オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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守護者と領域守護者

「久しいなコキュートス、デミウルゴス。こうして会えた事に感謝しよう」

「勿体無キオ言葉ニ御座イマスアーカード様……!!」

「我らこそ至高の御方のお一人で在らせられるアーカード様のご帰還を心よりお喜び申し上げます……!!」

 

アーカードの前に膝をつき言葉を漏らす階層守護者。2.5メートルはあるだろう巨体の偉丈夫の蟲王(ヴァーミンロード)、コキュートス。一見はスーツを纏った人間のようだが飛び出している異形の尾とその余りにも落ち着きが様になりすぎている悪魔のデミウルゴス。かの二人もアーカードが戻って来た事に対して多大なる喜びを露わにしている。そして此処に第四階層と第八階層を除く階層守護者が揃った事になる。

 

「では皆、至高の御方々に忠誠の儀を」

 

合図に守護者たちが一斉に頷き、瞬時に隊列を整える。守護者統括が前に、他の守護者は二、三歩下がった位置に横一列に並ぶ。そしてそれらを見つめるモモンガとアーカード。そして彼らは全く同時に膝をつきながら自らの忠誠心を現わすかのように臣下の礼を取る。

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に」

「第五階層守護者、コキュートス。御身ノ前ニ」

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」

「お、同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。御身の前に」

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

「守護者統括、アルベド。御身の前に。第四階層ガルガンチュア及び、第八階層守護者ヴィクティムを除き各階層守護者。御身の前に平伏し奉る……ご命令を。至高なる御方々よ。我らの忠義全てを御身に捧げます」

 

誰かの喉が鳴る、少なくともモモンガの物ではない。骸骨である彼に鳴らす喉などない。あるのはゾクゾクと体を突き抜けるかのような不思議な高揚感と緊張感だった。部下を持った経験こそあるがそれはあくまで簡単な上下の関係であり、深くはない。深い忠義による感触を味わう二人には分からない、だがそれを裏切る事などできないという事は互いの共通の認識であった。モモンガは緊張のあまり絶望のオーラを纏ってしまい、アーカードは平静を装うつつも<伝言(メッセージ)>でモモンガに落ち着いてくれと声をかけるが、帰ってくるのは震えたモモンガの声だった。

 

「面を上げよ、此度の招集をよくぞ受けてくれた守護者達よ、それに感謝しよう」

「感謝など必要御座いません。我らは至高の御方々からに忠義のみながらこの身の全てらを捧げし者たち。至極当然の事でございます」

「うむっ。ではセバス、私が命じた事に対する報告を」

「はっ」

 

良いタイミングでやってきたセバスに報告をするように言うと更なる異常が明らかになってきた。元々ナザリック地下大墳墓が存在していた沼地が草原に変わってしまっている事や、知的生命体が確認出来なかった事などの報告が上がってくる。それらを聞いてモモンガとアーカードは冗談抜きで洒落にならないことになっていることを実感しながら話を進めていく。

 

「だが喜ばしい事もある。我が盟友であるアーカードさんがこのナザリックに帰還された事だ」

 

その言葉に皆態度は変えていない、しかし身体が歓喜に震えているのが見て取れる。

 

「アーカードさん」

「ああっ分かっているさ我が友よ。皆、懐かしい顔ぶればかりだ。本当に懐かしくも嬉しい顔ぶれだ。私はここに戻ってこれた事を心から喜ばしく思っている」

 

アーカードはそのまま自分が何故ナザリックを離れていたのかを説明しだした。モモンガから大丈夫なんですか?という心配が飛んでくるがそこはロールプレイガチ勢のアドリブ力を活用していく。真実と虚構を織り交ぜた事を話し出した。余りにも重すぎる病を患ってしまい、それらが皆に感染するのを防止するために一人で病魔と闘い続け漸く完治に至った事を語る。モモンガは確かにそれならボロは出ないだろうと感心していると、守護者達からは涙と怒りが滲みだす。

 

涙は至高の御方々よりも遥かに矮小な自分達を気遣ってくれた余りにも慈悲深いアーカードの行動に、怒りはそんな慈悲深いアーカードに巣くった病魔への怒りだった。その様なものを孕みつつもアーカードはもう自分は何処にも行かず此処に居続ける、皆と共に在り続ける事を宣言する。それで更に涙を流す者が激増するのだが、それらを何とか鎮静する事に成功する。そして次々と捧げられていく自分達への言葉に二人は居た堪れなくなり皆の忠義とこれからの活躍を願うと労って二人揃って転移するのであった。

 

「はぁっ……疲れた、というかなに、えっなにあの忠誠心!?」

「あれもう忠誠心じゃねぇよ。もう信仰か狂信に近いぞ」

「「……あいつら、マジだ……」」

 

心配していたNPC達が自分達を恨んでいるという心配はしなくていいのだろうが、これはこれで不安になってくる。特に守護者各位が自分達に向けてきた評価などが更に胃を圧迫するような気がしてきた。

 

「端倪すべからざるって……なんですかアーカードさん」

「噛み砕くと計り知れないって意味。俺だって何よ、たった一人で敵勢を絶望と失意の底へと葬り去る最強の吸血鬼って……」

「いや大体合ってるじゃないですか、主に不死身的な意味で」

「あ"っ?てめぇの自走式黒歴史連れてくるぞ」

「マジ勘弁してください」

 

と互いを軽く詰った所で思わずため息が漏れた。本当にこれから如何していくべきなのか協議している必要が出てきた、やるべき事は山のようにある。周辺の調査に警戒網の構築、戦力の分配やら本当にやることがある。そんな中でモモンガあることが気になっていた。

 

「そういえばアーカードさんのNPC来てませんでしたね」

「ああ~……各階層守護者を呼んだからじゃないか。一応領域守護者だから」

「実質的に第四階層の階層守護者ですけどね」

 

アーカードが生み出したNPCが配置についているのは第四階層、地底湖に配置されている。その地底湖の領域守護者という役職を持っているのだが……その第四階層の守護者はNPCではなくユグドラシルに存在する戦略級攻城ゴーレム。本拠地を守るという目的には使用出来ず、置き場所にも困るので地底湖に沈めているから階層守護者という建前が与えられている。なので実質的に階層守護者は第四階層の一部領域を守る、領域守護者を請け負っているアーカードのNPCという事になっている。

 

「それにしても……本当にNPC達は俺達の事を想ってくれてるんですね……俺も会いに行った方が良いかな……生み出した者としての責務もあるでしょうし」

「あんだけ黒歴史だって連呼して今更父親面っすかモモンガさん」

「……だってあれはそう思うでしょ!!?」

 

と必死な声で叫ぶモモンガにアーカードも納得出来る部分も多くある。確かに彼のNPCは相当にあれだ、意志と命を持っている現状であれにあったらモモンガは如何なってしまうのだろうか……。

 

「……よし、んじゃ俺も会ってきますよ」

「付き合いましょうか?」

「いえ、一人で行ってきます」

 

そう言ってアーカードの姿はモモンガの目の前から消え失せ、ナザリック地下大墳墓の第四階層の地底湖へと姿を移した。まるで宝石のように輝く湖が反射する光は伸びている光を放つ鉱石、天然のライトアップともいえる。そんな場所で一人の影が地底湖を見回るかのように歩き回っている。血のように紅いベスト、それに合わせられたようなショートパンツ。程よく長めのブロンドの髪と白い肌、そして鮮血のような魅惑的な瞳。右腕と違って左腕は赤い影が腕の形を取っているかのように見える。それを見て即座に確信する。あれは自分が作ったNPCだと。

 

「あれっこの階層に誰か来た?」

 

本来この階層に誰かが来る事なんてほぼない、あったとしたらガルガンチュアを起動させる為だけ。では誰が来たのかと影はこの階層に転移したアーカードの方を見た、そして限界まで目を見開きゆっくりと、一歩一歩確かめるかのように覚束無い足取りで迫っていく。そして目の前まで来た時にそっと、アーカードは手を伸ばし手触りの良い髪越しに頭を撫でてやる。

 

「セラス……セラス・ヴィクトリア」

「マス、ター……マスター……マスタァァ……」

 

セラス、彼女は撫でられて行く毎に涙腺が決壊していく。溢れ出したダムの水のように涙を流す、そんな彼女をアーカードはそっと抱きしめてやる。

 

「ただいま、セラス」

「お帰り、なさいマスター……」


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