◇
夕焼け色に染まる海岸通り。県道に人通りはなく、嗅ぎ慣れた潮の香りと何処かの民家から流れてくる夕餉の香りが漂っていた。
歩道のすぐ傍にある波消しブロックに波が当たり、穏やかな潮騒が奏でられる。頭上には一匹の海鳥が羽根を広げ、高い鳴き声を上げながら橙色の空の中を気持ち良さそうに泳いでいた。
ついこの間まで聞こえていたひぐらしのバラードも、気づけば無くなってしまっている。どれだけ耳を澄ませても、周囲から聞こえるのは九月の終わりに流れる静かな海辺の音だけ。それ以外は本当に何も聞こえてこなかった。
裏山にある蜜柑畑には沢山の蜜柑が実り、いつも緑色の木々達をオレンジ色に染めていた。その光景を眺めていると、なんとなく夜空に浮かぶ星を連想させた。緑の木が夜空で、生っている蜜柑が星。それなら随分美味しそうな星だな、とおかしな事を思ったりした。広い銀河の中を探してみれば、甘酸っぱい星も見つかるかもしれない。
「………………」
「………………」
学校からの帰り道。先ほど僕の快気祝いと称した打ち上げが終バスの時間とともに終わり、僕はいつも通り徒歩で帰る事にした。
一人で帰るつもりだったのに、僕の隣には一人の女生徒が歩いている。何故かは知らないが、校門を出た所で彼女は誰かを待っていた。そして、声を掛ける間もなく隣にピタリとついてきた。それから学校前の坂を下り、県道に出て、今に至っている。
夕暮れの内浦を並んで歩く。会話は校門から一度も交わしていない。話したい事が無い訳じゃないけど、この間の事を思うと気まずくて気軽に話す事が出来なかった。
彼女が僕と一緒に帰る事を望んでくれていたのなら、それは素直にうれしい。そこに会話が無くても、心が満たされるような感覚があった。けど、いつまでも無言のままで居るのは少し息苦しい。
「あの……ダイヤ、さん?」
だから、僕は勇気を出した。隣を歩く女の子の名前を呼ぶ。ただそれだけの事だったのに、心臓は鼓動を強め、拍動する速度を増した。
海の方から優しい風が吹いてくる。ふわり。すぐ近くから金木犀の良い香りがした。
夕焼け色に染まった潮風はその香りを何処かへ運んで行く。行き先は多分、本物の金木犀が咲く十月の方へ。これから訪れる、秋の季節に。
「なんですの」
ダイヤさんは少しの間を置いて、口を開いてくれた。でも。
「どうして怒ってるの?」
「お、怒ってなどいませんわっ」
不機嫌そうな顔をしているダイヤさんにそう訊ねると、さらに不機嫌そうな表情で返された。どう見ても怒ってるのに怒ってないと言うのは彼女の癖なのだろうか。
何かしてしまっただろうか、と考える。ダイヤさんを怒らせるような事。何個か心当たりがある事にはあるけれど、彼女はどの出来事を気にしているのか。その原因を特定する事は難しい。
「よく分からないけど、ごめん」
「べ、別に謝らなくてもいいですが」
理由も不明瞭なまま謝ると、ダイヤさんは僕の方ではなく海の方へ顔を背けてしまった。艶やかな黒髪が掛かっている可愛らしい耳が赤に染まっているように見えたのはきっと、夕暮れの所為だろう。
「なら、どうして怒ってるのか教えて?」
「………………っ」
「ダイヤさん?」
そう訊ねると、彼女は身体をピクリと反応させた。微かに『ぴぎっ』という声が聞こえた気がしたけれど、それは気の所為という事にしておこう。
夕暮れの海岸通りに静けさが流れる。温かな色をした夕日が時間をかけて海に向かって落ちて行く時間帯。この穏やかな
一台のバスが僕らの事を追い抜いて行き、遊びから帰る数人の小学生がすれ違って行く。そんな、何処にでもあるありきたりな日常の風景。面白くもなんともない、普遍的な時間。
それも、隣にこの子が居れば特別に思えるような気がした。彼女が隣に居るこの時だけは月並みではない。ただ流れて行く時間の奔流に、ほんの少しだけ抗いたくなる。
もうちょっとだけこの子と一緒に居る夕暮れが続いてくれますように、と心の中で呟く。僕はその願いを、山に隠れて行こうとする夕日に祈った。
「………………ですわ」
「うん?」
ダイヤさんが何かを囁く。でも、よく聞き取れなかった。すぐに訊き返すと、彼女は背けていた顔を徐にこちらへ向けてくれた。
橙色の光に染まる彼女の顔は、何故かほんのりと紅潮していた。まるで、あの夕焼けに赤い化粧を施されているかようにも見える。そんないつもより美しい表情を見て心臓が高鳴ったのはもう、どうしようもなかった。
「は、恥ずかしいのですわ」
「……何が?」
「あなたと、顔を合わせるのが、です」
ダイヤさんは小さな声でそう言った。今度はちゃんと聞こえた。だけど、言葉の意味までは理解出来ない。ならどうして、彼女は僕と一緒に帰っているんだろう。ダイヤさんの言っている事と行動は、たまに逆になったりするから本音を見分けるのが大変。それも全部、彼女の中に存在する強がりという気持ちの変換機の所為。その強がりの所為で僕の心は一度へし折られたから、ダイヤさんの性質は誰よりもよく理解しているつもり。考えている事までは分からないけれど。
「どうして?」
今度はムッとした表情で睨みつけられた。なぜ分からないのです、と彼女の顔は語っている。
「なぜ分からないのです」
やっぱり。考えている事が顔に出ている時は分かりやすくていい。
笑いそうになるのを堪えて、僕は口を開いた。
「だって、本当に分からないから」
「…………」
「言ってくれたら分かるかもしれないから、教えて?」
そう言うと、ダイヤさんの顔はまた赤くなった。目で分かるくらいの変わり様。彼女がここまで照れているのを見るのは、あの時以来。
ん? あの時?
「…………あ、
「あ…………」
ダイヤさんにそう言われて、ようやく彼女の言葉の意味を理解した。途端に僕の顔にも熱が帯びてくる。分からなかった自分が恥ずかしすぎて、思わずダイヤさんから顔を背けてしまった。
そうか。考えてみれば僕らはあの日以来、一度も会っていなかった。なのにどうして僕は平気な顔で彼女と接する事が出来たんだろう。
忘れていた訳じゃない。でも、考えないようにしてたから意識はしていなかった。ダイヤさんが気にしている事までは、考えもしなかった。
何をやってるんだろう、僕は。彼女に
熱くなってくる顔をダイヤさんから背けたまま、僕は立ち止まる。彼女も僕の近くで止まり、こちらを見つめているようだった。やばいどうしよう。恥ずかしくて顔が見られない。本来ならばこの場で土下座をする勢いで謝らなくてはいけないような事を、僕は彼女に対してやってしまっていた。とぼけていた自分が嫌いになりそうだ。
「ご、ごめんダイヤさんっ。あの時は、その」
「──────ッ」
今度はちゃんと彼女の言い分を理解して謝罪する。ダイヤさんも僕が彼女の言葉を理解した事に気づいたらしく、両手の拳をキュッと握り締めながらこちらを睨み、身体を強張らせていた。
どうやらあの時の事は闇に葬り去るのが得策らしい。それは僕にとっても、ダイヤさんにとっても。あとどれくらい彼女と会えるのかは分からないけれど、少なくともその間は消えない黒歴史としてあの出来事は残り続けるだろう。
でも仕方ない。僕だって男なんだから。
「……本当にごめん。あの時は、どうかしてた」
鞄を持たない右手で頭を掻きながら、また謝る。男の僕が女の子であるダイヤさんに謝罪するのは当然の事。いくら彼女の方から僕を求めて来ていたのだとしても僕は反省し、謝らなければならなかった。
そろそろ土下座をするべきかと本気で思い始めた時、ひとつの天邪鬼な声が聞こえてくる。
「べ、別にいいですわ。今度同じ事をしたら、本気で怒りますからね」
「………………分かったよ」
「っ!? そ、そんな捨てられた子犬のような目をしないでくださいっ」
深い悲しみに打ちひしがれていたら、ダイヤさんにそう言われた。どうやら今の僕はそんな目をしているらしい。そうなるのも致し方ないと自分を許してあげよう。だって、そんな事を約束させられたら本気で悲しくてどうにかなってしまいそうだ。
僕は小さなため息を吐き、ダイヤさんはこほんと咳払いをして、お互いの顔を見つめ合う。
「…………」
「…………」
ダイヤさんの顔は、これ以上ないくらい赤に染まっている。夕焼けの所為には出来ないほど濃い色彩だった。そして恐らく、僕の顔も彼女と同じような色をしていると思った。
見つめ合ったまま、時が流れる。近くの防波堤の上にとまる海猫の可愛い声が聞こえた。なんとなく、黙って見つめ合う僕らに何をしているのか、と訊ねているような鳴き声に聞こえた。
「…………嘘、ですわ」
「え?」
「な、なんでもありませんわっ」
そう言って、ダイヤさんは先に歩いて行ってしまう。彼女は何か大事な事を言ったような気がしたけれど、今は気にせずその背中を追った。
そしてまた隣り合って、
「……ねぇ、ダイヤさん」
「どうしました、夕陽さん」
「ダイヤさんは高校を卒業したら、どうするの?」
隣を歩く生徒会長に、僕は訊ねる。テスト勉強をしている時に一度進路の話はしたけれど、そう言えば彼女が具体的にどんな道へ行くのかは聞いていなかった。
僕の問いにダイヤさんは少しだけ考えるような間を空けて、血色の良い唇をそっと開いた。
「私は、東京の大学に進学する予定ですわ」
「東京の?」
「はい。夕陽さんは?」
今度はダイヤさんから訊ねられ、僕は自分が決めている進路を口にする。
「僕は、関西の大学に行くよ」
「…………」
「プロの翻訳家になる為にね。それが、昔からの夢だったから」
抱き続けた夢を叶える為に、卒業した後この沼津から出て行く。それはずっと前から決めていた事。
ダイヤさんが東京の大学に行く事を知っても、この夢だけは捨てられない。僕にとって、何よりも大切な事だから。
ダイヤさんは黙ったまま隣を歩く僕の方へ視線を向けてくる。彼女が何を思っているのかは知らないけれど、感じている事は同じだと思った。
だから、僕は彼女に
ずっと渡せなかったプレゼント。長い間タイミングを探して、ようやくその時が来た。
あの時、雑貨店の店員が言った言葉を思い出す。
『時間は味方にもなり、敵にもなる。だから渡すタイミングに気を付けなさい』、と言う言葉。
今がその時だと、僕は信じる。
「卒業したら、会えなくなっちゃうね」
「…………そう、ですわね」
「でもね、ダイヤさん」
僕は立ち止まり、制服のポケットに入ったものを取り出す。ダイヤさんは突然立ち止まった僕の方を振り返り、小さく首を斜めに傾げていた。
そして、僕はそのプレゼントを彼女の方へと差し出す。その瞬間、ダイヤさんの目が少しだけ見開いたのを僕は見逃さなかった。
「…………これ」
「うん。ずっと、渡そうと思ってたんだけどね」
「でも、どうして?」
「ダイヤさん、これを気に入ってたみたいだったから。それと、もう一度あの髪型を見たかったから」
彼女が僕のお願いを聞いてくれて、髪をツインテールにしてくれたあの日。あの時の彼女が忘れられなくて、どうしてもまたあの髪型が見たかった。
だから僕はあの時、このシュシュを買ったんだ。
「けど、今はひとつだけ」
「?」
そう言って、僕は彼女にシュシュをひとつだけ渡した。もうひとつはまたポケットの中に仕舞った。彼女は、僕の言っている事が分からないというような顔をしている。
今は、それでいい。でもいつか、分かってくれると信じてる。その時が来たら、もうひとつのシュシュを渡そう。そのいつかは。
「高校を卒業して、大学も卒業したら、僕はダイヤさんの所に行く」
「え…………?」
「その時、もうひとつを渡すよ。必ず。だから」
だから。
「ずっと、持っていてほしい。ずっと、忘れないでいてほしい」
今はひとつだけを彼女に渡す。いつか、このもうひとつをダイヤさんに渡すために。
「ダメ、かな?」
僕がそう言うと、ダイヤさんはシュシュを大事そうに両手で握り締めて、首を横に振ってくれた。
そして深碧の目を僕の方へ向けて、綺麗な微笑みを浮かべてくれた。
「…………ダメな訳、ないでしょう。ばか夕陽」
そう言った彼女の目には、ほんの少しだけ涙が浮かんでいるように見えた。
その言葉以上に欲しいものは無かった。嬉しくて、僕も涙が出そうだった。
「ありがとう───ダイヤ」
馬鹿と言われた仕返しをする為に、彼女の名前をそう呼んでみせる。
でも、お硬い生徒会長はその呼び方がお気に召さなかったようだった。
「ふんっ。私の恋人になったからって、あまり調子に乗らないでください」
「はは、呼び捨てはダメだった?」
「だ、誰もダメとは言っていないでしょう?」
「じゃあ、ダイヤって呼んでいいんだよね?」
「……特別に良いですわ。でも、その代わり」
「その代わり?」
「私も…………
彼女は恥ずかしそうにそう言って、僕から目を逸らした。
その懐かしい呼ばれ方に喜びを感じてしまい、思わず顔から笑みがこぼれる。
本当に彼女は変わらない。まるで永遠にそう在り続ける、ダイヤモンドのように。
「分かった。ならよろしくね、ダイヤ」
「なっ、で、ですからあまり調子に乗らないでくださいと言っているでしょうっ? あなたは何回言えば分かりますの!?」
「はいはい。分かった分かった」
「──────ッ!」
顔を赤くする反応が面白くて、つい笑ってしまう。それから彼女の説教をいつも通りに流した。
それが気に食わなかったのか、彼女は怒った顔をして僕の方へと早足で近づいてくる。
彼女は僕の目の前で、少しだけ背伸びをした。
「んむ、っ?」
「ん────」
そして、その唇を僕の唇に当ててきた。ぶっきらぼうで、何処か怒っているような。
なんとなく彼女らしい、と思ってしまうキスだった。
「…………どうして?」
「…………前に言ったでしょう。次に
唇が離れ、訊ねるとそんな答えが帰ってきた。
たしかに思い返すと彼女はそんな事を言っていた。でも、その罰がこんなものだとは言っていなかった。こんなの、罰じゃなくてむしろご褒美だ。
抗議したいのに、頭が真っ白になって何も言えなかった。そんな状態で立ち尽くした僕に、彼女は声をかけてくる。
怒っている顔ではなく、呆れたような微笑みを浮かべて。
「あなた本当に───ぶっぶー、ですわ」
そんな言葉を優し気な声に乗せて、僕に言った。
「………………」
「さぁ、帰りますわよ」
そう言って彼女は踵を返し、先に海岸通りの歩道を歩いて行く。僕はその場に立ち尽くしたまま、離れて行く背中を見つめていた。
人にするなとか言っておきながら自分からしてくるなんて、そんなの反則だろう。いい加減にして。
そんな事を思いながら、僕はポケットの中に入っている玩具の宝石を強く握り締めた。
「あ」
すると、いつもとは違う感触が手に伝わってくる。普段なら形を変えず、ただ握り締められるだけの玩具の宝石。
でも今は、僕が握り締めた時、パキンという小さな音がした。
ポケットに入れた手を咄嗟に引き抜き、広げる。
そこには。
「…………はは、っ」
「何をしていますの? 行きますわよ、夕陽くん」
声が聞こえて前を向くと、一人の生徒会長が離れた場所で僕の事を見つめていた。
「うん。いま行くよ、ダイヤ」
彼女の言葉にそう答え、前に向かって歩き出す。
愛する人が待つ、夕日に染まる帰り道を。
それから、砕けた
それがこれ以上壊れないように。いつかまた、新しく作り直せるように。
今度は偽物ではなく、本物の宝石を守り続けると誰かに誓いながら。
───そっと、そっと。
◇
The Answer/
春の匂いがする。
開け放たれた窓から入り込んでくる、柔らかな空気。冷たい冬を越えて、ようやく暖かさを思い出した季節が吹かせる春の風です。
今はもう何も無くなってしまった図書室。ここに在るべき数多の本の香りは、季節の移ろいとともに誰かが奪い去ってしまった。
でも、哀しくはありません。ここで読んだ数百もの物語は、ずっと心の中に残り続けているから。
その物語たちがくれた喜びや悲しみ、寂しさや楽しさ。それらに触れる事ができたから、この数十万文字のストーリーは生まれたんです。
いつか食べたものが今の自分を作っているみたいに、幾多の物語を読み重ねたおかげで〇はこんなにたくさんの文章が書けるようになりました。
そして、やっと完成する事ができました。
今日というもう二度と訪れない特別な日に、どうにか間に合う事ができました。最後は徹夜で書いたから、少し眠くなってしまいました。慣れない事はするものじゃありませんね。えへへ。
「──さん?」
そうして何も無い図書室の受付に座ってうたた寝をしていると、誰かがドアをスライドして中に入って来ました。その声を聞いて、眠りに落ちかけていた意識は優しくサルベージされます。
「ああ、ここにいたのですね」
顔を上げると、その人は優し気に微笑みながらこちらに歩み寄ってきます。手には卒業証書が入った筒。もう袖を通す事は無いであろう制服の胸元には、桜のバッジが付けられています。
「何かを書いていたのですか?」
その人は〇の前にある原稿用紙を見て、そう訊ねてきました。〇は頷き、それからそのぶ厚い原稿用紙の束を持って立ち上がります。
そして、それをこの学校の生徒会長だった彼女に差し出しました。
「これは、なんですの?」
今日のために書いた小説です、と〇は答えます。卒業してしまう三人の先輩のために書いた、三つの物語。これは、その中のひとつの物語。
「私が読んでもよろしいのですか?」
もちろん。これは、あなたにだけ読んでほしい。
〇たちの前から旅立ってしまうあなたが、長い旅の途中で退屈しないように書いた小説だから。
何も渡せない〇が一生懸命書き連ねた拙い小説。それが、この物語の正体。
「題名は、何ですの?」
そう言われて〇はハッとします。そう言えばまだ題名を付けていませんでした。それを考えている最中に寝落ちしていた事を今さら思い出しました。
〇はその場に立ったまま考えます。目の前に立つ、この小説のテーマになった人を見つめながら。誰よりも硬く、そして誰よりも美しい、真面目でしっかり者の生徒会長さん。
その人を見つめていると、ある言葉が頭に浮かび上がります。少しおかしなタイトルかもしれないけれど、この人なら許してくれると思いました。
もう一度その原稿を受け取り、〇は空白だった一ページ目の最初の行に文字を記します。
たった九文字の言葉。きっと世界中で彼女のためにしか書けなかった、この作品の題名を。
〇はまたその人と向き合い、原稿用紙を差し出します。そして、こう言いました。
「この作品の題名は」
──春の匂いがする。
ここは、
大切な思い出がたくさんあるこの場所。
そこを舞台にして描いた、ひとつの恋愛譚。
旅立つあなたへ送る、
それが、
「生徒会長は砕けない、ずら。
卒業おめでとう、ダイヤちゃんっ」
生徒会長は砕けない
終