◇
両組の入場が終わり、赤と白の鉢巻きを巻いた男達はグラウンドの真ん中にそれぞれ整列し、睨み合う。
向こうの大将は僕らが男子校時代の体育祭で敵騎をたんどくで五騎以上倒した事がある強者。僕と信吾も向こうの大将は彼になるのでは、と予想していたがそれは見事に的中した。レスリング部の部長で当然がたいも良く、腕なんかは僕の二倍くらいある。さらに彼が乗る騎馬は全員が重量系のメンバー。どちらかと言うと機動力を活かそうとしているこちらからすれば相性が悪いか。だがそれは一対一になった時の話。こちらの特攻作戦で数をぶつければ倒れない事はない。
問題は、向こうがどんな作戦を仕掛けてくるか。それによって動きが変わる事は十分あり得る。全てが作戦通りに動くとは思うな、と信吾は先ほどの作戦会議の時、口酸っぱく僕らに告げていた。そして、時には作戦から外れて臨機に行動してもいい、と。それを決めるのは高い目線から戦場を俯瞰できる騎手。つまり、僕の役割。体力では敵わないのなら、僕には戦場を見つめる目と何かを考える頭しかない。それを今から存分に使ってやろうと思う。
「─────あいやしばらくっ! ヤァヤァヤァヤァ! 遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よっ。我は赤組大将・橘信吾なりっ! 行くぞ我が赤軍、敵白組は目前に在り! 我らは赤に染まる雨。傘もささぬ白の軍団を一人残らず紅色に染め上げてみせようっ!」
今はお決まりである両組の口上が行われている最中。これも僕らが通っていた男子校では伝統だったもの。その年の大将によって口上は変わるからそれを聞くのは毎年の楽しみだったりする。今年の僕らの大将は信吾。彼が威勢よく言葉を放つ姿を見て、素直に格好いいと思ってしまった。
でも、実はあれを考えたのは信吾じゃない。数日前の休日。口上を考えられないから助けてくれ、と電話が来て僕はとりあえず下宿させてもらってるお寺に彼を呼んだ。
僕もそこまでこういう事に詳しくない為、二人で難儀しながら悶々と考えていたが、そんな時思わぬ助っ人が登場。国語と日本史にめっぽう強い僕の従妹、花丸。僕らは完全に彼女の存在を忘れてしまっていた。
そこから花丸も交えて一晩かけて三人で今の口上を決めたという経緯があった。前半の決まり文句は武士が果し合いをする時に言うものらしい。花丸がそういう事に詳しくて本当によかった。後半にあっては信吾と僕がない頭を振り絞って考えたもの。信吾が好きな雨を入れて仕上げた力作だった。
そうして白組の口上が終わり、信吾を乗せた騎馬は一度後ろに立つ僕らの方を向く。今度は大将が僕ら騎馬隊に向かって激励をする。これも伝統の流れ。
「いいか。お前ら、よく聞け。勝つか負けるかじゃねぇ。この戦いに必ず勝つと、俺達は決めた。行くぞ野郎どもっ!!!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおッ!!!!!!」」」」」
信吾がそう叫び、拳を空に掲げる。同じように僕ら騎馬隊も全員叫び声を上げて気合いを見せつける。白組の方からも同じような雄たけびが聞こえてくる。気合はほぼ互角。なら、それが本当かどうかを戦う事で証明するだけ。
「…………大丈夫」
ハーフパンツの中に潜ませた玩具の宝石が付いたネックレスを握り締める。何かを願う時、このプラスチックの宝石を握り締めるのは僕の癖。どうかこの戦いに勝って、優勝できますように、と。今はただそれだけを祈る。
両軍の口上と激励が終わり、僕らはそれぞれの配置に着く。僕が乗る騎馬は特攻隊であるため、中央線のすぐ傍に位置している。真正面には白組の騎馬が居る。間違いなく、始まってすぐに僕らはあの騎馬と激突する事だろう。そこで負けないよう、下にいる男子達を信じるしかない。僕に課せられた使命は地面に落ちない事。そして、あわよくば敵騎手の鉢巻きを奪い取る事。それを自分に言い聞かせ、一度深呼吸をした。
女子生徒達の声援が絶え間なく聞こえてくる。彼女達も当然、この騎馬戦を見るのは初めてに違いない。統合して初めての体育祭。まさかそこでこんなに男臭い競技をする事になるとは思いもしなかったけれど、女の子に
「夕陽、頼んだぜ」
「相変わらず軽いな夕陽は。衝撃で吹っ飛ばされんじゃねぇぞ」
「生徒会長に良いとこ見せてやれよ? 俺らも協力してやっからさ」
なんて、僕を乗せる男子達が口々にそんな事を言ってくる。始まる直前だっていうのに、随分と呑気だな。でも、心配してくれてるのはありがたい。彼らのためにも、騎手である僕が頑張らなくちゃ。
「うん、任せて。頼りにしてるからね」
そう言うと、彼らは軒並み男臭い笑顔を返してくれる。それから全員真面目な顔に戻り、前方に立つ敵騎馬隊を睨みつけていた。
僕が出来るのは彼らを信じる事。彼らが信じてくれるのなら、僕はそれ以上に彼らを信じる。信吾がさっき言った通り、信じると決めたなら最後まで信じ抜くだけ。
『ただいまから最終種目、騎馬戦・沼津の陣を開始します』
太鼓の音と共にそんなアナウンスが流れる。それにより、グラウンドに響き渡る応援は最高潮に。僕は最後にもう一度玩具の宝石を握り締めて。スタートする準備をした。
そうして太鼓の音が止み、同時に応援も静まる。遠くで気の早い蝉が鳴いている声が聞こえてきた。今日は暑いからな。まだ暦は六月だというのに、夏と勘違いして生まれてきた蝉が何処かに居るらしい。
ああ、それくらいでちょうどいい。どうせ短い命なのだから誰よりも先に生まれ、そして誰よりも早く死んで行くくらいの方が幸せなんじゃないか。僕も今からそんな格好良い生き方をしてやる。つまり何が言いたいかと言うと、初っ端から全力でぶち当たって行くという事。後先考える必要など皆無。逃げて生き残るよりは本気でぶつかって潔く負けて行く方が性に合ってる。僕は色んな人から女っぽい性格をしていると言われるけれど、自分では全然そんな事は思わない。
だって、僕が憧れるのは誰よりも男らしい生き方をしている親友だ。彼の背中に追いつくまで、僕は逃げないと決めた。誰よりも男らしくあると決めた。
だから、この戦いでも立ち向かうと決めたんだ。いつか、信吾みたいに格好良い男になれるように。
─────パン、という号砲が校庭に響き渡る。その直後、一斉に動き出す騎馬の群れ。
「行くぞおらぁあああああああああッ!!!」
始まりの合図を聞いた男達の威勢の良い叫び声が静寂を切り裂く。全騎馬隊が全力で相手の騎馬に向かってぶつかりに行く。
僕が乗る騎馬も予想通り、目の前に居た敵騎馬隊と衝突する。当然、大きな衝撃が上に乗る僕にも伝わってくる。だが、騎馬は互いに倒れない。恐らく力が拮抗しているのだろう。勢いをつけた初動で倒せないのなら、敵を負かす方法は必然的に変わってくる。
「夕陽っ!」
「任せてっ!」
早速、敵騎手と腕を掴み合う。この勝負は先程ルール説明で確認した通り、相手の騎馬を倒し、騎手を地面に付ける事。それか騎手の鉢巻きを奪う事が勝利条件になる。倒せないのならば相手の鉢巻きを奪えばいい。
相手の騎手は二年生。恐らく、僕と同じように体重が軽いから選ばれたのだろう。運動部に所属していない僕が言うのもなんだが、見るからに運動をしていなそうな男子。よかった。これで相手が力が強かったら今の時点で負けていた。どうやら花丸の言う通り、今日の僕には仏様の御加護がついているらしい。
「くっ」
「よっ、と」
僕の額に向かって徒に手を伸ばしてくる敵騎手の二年生。それを後ろに身体を逸らして避ける。危ない危ない。
騎手が前方に体重をかけた事により前に重心がかかる相手の騎馬。対する僕らの騎馬はしっかりと地に足を付けてバランスを取っている。チャンスだと思い、すかさず自分が乗る騎馬に指示を飛ばす。
「いったん後ろに下がって!」
「おうっ!」
前にバランスを崩している相手の騎馬から離れる。するとさらに重心が前にずれるのが見えた。しめた。
「そのまま前に転んでっ」
「え────うわぁあああああっ!」
尚も僕の鉢巻きに向かって手を伸ばしてくる騎手の腕を掴み、その腕を自分の方へ勢いよく引き寄せる。下の騎馬の重心が前にかかっている今、上にいる騎手を前に引っ張ればさらに崩れて行くのは自明の理。
騎手がこれ以上前に行けないというほど引っ張られた敵の騎馬はバランスを取れなくなり、あえなく前方へと崩れ落ちた。その余波に巻き込まれないように、僕が乗る騎馬は瞬時に位置を変えてくれる。
「ナイス夕陽っ!」
「ふふっ、そっちもね」
まずは一騎。なかなか幸先の良いスタートだった。僕らの前にはしばらく敵騎馬隊は見えない。移動する合間に、急いで戦場を俯瞰する。
相手は騎馬戦のテンプレートのような動きをしている。数隊が大将の前に残り、他の騎馬は遊撃的にこちらの陣地へと突っ込んでくる。いや、そうじゃない。僕らは他の騎馬を無視して敵大将だけを狙っているが、相手の騎馬隊は近づいてくる騎馬だけにとにかくぶつかりに行っている。必然、僕らのように一度騎馬を倒せば容易に大将に近づく事が出来るという欠陥を抱えた作戦だった。
「このまま大将の方に行こう!」
「了解っ! なんかあったらすぐに指示をくれっ!」
がら空きになった前方を駆け抜ける僕が乗った騎馬。僕らの作戦では圧倒的に特攻する騎馬の方が少なく、大将である信吾の騎馬を守る隊の方が多い。だからこそ、僕ら三年生の騎馬は他の騎馬を無視して攻める事が出来る。
「やべぇぞ、一つ抜けた!」
「誰か戻って大将を守りに行けっ!」
僕らの騎馬が一番最初に敵騎馬を倒し、大将に近づいているのに気づいた敵の騎馬隊。だがそれでは間に合わない。攻めに行っていた騎馬が戻るのにより時間がかかるのは火を見るよりも明らか。その前に僕らは敵大将に近づく事が出来る。
「行くぞ夕陽。しっかり掴まってろよっ!」
「うんっ!」
「「「「おらぁあああああああああっ!!!」」」」
助走を付けて僕らの騎馬が相手の大将を守る騎馬に突っ込んで行く。迎撃するために待ち構えていたのだろうけれど、スピードを付けたこちらの騎馬に勝てる訳がない。案の定、大将を護衛していた一騎の騎馬は僕らの騎馬に倒された。良い感じだ。このまま大将に近づければ勝負は早々に決まる。
「よっしゃあっ! これで二騎目っ」
「待って、横っ!」
二騎目の騎馬を倒して少しだけ緊張感が抜けた僕を乗せる男子四人。それを見計らうように、横から突撃してくる敵の騎馬。
大きな衝撃が襲い掛かる。だが倒れるまでではない。気づくのが遅れたけれど、僕らの騎馬は何とか踏ん張ってくれた。早い段階で気づいていたから衝撃に耐える事が出来た。でも今のはちょっと危なかったよ。
「ふんっ!」
「く、っ!」
僕らの騎馬に横から突撃してきた敵騎馬は、恐らく大将の最後の砦なのだろう。今までの騎馬とは明らかに動きと重量感が違う。騎手である男子も野球部に所属する三年生の男子。これはかなりの強敵だ。倒れないように気を付けよう。あとはこの鉢巻きを守ればいい。僕が相手の鉢巻きを奪い取るのはまず無理だ。力が違すぎる。ならば最初から諦めて守りに徹するのも一つの勝負の方法。
「おら、寄越しやがれ夕陽っ」
「やだよっ!」
僕の腕を強引に掴んでくる野球部の男子。くそ、やっぱり力が強い。これじゃあ鉢巻きを奪われるのも時間の問題だ。僕から攻めなければ少し時間を稼げるけれど、それもいつまで保つか分からない。
僕を乗せる騎馬の男子達も敵騎馬隊を押し倒そうと必死になってくれている。だが徐々に押されているのが上に乗っていて分かった。マズい。これではバランスを崩して後ろに倒れてしまう。こうなってしまっては姿勢も悪くなる。同じ体勢で鉢巻きを守るだけでは間に合わない。
「うぉらあああああっ!」
「くっそがぁあああっ!」
「っ!」
相手の力に押され僕らの騎馬は後ろに仰け反る。それを上から押しつぶそうとしてくる敵騎馬隊。騎手の男子も僕の上から体重をかけてくる。このままじゃ倒れる。なら、どうすればいい。
頭を使え。僕に出来るのはそれだけだ。力の無い僕に出来るのは誰よりも戦場を明確に把握して、頭を使って敵の動きを予測する事。
「───あ」
鉢巻きを守りながら目線の片隅にある光景が映った。そして、頭の中で一つの作戦が閃く。この状況を打破できる一本の手綱は、この手の中にある。
頼む、間に合ってくれ。
「立ち上がるよっ! 転ばないでねっ」
「な、夕陽?!」
姿勢が仰け反った状態のまま、僕は騎馬の上に立つ。乗るのではなく、
「ははっ、どうした夕陽。最後の足掻きかよっ」
「そうかもねっ」
上から騎手の男子に体重をかけられていたが、騎馬の上に立つ事により状態をフラットに戻す事が出来る。しかし、相手の騎手はしっかりと騎馬の上に乗っている。僕は両足で男子達の肩に乗っているだけ。どちらの方がバランスを取れているかは考えなくても分かる。
それを見て相手の騎馬はさらに押しを強めてくる。恐らく僕らの騎馬自体を倒すのではなく、上に乗ってる僕を振り落とす事に目的を変えたのだろう。
だけど、それは僕の術中だ。残念だね。たしかにそうする方が確実に勝てるかもしれない。
でも、そんな時間をかける事をしてたら、
「夕陽ぃいいいいいっ!!!」
「助太刀に来たぞぉおおおおおおおっ!」
「おわぁあああっ!?」
味方の騎馬が、僕らと掴み合っていた敵騎馬に高速で体当たりする。相手は完全に周りの状況が見えてなかった。けど僕には彼らがこちらに助けに来ているのが見えていた。だから僕はわざと立ち上がったりして倒れるまでの時間を稼いでいたという訳。間に合ってよかった。死ぬほど安堵してしまったのは僕だけの秘密。
死角から僕らの味方の騎馬に突撃されて崩れ落ちて行く護衛の敵騎馬隊。運よく、助太刀に来てくれたのは足が速い陸上部の連中が集まってる騎馬隊。そうじゃなかったら多分、間に合わなかった。仏様の御加護、凄い。帰ったら花丸と一緒にちゃんとお供え物をしないと。
「ありがとう! 信じてたよっ!」
「へへっ! いいって事よっ」
「よく耐えたな夕陽、さすがだぜっ」
助けに来てくれた騎馬隊に感謝をする。これで最後の砦を倒した。残るは敵大将が乗る騎馬隊のみ。しかもこちらには二騎、騎馬が居る。二対一ならどんなに相手が強くても負ける事はない。
─────だがしかし、僕はここで酷い勘違いをしていた事に気づく。ああ、そうだ。気づくのが遅すぎた。
どうして、相手の大将は自分を守らせる騎馬隊をここまで少なくしていたのだろう。その理由を考えていなかった。明らかに初めから護衛の騎馬隊が少ないのはパッと見ただけでも理解出来たのに、僕はそれに対して何の疑問も抱かなかった。
僕らは作戦通り特攻し、早い段階で敵大将の最後の守りを突破した。それが、敵大将の思惑通りだとは、考えてもみなかった。
◇
「…………あれ」
「おい、ちょっと待て」
「どういう事だ、これ」
敵大将が乗る騎馬隊に挑む前に、僕らの騎馬隊と味方の騎馬隊は何かがおかしい事に気づいた。
何故だ。なんでこんな所にこんな数の敵騎馬隊が居る? 解せない。一体いつから、僕らは囲まれていたんだ。
「残念だな、夕陽」
「え…………」
「これが俺達白組の“井の中の蛙”作戦だ」
白組の大将が、嫌な笑みを作りながら僕に向かってそう言ってくる。井の中の蛙。それは井の中では威張っている蛙でも大きな海の存在は知らない、という意味の諺。
その諺を今の自分自身に当てはめる。ああ、たしかにそうだ。今の僕らはその諺の通りになってしまっている。
多数の騎馬隊に囲まれて完全に成す術がない僕らの騎馬。なるほど。ようやく分かってきた。
たぶん、僕らの作戦は最初から白組の大将に読まれていた。だから僕らはあんなにも簡単に大将まで接近できたのだろう。僕ら三年生の騎馬隊が特攻する事を分かっていた白組の大将は、わざと自信を守らせる騎馬を少なくしていた。それで、僕らが接近したところを見計らって先に進ませていた騎馬を自分の陣地の方へと呼び戻した。手当たり次第に赤組の騎馬にぶつりかりに行っていたのも、あれはフェイクだったのか。
「…………嘘でしょ」
「信吾なら多分そう考えてくると思ったからな。先にお前ら三年を潰しておけば後の一・二年はどうにでもなる。だから俺は最初にお前らをここに誘き寄せたんだよ」
白組の大将である彼も信吾と長年の付き合いだから考えてる事がわかったのか。流石は騎馬戦の勇者と呼ばれただけはある。
これでは僕らは何も太刀打ちできない。ここまでの数の騎馬に囲まれてしまったら手出しできる方がおかしいってもんだ。
「あぁ、これはちょっと予想外だったね」
「だろ? んじゃ、早めに潰れておけ」
白組の大将が右手を上げる。それが僕らの騎馬を囲ってる騎馬隊を動かす合図だと、何となく予測した。
その手が下がれば僕らは一騎に潰される。それはすでに決まっている未来。
「…………でもね」
「ん?」
「いつ、信吾の考えが当たってるって言った?」
「は? 夕陽、お前何言って」
僕は微笑みながら敵大将を見つめる。彼も言葉の意味がわかってないのだろう。それもそうだ。だって、彼は僕らの騎馬隊しか見ていないから。いや、それかその奥に立つ自分達の隊しか見えていないから。
「たしかに、君達は大海を知っていて、僕らは小さい井戸の中しか見えてなかったと思う。でもね」
僕は白組の大将を見つめながらその言葉を放つ。これは最後の命乞いでも、負け犬の遠吠えでもない。
彼よりももっと壮大な世界を見つめる、井の中の蛙だからこそ考えられたもう一つの作戦。
「ふふっ。あの信吾が、いつまでも同じ考えを持っている男だと思った?」
「………………まさか」
「僕らの大将をあんまり軽く見ない方がいいよ。共学になってからまた強くなったから」
そう言って後ろを振り向く。その目線の先には、我らが大将が居るのはここに立つ誰もが知っている事。
でも、僕が言っているのは
「ね、信吾」
「あったりめぇだろっ! この俺を、誰だと思ってやがるっ!」
そんなの、統合先の女の子に恋をしたのに、未だに燻ってる僕らのリーダーに決まってるじゃん。
次話/激突!沼津の陣Ⅲ