オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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閑話:ルプスレギナ、至福の時

「さて……ポイントの使い道ねぇ……」

 

アーカードの自室。吸血鬼らしく薄暗い部屋の中、紙に向かって筆先を向けるが如何にも思い当たらずそれを置く。冒険者として働いている以外は基本的にロールプレイ中に等しい彼だが、自室やモモンガと二人きりにおいては素でいる。本人としてはロールプレイも自分の素も同じという認識で作られた自分を演じるのに苦痛も何もないらしいが素でいると気分が楽である事に変わりはない。言うなれば私服と余所行きの服装の差程度には感じているとのこと。

 

「案外思いつかないもんだなぁ……まあNPC達向けだからな、俺が思いつかないのも無理はないか」

 

ひたすらに思考しているのは導入すると決定されたポイント制の使い道。NPC達には大見栄を切って検討中と言ったは良いがその内容が全くと言っていいほどに煮詰まらない。自分達とNPCでは考え方に違いが出てきているので難しいのも当然かもしれないが。まず自分達に仕える事こそ至高の喜びと捉えている、そして自分達の言葉一つ一つにも一喜一憂する感覚、これが使い道を難しくする。

 

「意見を聞くのが一番なんだが……下手にプライドを持たん方が良いな。認めるべきは認めるのが成功の道だし」

 

とあっさりと自分だけで考えるのを捨て去ったアーカード、なんだかんだで柔軟な思考をしている彼。だからこそシナリオブレイクをされたのにそれをアドリブで修正する事も出来たりするのだが。そんな思考を持った時に扉がノックされる。入ってよいという許可を出す、入ってきたのはプレアデスの一人であるルプスレギナ・ベータであった。

 

「失礼いたします。アーカード様、本日の御付きを仰せ付かりましたルプスレギナ・ベータ、ただいま参りました。全身全霊をもって役目を全うさせていただきます」

「ご苦労」

 

赤毛に健康的に焼けた小麦色の肌という魅力的なメイドであるルプスレギナ、そんな彼女が傍につきつつも紙に視線を向けるがこれはちょうどいいのではないかと思う。モモンガと自分だけでは女性向けの物もハッキリ言って思いつかない。此処に茶釜さんややまいこさんが居ればと切実に思った、では試しに彼女に聞いてみようとしよう。

 

「ルプスレギナ」

「はいアーカード様」

「……まずその口調をやめろ、お前はもっと砕けた口調なはずだろう?」

「し、しかし至高の御方に対してそのような無礼は……!!」

「だがそれはお前の創造者がそう望んだ口調の筈だ」

 

獣王メコン川、それが彼女を作ったギルドメンバー。その彼が望み創造したのはルプスレギナ、接しやすい女性と礼節を持った美しさの女性の良さを重ね持つのを望んだのも彼だ。自然体としては接しやすいというのが望まれている、自分もそんな方が相手をするのは楽である。そう告げるとルプスレギナは困惑したような表情をしながらも無礼ではないかと質問するが、自分は気にしない事を伝えると漸く砕けた口調になった。

 

「それでルプスレギナ、お前に幾つか聞きたい事がある。お前は給与としてポイント制を導入することを聞いているか?」

「はいっす。一応お伺いしてるっすけど本当にいいんすか?」

「私たちが良いと言っているんだからいいんだ。それでその使い道を今検討しているんだが如何にもいい案が出なくてな……お前ならどんなものを貰ったら、されたら嬉しいのかを答えてくれ」

「私なら何されても嬉しいと思いますけど」

 

それだと本気で困る。何をされても嬉しいというのは逆にこっちに丸投げしているのと同義、何にしたら困っているのになんでもいいと言われても如何したらいいのか困るのだ。何でもいいだと逆に困ると伝えると必死に考え始まるルプスレギナ。その仕草がかわいらしく思える。

 

「う~ん……頭を撫でて貰う、とかすっかね?」

「それはポイントの使い道としてどうかと思うが……働いた対価にそれが見合っているのか?」

「私は思うっす!!あとアーカード様は以前にナーちゃんじゃなくてナーベラルのほっぺに手を当てたって聞いたっすからそれもいいと思うっす!!」

 

と元気よく力強く答える彼女にNPCからするとそういう物なのかと、少々考え込む。

 

「ではルプスレギナ、こちらに来い」

「はいっす!」

「ではっ……」

 

近くに寄ってきたルプスレギナ、それを確認しながらアーカードはおもむろに彼女の頭を撫で始める。一瞬何をされているのか分からなそうにしていたが直後に顔を真っ赤にさせながら、慌て始める。

 

「アアアアアアアアーカード様ぁぁっ!!?ななな何をっ!?」

「頭を撫でてやっている」

「い、いやそういう事じゃなくて……」

「嫌か」

「そうじゃないっす寧ろご褒美っす!!!」

「では良いんだな」

「うううっ……(で、でも快感……凄いテクニシャンっす……)」

 

アーカードとしては可愛らしい親友の子供の頭を撫でてやっている程度の認識しかない、それに加えて本当に喜んでくれるのか程度の気持ちはあるが他意はない。しかし彼女からすれば頭を撫でられるという事は無上の喜びに等しい行為、一回撫でられるごとに身体に電流が奔るような思いを感じている。そして頭から手が離れた時は思わず、小さくあっ……という声を漏らしてしまう。

 

「私にとってお前たちは愛すべきナザリックの者達だ。そんなお前達の頭を撫でるのはある意味当然であり、当たり前の事だ。望めば幾らでも撫でてやる」

「ほ、ほんとっすか……!?じゃ、じゃあもっと撫でて欲しいっす……」

「フッ可愛い奴め、良いだろう」

 

そう言ってルプスレギナの頭を撫でるのを再開するアーカード、この時ルプスレギナは顔を伏せていたがその表情は恍惚な笑みで染まっていた。この後、アーカードは頭を撫でられていたルプスレギナが本当に嬉しそうだったので一緒に何かをする権利というのを盛り込んだり、かつてのギルドメンバーのPVPの記録映像の閲覧許可など様々な考えを出してそれをモモンガとの協議に出すのであった。

 

因みにルプスレギナはというと……

 

「今日のアーカード様のお仕えでいっぱい頭を撫でて貰ったっす!!超気持ちよかったっす……身体中ゾクゾクしてやばかったす!!」

『っ!!?』

 

この事をプレアデス月例報告会及びお茶会にて存分に自慢し、他のプレアデスから凄まじく羨ましがられたりするのだが本人はあまり気にせずに望めば撫でてくれるという事を伝えるのであった。そして、自分がアーカードの御付きになると決まって頭を撫でて欲しいと強請り、喜んで撫でてくれるアーカードの手の感触を味わうのであった。




プレアデスの中だとルプーが結構好きです。

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