな……一例をあげるとするならば、以前アーカードさんがシャルティアに送ったような物やギルドメンバーが残してくれた持ち物との引き換えや私たちと何かをする権利と言った事を考えている」

 

その時、守護者達に電流が奔る。シャルティアが受け取った<1/1スケール・ペロロンチーノ人形>や自分達の生み親だけではなく他の至高の御方の持ち物への引き換えというのは非常に魅惑的な提案であった。そしてモモンガとアーカードと何かをする権利……それに酷く鼻息を荒くしているアルベドとシャルティアに二人は軽く汗をかく。

 

「モ、モモンガ様そのような褒美を我らのような者を与えるなど……!!」

「先も言ったが私はお前たちの働きぶりに非常に満足している、それに報いる褒美を与えるシステムを作るのだ。それにな―――ギルドメンバーたちも使われないよりも使われた方が嬉しいと思うだろう。それが自分の子供や仲間の子供であれば猶更だ」

 

その言葉を受けて、守護者達は歓喜に震えていた。自分達にそのような優しさを向けてくれる二人に、その場は一旦閉幕して締めくくったが二人は予想以上の食いつくに確かな手応えを感じていた。意識改革に向けて良いスタートダッシュが出来そうだと安心するのであった。


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