オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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舞台裏

王都の一部を轟々と燃え盛っている光のような炎、魔皇たる悪魔であるヤルダバオトが起こした炎、ゲヘナの炎。炎自体は幻影に近い類の者であり触れて火傷もしないし何も感じない。陽炎が見せる幻、その先へと足を踏み入れる王都を守らんとする冒険者たち。その中にはイビルアイの仲間であり最高峰の冒険者であるアダマンタイトの称号を持つ蒼の薔薇のメンバーであるラキュース、ティナの姿もある。リーダーであるラキュースは少しだけ不安そうな視線を向けていたが直ぐに笑みを零した。

 

「本当に大丈夫そうね、ガガーランにティア!」

「寧ろキレがいい」

 

目の前で低位の悪魔を撃破する仲間、ガガーランとティア。二人はヤルダバオトの攻撃によって死亡したがラキュースの蘇生魔法によって蘇生を果たした。本来は生命力の消費によって戦線復帰は難しいはずなのだが……蘇生される前よりも格段にいい動きを見せている。

 

「おうよっ!!ヴァンがくれたポーションが相当利いてるみたいだぜ、身体がこんなに軽い上に力が漲ってるなんて久々だ!!暴れたくてしょうがねぇ!!!」

 

片手で巨大な刺突戦鎚(ウォーピック)を振り回しているガガーランの姿なんて今まで何度も見た来た筈なのに今日の彼女の戦槌のキレは何時も以上に良い。悪魔にそれが直撃すると全身に衝撃が伝わった直後に爆散するかのように消滅している。隣のティアも素早い動きで悪魔の背後を奪うと首に刃を突き立てる、そして直後のその刃が悪魔の胸から生えているという矛盾したような事をやってのけている。本人も調子が良い事が分かるのか頬が緩んでいる。

 

「……凄い動ける、いいっ……」

「こりゃヴァンには相当いい礼をしなきゃいけねぇな!!よしっ寝るか!!」

「童貞食いのガガーランが珍しい……でも娘いる相手」

「俺は一向にかまわねぇ!!」

 

本人が聞いていたらどう思う事を平然と話すチームメイトに軽く頭痛を覚えるラキュースだが、蘇生魔法による生命力の消失は問題なさそうで本当に安心した。ヴァンから手渡された生命力補填のポーションには感謝しなければならない、彼は既にヤルダバオトの元に到達しているだろうか。同じく漆黒の英雄と呼ばれるモモンと共に激闘が始まっているのかもしれない。それを補助する為に同行したイビルアイに応援を送りながら、自らの武器(魔剣キリネイラム)を握る手に力を込めて迫ってくる悪魔の群れへと刃を向ける。

 

「<超技:暗黒刃超弩級衝撃波(ダークブレードメガインパクト)>!!」

 

魔力を流し込んだ夜空の星を思わせる漆黒の刀身は魔力によって膨れ上がる、それを渾身の力で振るいながら一気に振り抜く。暗黒の刃の一閃、同時に斬られた悪魔は爆発を受けながら消滅していく。ハイセンスな名前だけあってかなりの威力を発揮し悪魔を一掃していく。そんな中、一際巨大な爆発音と共に煙が空へと昇っていく。その方向はモモンとヴァンが居る筈の方向……ヤルダバオトとの戦闘の激しさがうかがえる。

 

「勝利を……祈ります!」

 

 

 

一際巨大な爆発がした辺りの民家、既に人の気配など皆無。悪魔によって人々は攫われた上に家族はバラバラにされている、既に住む者もいなくなった中で一つの空き家へとモモンとヴァンは入っていく。そこの一室、一般的な民家にしてはそれなりの装飾などがされている部屋の中に仮面をテーブルの上に置きながら礼儀正しく座っているスーツを纏った悪魔、デミウルゴス、そしてマーレの姿があった。

 

「この部屋は安全なのだな」

「大丈夫でございます。入念に準備を重ねた対策を行っておりますので此処での会話を盗み聞ける者などおりません」

「そうか、では計画の全てを話して貰うぞ」

「まず、モモンガ様とアーカード様。御二人に直接御話ししたいという我儘を聞いてくださり感謝申し上げます。今作戦<ゲヘナ>には4つほど利点がございます」

 

『4つ!?アーカードさん俺一つも分からないんですけど!!?』

『おいギルド長、せめて八本指への襲撃を誤魔化す位は分かれ。後それは言うなよ、カリスマブレイクが起きる』

 

「ほう、3つだと思っていたが」

 

それを言うとデミウルゴスは心の底から嬉しそうな声を上げながらモモンガに知恵比べに勝てたと喜ぶ。実際は全戦全勝なのだが……こちらがお前の方が凄いよと持ち上げても何を言うのかご謙遜を、と返させて無に帰する。悪魔だが、デミウルゴスの忠誠心が高さはナザリックでもトップクラスだろう。

 

まず<ゲヘナの炎>が覆っているのは王都の倉庫区、そこにある全ての財を頂戴する事。これによりモモンガとヴァンが先導して行っている冒険者による収入だけに頼る心配がなくなり、金策の不安が解消される。次にアーカードの言う通り、八本指への襲撃を誤魔化す為。

 

「そう言えばアイテムの回収が目的、だと私と戦った時に言っていたな」

「はい、こちらをご覧ください。アーカード様は特にお目にした事があるかと御座いますが」

 

そう言ってマーレに目配せをしてとあるアイテムを出させる。それには黄金で作られた悪魔像、禍々しくも見事な輝きからか神々しさすら感じるそれは色が違う宝玉を握りしめている。色違いの宝玉という所から何処か<スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン>を連想させる。

 

「それはウルベルトさんが作ったアイテムだな」

「その通りで御座います。ウルベルト様が御作りになられたアイテム、その中には第十位階魔法<最終戦争・悪(アーマゲドン・イビル)>、そしてアーカード様が御持ちになられる世界級アイテムの効果を模した物が付与されています」

 

『……えっそれって相当やばくないですか』

『これ一つでこの世界だったら世界滅亡の危機だな間違いなく』

『わ、笑えない……でもそれをここで使うのはちょっともったいないな……』

 

そう思ったのか、モモンガはアイテムボックス内からもう一つの悪魔像を取り出した。それは黄金のものと比べると何処かボロボロな印象を受ける上に未完成のような出来栄え。それもそれの筈、それはウルベルトが捨てる筈だった失敗作。本来は捨てる筈だったのだが、貧乏性持ちのモモンガが捨てるならば欲しいと言ったので譲り受けたもの。

 

「デミウルゴス、こちらを使うといい。これもウルベルトさんが作った物だ、試作品だが用途は足りるだろう」

「しかしモモンガ様のお手持ちのものを使うなど!!」

「そうか、ならばこれはデミウルゴスにやろう。ウルベルトさんもお前が持つのならば喜ぶだろう、それにこれは彼にとっては失敗作だ。ならばそれなりに有効活用するのもお前の役目だ」

「なんという……!!」

 

身体と声を震わせながらデミウルゴスはその悪魔像を受け取る、その際には感涙の涙を流しながらの言葉に思わずモモンガが言葉に詰まってしまったりもした。そして三つ目、それは炎の内側にいた人間たちを捕らえその多くを既にナザリックへと移送し様々な用途に使用する準備を整えているとのこと。4つ目、これらの悪行をヤルダバオトに受けて貰う事。そして自分たちがそのヤルダバオトを倒せば一気に名声が上がるという事。

 

「流石はデミウルゴスだ、見事な策だ。さて後は……私とモモンがヤルダバオトと戦うだけだな」

「はいっその通りで御座います。御二人のお相手が務まるようこのデミウルゴス、精一杯務めさせていただきます!!」

 

 

『モモンガさん、これはデミウルゴスに褒美とかも考えた方が良いかもしれませんね』

『ですねぇ。後で考えるの手伝ってください』

『勿論』


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