オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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アーカードの銃

「んじゃモモンガさん、行くけど大丈夫?」

「……ええっ大丈夫です、その為に態々一時間も時間を貰った訳ですから……」

 

世界が変貌してから三日が経過しようとしていた。人間である自分らが全く違う存在へと変化したことに違和感などは覚えなくなっている、まず精神などが大きく変動しようとした時には自動的に抑制のようなものがかかり精神が平坦に戻る。アンデッドというカテゴリーの影響か疲労や睡眠欲や食欲なども完全に消え失せている。性欲などについてはモモンガ曰くなくも無いらしい、アーカードは彼にセラスや玉藻に何か感じないのかと問われたが

 

「感じなくもないが、ンなもんに駆られて娘を襲ったら変態を超越した何かだよ」

 

そう言われて納得してしまった。自分達にとってNPCというのはかつてのギルドメンバー達が作った存在、それらは言うなれば親友たちの子供たちと置き換える事が出来る。そんな彼らに手を出す事なんて正直気が進まないし、罪悪感が付き纏う。自分達は保護者として彼らを守る責務がある、それに従事するべきではないかと思うのであった。そしてそんな彼らを守る為の力を再度手にする為にアーカードは宝物庫へと向かおうとしていた。

 

「んで伝える言葉はそれでいいんだな?」

「……はい、俺なりに息子への言葉を認めたつもりです」

「了解したよ。だがその内自分で会いに行けよ、戦力的な事を含めても現状あいつはナザリックの最大戦力の一人なんだ」

「……分かってます」

「ならよし」

 

力なく座っているモモンガを他所にアーカードは指輪を使い転移を行う。直後に広がる景色が一変しそこにあるのは絢爛豪華という言葉では収まりきらない程の凄まじいほどの財。全盛期のギルドの凄まじさを象徴するかのような量の財、これらを管理するのがモモンガが創造したNPC。財の中を歩きながら、ついついその中にある自分がギルドにもたらしたものに目移りしながらも奥へと進むと闇のような扉が待ち受ける。この先にこそ目的がある。

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ」

 

扉といっても開く戸も存在しない、あるのは何かを覆う闇だけ。ギルドへの言葉を捧げると闇の中に浮かび上がる言葉がある、それはここを開けるための条件。アーカードは悩むこともなく言葉を続ける。

 

「かくて汝、全世界の栄光を我が物とし、暗き物は全て汝より離れ去る、だろう――だったかな、相変わらずあの人はカッコいいギミックを作る」

 

蓋となっていた闇が消え去り、その先の通路が顔を見せる。このギルドのギミック考案担当でもあったタブラ。男性陣からはかなり好評だったがそれでも凝りに凝っていたのでデータ量を食い潰していた。責任を取って自分で課金してデータ量を増やしていたのもいい思い出だ。闇の先の通路にはギルドの皆で獲得した武器が飾られている。どれも本来は手に持ち強大な力を発揮する物ばかりだが、それぞれが持っている武器の方が強いという理由で記念で飾られているに近い物ばかり。そして通路を超えた先の霊廟と呼ばれる場に、目的のNPCが存在している。だがそこにいたのはNPCではなかった。

 

「お前は……」

 

そこにいたのは自分の玉藻の設定協力をしてくれた友人でもありギミック考案担当でもあり、アルベドの生みの親である至高の四十一人が一人、火力で言えばモモンガを上回る魔法詠唱者(マジックキャスター)たるタブラ・スマラグディナ。まさか彼もここに来ているのかとわずかながら思うのだったが、低い笑いを漏らしながらそのタブラを見ながら言う。

 

「成程、矢張りあいつが此処に最後に訪れていたか。なぁ―――禁断の役者(パンドラズ・アクター)よ」

 

ぐにゃり、歪むのような音を立てながらタブラの姿が変貌していく。そこに立つのは自らと同じく異形であった、塗り潰した黒い点のような目と口だけがある顔、纏っている軍服と制帽にはアインズ・ウール・ゴウンの紋章がある。彼はアーカードの来訪を歓迎しながらオーバーアクション交じりに挨拶をする。

 

「ようこそおいで下さいました、至高の四十一人がお一人であり最強の吸血鬼たるァァアーカード様ッッ!!御尊顔、再び拝見出来る喜び、恐悦至極に御座います!!」

「フフフフッお前も相変わらずのようだなパンドラ、ここに最後に来たのは矢張りタブラだったか」

「はいっご明察の通りで御座います。タブラ・スマラグディナ様は世界級(ワールド)アイテムである真なる無(ギンヌンガガプ)をお持ち出しになっております」

 

それを聞き確かに彼ならばあれをアルベドに持たせるだろうと確信する。なんだかんだで彼も娘を愛しているという事か。

 

「私の銃を出して貰いたい」

「おおっァアァァカード様の銃!!至高の御方々が持つ中でも最強と呼ばれるあの二丁が遂に貴方様のお手元にお戻りなる時が来たのですね!!承知致しました、即座にご用意いたします!!」

 

ワザとらしいオーバーリアクション、酷く仰々しいがこれらも全部モモンガが全てカッコいいと思って設定した事だ。故に自走式黒歴史なのである、まあ軍服は今もカッコいいと思っているだろうが。因みにアーカードは素でパンドラズ・アクターの事はカッコいいし好きなNPCであるので何も思ってない。こんなふざけた感じを出しているがこのパンドラの強みはギルドメンバーの姿をコピーし80%の力を発揮できるという所にある。ハッキリ言ってまともに張り合えば厄介すぎる上にパンドラは凄まじく頭が回る、正に禁断の役者に相応しい力を持つ。モモンガには黒歴史扱いされて半ば封印に近い処置をされているが……。

 

「お待たせ致しましたアーカード様、こちらが霊廟にて厳重に保管されていたアーカード様の武器で御座います」

「……懐かしいな」

 

柔らかなクッションが敷き詰められた宝箱の中には酷く懐かしい物が入っている。白金の拳銃と黒鉄の拳銃。どちらも拳銃というカテゴリーというには大きい物だがこれがアーカード専用の銃なのである。

 

「454カスールカスタムオートマチック、アーカード様と長きに渡り敵を屠り続けてきた銃」

 

<Ain's Wool Goun Arm 454 Casull>。銃身のスライドに刻まれている言葉を見つめながらそれを手に取る、懐かしい重さを感じる。それを感じつつももう一丁の拳銃にも手を伸ばす、こちらは最初こそカスール一丁のみであったがアインズ・ウール・ゴウンの名前が大きく広まり始めた際にカスールだけではと感じ始めた頃、ギルドメンバーが案を出し合いつつも制作した専用銃。どちらも思い出深い銃だ。

 

「パンドラ、お前はこの銃(ジャッカル)の詳細を知っているか」

「勿論に御座います。私の役目は宝物庫の管理、収められている全てを記憶しております」

「そうか……ではこの銃について述べてみろ」

「はっ!!」

 

ワザとらしく咳払いをするとパンドラは高らかに語りだしていく、それはアーカードの栄光を讃える歌のようだ。

 

「対異形種戦闘用13mm拳銃<ジャッカル> 454カスール改造弾使用ではなく初の専用弾使用銃です。全長39cm、重量10kg、装弾数6発。人類では扱いきれない名実ともにアーカード様の専用銃です」

「専用弾は?」

「13mm炸裂徹鋼弾」

「弾殻は?」

「純魔導銀製マケドニウム加工弾殻」

「装薬は?」

「マーベルス化学薬筒NNA9」

「弾頭は、炸薬式か?水銀式か?」

「法儀式済み魔導水銀弾頭でございます」

「パーフェクトだ、パンドラズ・アクター」

「おおっ感謝の極み……!!!」

 

ずっしりと重い銃、それを持ち上げつつも構える。吸血鬼の自分にとっては軽い物、マガジンをセットする。その音にも満足しつつそれを懐に収める。やはりこれがしっくり来る。そして銃身にはJesus Christ is in Heaven now(神は天に在り、世は全て事も無し)と彫られている。

 

「パンドラズ・アクター。お前の創造主から言葉を預かっている」

「おおっ我が創造主たるモモンガ様よりお言葉をっ!!!?」

「ああっ―――近々会いに行く、会う時を楽しみにしている。とな」

 

その言葉を聞いてパンドラズ・アクターは今までにないレベルの荒ぶりを見せる。彼にとってはモモンガは矢張り特別すぎる存在なのだろう。そんな彼を見つめながら改めて銃の重みを楽しむアーカードであった。




アーカードの旦那といえばこの銃、そしてリロードは気分。

そして一部変えてます、まあ折角魔法とかもある世界ですしね。

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