オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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息抜きと星空と誤発注

「戻ったぞモモンガ……どちら様?」

 

自らの武器を回収する事が出来たアーカードは打ち合わせ通りにモモンガの元へとやってきたのだが、そこにいたのは戦闘メイド・プレアデスが一人、ナーベラル・ガンマ。そして居たのは巨大な剣を保持している黒い全身鎧を纏っている騎士だった。

 

「私だ我が友よ」

「君か、今度は何の戯れかね?」

 

モモンガはナーベラルがいるからかアインズ・ウール・ゴウンのギルド長としての口調で話す、その為にアーカードもそれに合わせる。ロールプレイガチ勢にとってはこの程度朝飯前である、全盛期はモモンガとアーカード、そしてデミウルゴスの創造主であるウルベルト・アレイン・オードルと共に悪のロールプレイを存分に楽しんでいたものだ。

 

「武器防具の実験だ、どこまでが今までと同じで違うのかを検証する必要があるだろう」

「それで態々<上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>で鎧と剣を作ったという訳か」

「まあっそんな所だ」

 

『アーカードさん、これから息抜きに外出しませんか?』

『構わないが俺は如何すればいいんだ?』

『ロリカードでいいじゃないですか、あれは基本ナザリックの外か内密にしかやってませんでしたからバレませんよ』

『ええっ~……』

 

 

「ナーベラル、私とアーカードさんは少し出てくる」

「近衛兵の準備は終わっております」

「いや、私だけで充分だ。何、心配するな。私の力は知っているだろう?」

「い、いえしかし……しょ、承知致しました……」

 

ナザリックのNPC達にとっての喜びとは自分達に仕える事、そして至高の御方々の為の剣となり盾となる事。彼女らは自分達が死ねと命じれば迷うこともなくそれを実行してしまうだろう。用事はないから今日はもう下がって休んでいいと言えば、自分は失礼を働いたのかと涙を流しながら許しを懇願する。それ故にモモンガとアーカードは窮屈さを感じていた。

 

ナーベラルも例外ではない、しかしアーカードは先手を打って近衛兵などの供は必要ないと言う。富裕層との接待で身に着けた女性を喜ばせるテクニック、ナーベラルの頬にそっと手を置きながら優しい声色と笑みを使いながらそう問いかける。彼女の頬が赤く染まるのを見ながらも了承の言葉を聞いたのを確認しながらモモンガと共に転移していく。残されたナーベラルはアーカードに触れられた頬を触れながら顔を真っ赤にしながらオーバーヒートしていた。

 

「ふぅっ……偶には息抜きは必要だからな」

「というかアーカードさん、さっきの何ですか?アーカードさんって女誑しでしたっけ?」

「人聞きが悪い事を言ってんじゃねぇよ。富裕層の婆どもを喜ばせる為に嫌々覚えたテクだよ」

「ああっ例の……」

 

最初こそアーカードの所作に驚いたモモンガだったが話を聞いてアーカードに同情した。太った婆にそんな事をしなければいけなかった彼の精神が心配になった。二人が転移したのはナザリック地下大墳墓の第一階層の地表部中央霊廟、指輪の力ではここが一番地上に近い。そんな話をしつつもモモンガは転移の間に変化していたアーカードの姿に驚く。真っ白なロングコートに帽子、上下も白に統一されているコーディネートを纏っている幼い少女にしか見えないアーカード、通称ロリカードである。

 

「本当に少女ですよね……」

「……俺だってこの姿好きじゃないんだぞ、この姿でどんだけ茶釜さんとやまいこさん、あとペロロンチーノがどんだけやばい目で俺を見てたことか……」

 

『大丈夫大丈夫!!私のセンスは絶妙だから!!』

『そうそう、ぼ―――私に任せてください!!』

『アーカードさん、お願いですからお兄ちゃんって言ってください』

『黙れよド変態』

『ちょっと待ってなんで見た目はマジでパネェ美少女なのに声同じなんすかぁぁああ!!!!???』

 

ギルドメンバーに玩具にされかけてたっち・みーさんとウルベルトさんに全力で助けを求めたりもした。この件に関しては仲が良くない二人も協力して助けてくれたりもしてくれた。そんな嫌な思い出があるロリガードで間もなく外に到達しようとしたときに目の前に悍ましく恐ろしいモンスターが複数現れた。

 

「嫉妬、憤怒、強欲の三魔将……!?」

「確かこいつらは赤熱神殿にいる筈だろ」

 

デミウルゴス配下である筈の三魔将、自分達ですら圧力を感じる風貌と強さを重ね持っているモンスターの登場に思わずアーカードは懐にある拳銃に手を伸ばすとその三魔将の隙間からデミウルゴスが顔をのぞかせる。二人の名前を呼ぶ声に思わずデミウルゴスは怪訝そうな表情を作るが、即座に跪く。続くように三魔将も忠義を示す。

 

「これはモモンガ様、アーカード様。近衛をお連れにならずにここにいらっしゃるとは……」

『えっ一発でバレましたよ!!?』

『おいロリガード状態ならバレないって言ったのアンタだぞ』

『俺のせいですか!?』

 

その後、デミウルゴスに見破れた二人はデミウルゴスを近衛として連れてそのまま外に出る事にした。まあ一人だけなら周囲に多くの近衛が居るのに比べたら大いにマシだ。そしてナザリックの外へと出た時に広がっていたのは満天の星空だった、生まれてから一度も見たこともない本物の星空に感動を覚える。

 

「凄いっ……これが本当の星空……」

「大気の汚染も何もない。人工心肺もマスクも必要ない澄んだ空気……凄い」

 

二人のいた現実世界は正に世紀末といっても過言ではない程の悲惨な世界だった。空はスモッグにより分厚い雲に覆われ星なんて見る事は出来ない、汚染によって人工心肺とマスクがなければ外に出る事も適わない。だが、今いるこの世界にそんなものは必要ないのだ。二人は本当の星空を見て感動に胸を振るわせていた。我慢出来なくなったのか、モモンガはあるアイテムを取り出し装備し唱える。

 

「<飛行(フライ)>」

 

重力の楔から解放されたモモンガはそのまま天高くへ中空へと舞っていく。アーカードもほぼ同時に背中から鮮血のような赤で染めたような影を翼の形にして重力を引き裂くかのように飛び上がる、デミウルゴスもそれに続くかのように追従していくが二人はそれを置いていくかのように舞っていく。もっと、もっと高く飛びたい、そんな欲求のままに雲を突き抜けていくと雲海を超える。そして広がっているのは月と星の青白い光で満たされる美しい世界だった。

 

「……ブルー・プラネットさんが自然に嵌る理由が分かったなモモンガさん」

「ええっあの人が作った第六層の空も美しかったけど、これはまた……」

「「見せたいなぁ……」」

 

他のギルドメンバーにも是非とも見てほしい、汚染されていないこの美しい世界を。世界はこんな顔を持っているのだと知ってほしい、体験してほしい。そんな気持ちで胸がいっぱいになっていくのを感じる。

 

「美しいな……まるで宝石箱のようだ」

「星々の輝きと月の明かり、それらが奏でる歌のようでもあるな」

 

思わずそんな言葉が飛び出す中でデミウルゴスが追い付き、それに対して返答する。

 

「この世界が美しいのは至高の御方々の身を飾る為の宝石を宿しているからかと」

「そうかもしれないな……私たちがこの世界に来たのは誰も手中に収めた事の無いこの宝石箱を手にする為なのかもしれないな」

「違うさアーカードさん。私たちだけではなくナザリック、いやアインズ・ウール・ゴウンを飾る為かもしれない」

「お望みとあれば、ナザリック全軍をもってこの宝石箱を捧げてごらんに入れます」

 

深々と頭を下げるデミウルゴスがそういう中で思わず笑ってしまった。何もかもが分からない段階でそんな事を言うとは、だがそこには確かなやってのけるという意志と自分達に捧げたいという思いが感じられる。

 

「この世界がどんなものなのか不明な段階でか、愚かにも聞こえるが……いやそうだな」

「世界征服か……心が躍る言葉だな。ウルベルトさんなら喜んでやるだろうな」

「ああそうだな……だけど確かに、世界征服なんて面白いかもな」

 

子供の児戯のような言葉、二人もそんなつもりで言った。知恵者のデミウルゴスもきっとそんな事は分かっているだろう。まずは情報収集と検証を繰り返していくのが一番なのだから、と思っている二人。この時、振り向いてデミウルゴスの表情を見ていれば、何れするであろう驚愕なんてしなかっただろう。


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