オーバーロード~死の支配者と始祖の吸血鬼~   作:魔女っ子アルト姫

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異世界、恩人

「友よ、調子は如何かね?」

「アーカードさんか、ふむっ中々に難しいな」

 

ナザリック地下大墳墓が異世界だと思われる土地に転移してからという物、現状の調査と確認などに時間を費やすながら過ごしているモモンガとアーカード。そんな中でアーカードは鏡の前でパントマイムをしているような、奇妙な事をやっている友人に声をかける。その背後ではアルベドがとても慈愛の溢れる目をしながらどこか興奮しているかのような息遣いをしながらモモンガの作業を見つめていた。

 

「この手の動きで右移動……こっちで回転……それでこれが拡大っと……」

「しかしこれが役に立つとはな……世界も変われば常識も変わる、というやつか」

「その通りだろうな」

 

モモンガが使用しているのは<遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)>というアイテム。離れた場所の映像を映しだすだけのマジックアイテムという物で偵察に便利そうだが、ユグドラシル(ゲーム)では対策の取られやすい物の一つ。アイテムとしては微妙としか言えないものだが、周囲に危険があるかもしれない今の状況ではこのアイテムが輝く。自らを危険に晒さずに情報を引き出せるのだから使い勝手のいい物へとなっている。このアイテムで警戒網の構築もより効率的になっている。

 

が問題も存在している。ユグドラシルの時と違って、操作方法が表示されないので、身振り手振りの手探りでこの鏡の操作法を一から調べなければならないということだった。ゲームの説明書を読まないものよりもきつい物がある。

 

「そうだ友よ、これを宝物庫から出しておいたぞ」

 

そういうとアーカードは指で何を弾いてモモンガの元へと放り出す、それはモモンガの元へと到達する。それは<人化の指輪>というマジックアイテムであった。異業種であるキャラクターが人間へと一時的に化ける事が出来る指輪で、人間しか入れないエリアなどに入る為に使われる。逆に人間が異業種に化ける<異形化の指輪>というのも存在する。

 

「この指輪って……」

「この先、人間と接触するかもしれないからな。その姿では警戒されるだけだろうからな」

「確かにこれは助かるな、感謝するよ」

「私と君の仲だ、気にするな」

 

『実はなモモンガさん、こいつを付けたら凄い事出来るぞ』

『えっ凄い事って何ですか?』

『アンデッドは種族的な関係で睡眠欲や食欲がない、だがこの指輪があればそれらを再現できる。食事も出来るぞ』

『えっマジですか!!?』

 

<伝言>で飛んできた内容はモモンガにとって途轍もなく重要なものだった。死の支配者になってから疲労や睡眠、食欲すら感じなくなってきた彼だが人間で感じられていたそして出来ていた食事などが出来なくなっていて寂しさを覚えていた。それがこの指輪さえあれば解決するというのだから重要な物だった。

 

『私も先程それを使ってセラスと楽しい食事を楽しんできたところだよ。ナザリックの食事の美味さは凄まじかったぞ、マジでおすすめ』

『うぉぉぉっ……それはマジで朗報じゃないっすか……!!ありがとうございます、後で試してみますね!!あれでも玉藻は良いんですか?』

『あいつは第四階層の巡回の時間だった。それにあいつからは野獣の視線を感じるからなんかな……』

『もう愛が重い設定が来ちゃってるじゃないですか……』

 

モモンガは今すぐこの指輪を装備して食事をしてみたいという欲求に駆られながらもこのナザリックを守る為の行動を優先し、指輪を大事そうに懐にしまうのであった。そんな中漸く上手く動かせたのに安心しつつも、ある場面が映り込んだ。まだ遠いが村の中で多くの人々が走り回っているような光景にも見える。

 

「祭りか……?」

「いえこれは、違うようです」

 

後ろでそれを見ていたアルベドが応える、拡大をしてみるとそこに映っていたのは……鎧を纏っている騎士のような格好をした者たちが村人を追い立て殺している。芋虫のように這いずることしかできなくなった青年を、騎士らが嬲っていた。既に青年は死んでいる筈なのに、執拗に何度も力を込めて、嬲り続けている。それを形容するならば……虐殺という言葉が相応しい光景だった。

 

「……アーカードさん、俺今人間が殺されているのに何も思いません。虫が踏み潰されているのを見るのと同じぐらいの感覚しか抱いてません」

「俺もだよ……アンデッドになってる影響か……」

 

正直に二人は人間が殺されている事に何も抱いていない、同族であったはずの存在が殺されているのに何も抱かない。どれだけ凄惨な殺され方をしていたとしても、アンデッドになっている影響かもしれない。そんな中で少女二人が騎士に追いやられている光景が映り込んだ、助けるべきなのか、いや利益がないと素直に思ってしまえる自分が少し恐ろしかったが……今酷く不快だった。それは―――戦う力がない者たちが嬲られる光景が嘗てPK(プレイヤーキラー)に成す術もなく狩られていた自分達のように見えた。

 

「モモンガさん、ここにあの人が居たらこういうだろうな」

「『誰かが困っていたら、それは助けるのは当たり前』ですね、俺もアーカードさんもあの人に救われた」

「ああっ……たっちさんなら、確実にそういうだろうな」

 

自分達が今のギルドに所属するきっかけとなった人物は同じだった。聖なる純銀の鎧に身を包み、手にした剣であらゆる敵と困難を両断する正義の人。ユグドラシル全プレイヤー3位以内に入る最強プレイヤーとして名高かったたっち・みー。颯爽と現れては自分達を殺そうとしてきたプレイヤーを一撃で倒し、正義降臨というフォント共に力強く言った言葉があの言葉だった。因みに文字は課金らしく、一文字50円だか10円だかと聞いた。

 

「では行くとするか、友よ」

「ああっ。アルベドよ、ナザリックの警戒レベルを最大限引き上げろ。そして完全武装にて私とアーカードさんに続け。そして後詰として隠密能力に長けるか、透明化の特殊能力を持つ者を複数村へ送り込め。それと真なる無はおいていけ」

「いや友よ、念のために持って行かせた方がよいだろう。何が起こるが分からない以上は所持していた方が確実だ」

「確かにな、この世界に世界級アイテムがないとも限らない……アルベド、真なる無の所持は許可する。早急に武装を整えろ」

「承知致しました、では即座に準備を」

 

そういって消えていくアルベドを見送るとモモンガは覚悟を決めながら立ち上がった。ナザリックの利益にならないかもしれない、だがあの時に自分らを助けてくれたあの人の気持ちに報いるならこれが正解なのだろう。

 

「モモンガさん、これは無駄ではない。彼女らを助けたならば友好的な関係を築ける、それならこの世界に関する有益な情報を多く引き出せるかもしれん」

「……そうですね、やるなら前向きに行きましょう。それじゃあ行きますよアーカードさん」

「ああっ頼むよ」

「<転移門(ゲート)>」

 

距離無限、失敗確率0%の確実な空間転移魔法で二人の少女を助ける為に、死の支配者と始祖の吸血鬼がナザリックより出陣した。


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