玩具の宝石
Monologue/
あなたは、この世で最も硬い宝石の壊し方を知っていますか?
それは、叩くことではありません。高い所から落とすことでもありません。足で踏みつけたりすることでも、ナイフで斬りつけることでもありません。
そんなことではその宝石はビクともしません。むしろ傷つけようとすればするほど、宝石は硬度を増して自分を守ろうとするでしょう。
転んで足をすりむいて、泣きたいのに強がって泣かない子供みたいに。壊そうとすれば壊さないで、と。傷つけようとすれば傷つけないで、と。
本当は砕いてほしいと願っているのに、力を使って砕こうとすればするほど、宝石はその硬度を上げてしまうのです。
中にあるものに触れたい。みんなそう願うのに、美しすぎて、硬すぎて、宝石は誰にも触れられないように、本当の自分を殻に隠してしまうんです。
じゃあ、どうすればいいのかって?
知りたいのなら、○が教えてあげます。
でも、その前にこの話を聞いてくれませんか?
少し長いかもしれないけれど、ここにすべての答えが在りますから。
これは、何もできない○が創造した、数十万文字の言葉の羅列。
大切な
◯は、旅立つあなたのためにこの文を紡ぎました。あなたが旅の途中で退屈しないように重ねたプロットの完成形。それが、この拙い小説です。
だから、どうか読んでみてください。飽きてしまったらいつでも本を閉じてもかまいません。
この物語は絶対に傷つかないダイヤモンドのように、永遠にここに在り続けます。
「これは、あなたに贈る
壊れない宝石を諦めずに砕こうとする少年と、素直になれない生徒会長の、一途な恋の物語。
Monologue/end
◇
The story begins/
まただ。また僕はあの夢を視ている。
「──────」
六畳ほどの広さの部屋。生地の厚いカーテンが閉め切られているため、昼であるはずなのに光は差していない。床とカーテンの隙間から入る淡い日光が、暗い室内にかろうじて明かりを灯している。
恐らく、季節は夏だった。ジメジメとした不快な感覚が狭い部屋の中に漂い続けている。空間に手を伸ばせば、握れないはずの空気が手に掴めそうなくらいに重苦しい。
耳を澄ませば蝉時雨と微かな潮騒が聞こえてくる。それで、この部屋が海の近くにあることだけはわかった。
そして、部屋の隅に置かれた二十六インチほどのテレビが常に点きっ放しになっている。今は昼間のワイドショーが画面には映し出されており、よくわからない政治家が僕たちには関係ないことをつらつらとカメラに向かって語っている。時おり出演者の誰かが笑い声を上げて、それを聞いて何がそんなに面白いのか、と苛立った。
そんな場所に、僕はいた。
いや、正確に言うと僕と一人の
どれくらいの間、そうしているのかはわからない。でもそこにある状況を見る限り、一日や二日ではないことは容易に想像することができた。
僕らはその部屋の隅で、恐怖に震えながら小さな手を握り合い、身を寄せている。
お互いの手には、プラスチックで出来た小さな宝石が握られている。よく子供が玩具として与えられるような、透明なダイヤモンドを模した塊。
片手では女の子の手を握り、もう片方の手でそのプラスチックの宝石を握り締めている。
なぜ、そんなものを持っているのかはわからない。答えを導き出すきっかけすら掴めなかった。
『──────それでは、次のニュースです』
しばらくして、テレビがニュース番組を映し出す。僕らは何も言わずに画面に目を向けた。
そこに映る男性キャスターが手に持った原稿に目を落とし、その内容を読み上げ始める。
『■日前から静岡県沼津市に住む少年と少女の行方がわからなくなっている事件について、静岡県警は誘拐事件であることを発表し、本日も二人の捜索にあたっています』
淡々と読まれる文章。それを聞いて、隣に座る少女は僕の手を強く握り締めた。
小さい手は絶えず震えている。怖いのだろう。当たり前だ。小学校低学年くらいの少年少女がこんな所に閉じ込められて、恐怖を覚えない訳がない。
僕はその手を握り、反対の手で玩具の宝石を握り締めながらテレビに目を向けた。
『行方不明になっている八歳の男の子の名前は、
男性ニュースキャスターはそこまで言って、手に持った原稿を前の机の上に置いた。
そして、何の未練もないように次のニュースを読み上げ始める。水族館に新しいアザラシが生まれたとか、本当にどうでもいい話題だった。
少なくとも、ここにいる僕らにとってはまったく関係のない内容だった。
今のニュースで事件として取り上げられていた、二人の少年少女にとっては。
「………………」
「………………っ」
隣で、少女が泣き出す。
嗚咽混じりに帰りたいです、と悲痛な泣き声を暗い六畳間に響かせていた。
幼い自分はその子をあやすように、綺麗な黒い髪を撫でてあげた。
何故、自分とその少女がこんな状況に置かれているのかもわからないまま夢は流れていく。
この夢に何の意味があるのかも、どうしてこんな夢を見るのかも僕には理解できない。
それもそのはずだ。
僕には、この記憶が無いのだから。
僕は時々、この映像を夢で見る。
それは色んなパターンで夢の中に現れる。これはそのシーンのひとつ。
あまりにもリアルで、残酷すぎる光景。思わず目を逸らしたくなるような幻。
そもそも、これに意味があるのかすらわからない。何ひとつ身に覚えも無いのだから、そう思ってしまうのも仕方ないことなんだと思う。
けれど、僕が現実で見たことがあるものが、この夢の中にひとつだけあった。
「─────っ」
部屋の外から、誰かの足音が聞こえてくる。
その瞬間、僕と女の子の身体は電気を当てられたかのようにビクリ、と反応した。
そして震えが大きくなる。今度は少女だけではなく、僕も同じように怯えていた。
ガタガタと揺れる身体。恐怖を共有するように身を寄せ合う僕とその女の子。
互いの手とプラスチックの宝石を、痛みを感じるほどの力で握り締めている。
テレビの音声が遠く聞こえる。耳に入ってくるのは、数人の男の声。
足音が近づいてくる。それは間違いなく、この部屋に向かってくるのを感覚として理解した。
「だ、誰かきますわ」
隣にいる少女が泣きながらそう言う。
カチカチと歯と歯が当たる音がする。それはその女の子ではなく、僕が鳴らしているものだった。
これから何が起きるのか。それを、この夢の中にいる二人は知っている。だからこそ、ここまで恐怖を感じているのだろう。
扉の外から男たちの笑い声が聞こえてくる。それはこんな湿気た部屋によく似合う、下衆な笑い声の重なりだった。
さらに足音が近づいてくる。隣にいる少女がパニックになるように高い泣き声を上げた。
そうなってしまえばあの屑たちの思うつぼだ、とそこにいる僕は気づいていた。あいつらは僕たちが焦り、泣き喚く姿を見て楽しむ生き物。
そもそも、奴らは人間じゃない。
そこにいる僕は、そう思っていた。
「大丈夫」
近寄ってくる恐怖に耐えながら、そこにいる僕は隣にいる少女の手を握る。
左手には、玩具の宝石。それが砕けてしまいそうになるくらい、強く握り締めていた。
扉の前で男たちの声が止まる。すぐそばに僕たちをさらった奴らがいる。
それがわかっているのに、怖がらない子供がどこにいる。殺されるかもしれない状況にいるのに、泣かない子供がこの世界のどこにいる。
それでも、僕は泣かなかった。
泣いてしまえば隣にいるこの子がもっと泣いてしまう。もっと、怖がってしまう。
夢の僕は、その子を守ろうとしていた。誰かも知らないのに、彼女の名前すらわからないのに。
自分たちを誘拐した大人から女の子を守ろうと、涙を流さずに必死になっていたんだ。
ちっぽけな手では何も守れないのはわかっている。それでも、その子だけは傷つけない、と僕は心の中で叫び続けていた。
「ゆう、ひくん…………」
「■■■…………」
少女が僕の名前を呼び、僕も少女の名前を呼んだ。
暗闇の中で僕らは見つめ合った。それぞれの存在がそこにあることを教え合うように。
ドアの鍵が開く音が、部屋の中に響く。
怖くないことを伝えるために、僕はその女の子に向かって笑ってみせる。
「大丈夫。大丈夫だよ─────」
そして、扉は開かれた。
◇
「─────ユウくん」
「………………っ」
誰かに身体を揺さぶられている。瞼に明るい光が当てられて、僕は徐に目を開いた。
視線の先にはいつもとは違う色の天井があった。木々が組み合わされて出来た天井。
息を吸って感じるのは、お線香のようなやさしい香りと畳のあの独特な匂い。
僕はこのい草の香りが好きだった。暑い日には少しだけむわっとして、雨が降る日には重くなる。わかりやすく表現すると、夏休みに訪れるときに嗅ぐおばあちゃんの家の匂い。
夏休みでもないのにどうしてこの香りがあるのか、寝ぼけた思考で思い出してみる。
でも、頭が思い出す前に、隣に座っている存在が答えを教えてくれた。
「やっと起きたずら。おはよう、ユウくん」
「…………あれ?」
僕の顔を覗きこんでくる茶髪の女の子。垂れ目に小さな体躯。そして、あの特徴的な口癖。
どうしてこの子が僕の部屋にいるんだろう、と思い出そうとしたとき、自分がここにいる意味を思い出した。
「えへへ。ユウくん、寝ぼけてる?」
「あ、あぁ。ごめん、寝過ごしたかな」
寝ぼけた頭で言葉を探し、布団に寝転がったまま、枕元に正座しているその子に言う。
すると彼女は首を横に振り、綿のようにやわらかい笑顔を僕にくれた。
「ううん。今日が楽しみすぎて早く起こしちゃったずら」
「今日……?」
そう言われて何があったかを思い出す。今度はちゃんと自分で思い出せた。
そうだ。今日は高校の入学式。だからこんなに朝早くから張り切って僕を起こしにきたのか。
……まぁ、僕にとっては新しい学年が始まる日なんだけど、思い出すと猛烈に不安になってしまうのであまり考えないようにしよう。
僕が寝ていたのは縁側の傍にある和室。外からは可愛い鳥の囀りが入り込んでくる。
まだ荷物がまとめきれてなくて殺風景な空間。これからの一年間、ここが僕の部屋になると言われたのが昨日の夕方の出来事。
春の朝。温かな空気が流れている和室の中。
そこに僕と僕の従妹である飴色の女の子はいた。
「今日からユウくんとおんなじ学校に通うって考えたら、いてもたってもいられなくなったずら」
へへへ、と嬉しそうに笑う飴色の従妹。その言葉を証明するかのように、彼女の服装が真新しい制服だったことに気づく。
身を起こした後、大きなあくびをして寝ぼけていた意識を覚醒させた。
春眠暁を覚えず、っていう諺は本当にあるものらしい。いつもは早起きの僕も、今日に限ってはゆっくりとした朝だった。
春は好きだ。けど、今年の春だけはちょっといつもとは違って心から好きにはなれない。なぜかは今日、これから学校に行けばわかると思う。
目尻に浮かんだ涙を寝間着の袖で拭い、隣に正座する女の子に向かって口を開いた。
「おはよう、花丸」
「ずら。おはよう、ユウくん」
寝起きの僕に暖かい微笑みをくれる花丸。ふわふわした雲みたいな彼女の雰囲気を感じていると、穏やかな気持ちで話ができる。
早朝に発生する霧が晴れていくように、段々と意識がハッキリとしてきた。そうなるにつれて、今日がどれだけ大事な日だったかを思い出す。
さっきまで見ていた夢の内容をいつの間にか忘れている。何かを見ていたということだけは覚えているのに、具体的に何を見ていたのかは覚えていない。まぁ、そもそも夢なんてそんなものだろう。
「起こしてくれてありがとね。久しぶりにここで眠ったから、気持ちよくて寝過ごしちゃうところだった」
「うん。ユウくん、よく寝てたずら」
「そっか。あと、その制服すごく似合ってるよ」
布団の上にあぐらをかき、ほのぼのと花丸と会話をする。まだ急ぐような時間でもない。少しくらいゆっくりしたって誰も文句は言わない。
僕がそう言うと、花丸は身に纏っている高校の制服に目線を下げ、それから嬉しそうにくしゃっと顔を綻ばせる。
「ふふ、ありがとう」
「今日から花丸が後輩になるんだ。なんか変な感じするね」
「そうだね。マルはうれしいよ?」
「うん、僕もうれしい」
花丸に笑顔を返す。しかし、良いことばかりではないのがこの世界の不条理。
「そういえばユウくんも新しい制服なんだよね?」
「…………そうだったね」
あまり思い出したくないことを言われ、小さなため息を吐きながら件の新しい制服が掛けられた部屋の壁に目を向ける。
まだ皺がひとつもない真新しい藍色のブレザー。デザインは今どきの制服にしては凝っていて、たしかに素敵だとは思う。
問題はそれを着なくてはいけない理由にある。僕は花丸とは違って今日から高校生になるわけじゃない。今日から高校三年生になる十七歳。
なのになぜ、あの新しい制服を着て学校に行かなくてはいけないのか。
「ユウくんもすごく似合いそうずら」
「そうかな。そうだったらいいけど」
「でも、大変だね。今日から新しい学校になっちゃうなんて」
「ああ、それはあんまり言わないでくれると助かる。ちょっと憂鬱になるから」
花丸に鋭い言葉をグサリと言われ、僕は寝癖のついたままの頭を両手で抱えた。
つまりはそういうこと。僕は今日から新しい高校に通わなくてはいけないのだ。思い出すとさらに沈みそうなので今は考えないことにする。
障子の向こう側から鶯の音痴な鳴き声が聞こえてくる。まだ綺麗に鳴く練習中なのかな、と馬鹿みたいなことを頭を抱えたまま思っていた。
ここは、花丸の実家のお寺。そこにある一室を昨日から貸してもらっている。僕の家はここではない。実家はこの田舎街から少し離れた所にある。
通う学校が変わり、遠くから登校するのが大変になるということで、春からこのお寺に住まわせてもらうことになったのは僕としても都合がよかった。
けど、そもそも学校が変わることになった原因が酷すぎて、その幸運も今では薄れてしまっている。思い出したらまた深いため息が出た。
二つ違いの従妹の花丸と同じ高校に通えるのは来世になると思っていたのに、まさかこの人生で経験することになるとは一ミリも思いもしなかった。
気分がジェットコースター並みに高速で下降している僕を眺めながら、花丸は笑う。
「大丈夫ずら。何かあったらおらも力になるから」
「こら、おらって言わないの」
「あ……えへへ、ごめん」
「花丸は今日から女子高生なんだから、言葉遣いも気をつけなさい」
「ユウくんは厳しいずら」
「心配だから言ってるの」
自分のことを変な一人称で呼ぶ花丸の額にやさしくデコピンをする。
この子の口癖は昔から変わらない。訛っているのは別にいいけれど、こんなに可愛らしい女の子が自分を"おら"なんて呼んじゃいけないだろう。初めて聞いた人は間違いなく驚くに違いない。
両手でおでこを押さえる花丸だが、反省してる感じはない。おそらくこの子はまた自分のことを"おら"って呼ぶ。賭けてもいい。小さい頃から何十回言い聞かせてもダメだったから、どうせ今回も聞く耳なんて持ってない。
そんな飴色の従妹を横目に、両手を合わせて背伸びをする。それから布団から立ち上がり、畳の上に正座をしてる花丸の頭をそっと撫でた。
「じゃあ、学校に行く準備をしようか。気は乗らないけど」
「ずらっ。ならマルはお母さんと一緒に朝ご飯の準備をしてるね」
「うん。よろしくね」
「ユウくんと一緒に学校に行くの、楽しみずら~」
そう言って、花丸も立ち上がる。僕も平均的な身長より少し低いけど、この子はもっと小さい。
昔から部屋の中で本を読んでばかりだった飴色の従妹。そんな花丸が高校生になるだなんて、なんだか不思議な感じがした。ついでに同じ高校に通うことになるとは微塵も思ってなかった。
「すぐに着替えていくから待ってて」
「うん。あ、そうだユウくん」
「ん? どうしたの?」
部屋を出て行こうとした花丸が襖に手を当てたまま、こちらを振り返ってくる。
表情は、少しだけ硬い。いつもは柔らかい彼女の雰囲気が、きゅっとひとつに固まっている。
どうしてそんな顔をして僕を見つめてくるのかわからない。
そう考えたとき、花丸はその小さな唇を開き、言葉を零した。
「涙の痕、ちゃんと洗ってね」
「え……」
「ユウくん。眠っている間、ずっと泣いてたから」
そう言われ、右手で自分の顔に触れた。
自分では何があるのか、わからない。それでも彼女は言った。僕の顔に涙の痕がある、と。
それは、あの夢の所為。夢の中で、僕は悲しい光景を目の当たりにしていたんだろう。
さっき、花丸は僕がよく寝ていたと言った。あれは嘘だ。それがなんとなくわかった。
だって、僕も嘘を吐いたから。本当は気持ちよくて目が覚めなかったわけじゃない。
あのつらい夢が終わらなかっただけ。
嘘の理由はただ、それだけだった。
「……うん。わかったよ」
「それじゃあ、美味しい朝ご飯を作って待ってるね」
そう言って、花丸は襖を開けて僕が貸し与えてもらった和室から出て行く。
途端、深い静けさが部屋に漂った。
耳を澄ませば春の朝の音が聞こえてくる。それなのに、ここには何もないと感じた。
具体的にどんな夢を見ていたのか。思い出そうとしても何も浮かび上がることはない。
わかるのは、僕はあの暗い部屋の中にいる映像を見ていた、ということ。
そこで、何かを守ろうとしていたこと。
「………………」
部屋の片隅に置かれた低い机。その上に置かれた
プラスチックの透明な宝石がついたネックレス。
僕はいつも、夢の中でこの玩具の宝石を握り締めていた。そして現実でも、そのプラスチックのダイヤモンドがついたネックレスを大切にしている。
これが、夢と現実で唯一共通するもの。
いつから持っているのかはよく思い出せない。でも多分、あの夢を見始めた頃からは持っていたはずだ。
そうじゃなければ、こんなものは捨てていた。高校三年生にもなってこんな玩具をいつも持っているだなんて、おかしな人に見られても仕方ない。
それでも、僕はこのプラスチックの宝石を大切に持ち続けていた。宝物として、お守りとして、ずっと近くに置いていた。
それにどんな意味があるのかはわからない。本当は何の意味もなくて、ただ偶然、夢の中でもこの宝石の玩具を見るだけなのかもしれない。
けれど、僕にはそう思えなかった。だから、この玩具の宝石を捨てないでいた。
ダイヤを模したその玩具のネックレス。
それを見つめながら、僕は呟く。
「…………あの子は、誰なんだろう」
プラスチックのダイヤモンドは、僕の問いかけに答えてはくれなかった。
襖の隙間から入り込む春の光だけを、ただいつものように鈍く反射させていた。
◇
────I held a jewel in my fingers
──────生徒会長は砕けない──────
次話/浦の星学院高校