あの試合が終わり、翌日。朝の教室ではホームルームが行われているが、その中一夏は、電子黒板に書かれている文字を見て唖然としていた。
「はい、というわけでクラス代表は織斑一夏君に決定しました。あ、一つながりで縁起もいいですね」
真耶の発表が行われ、パチパチと拍手の音が響く中、織斑一夏は目を大きく見開いてありえないという顔を隠せない。
どうしてこうなったのか、それを聞くために一夏は手を挙げた。
「先生。質問いいですか?」
「どうしました織斑君」
「あの……俺、2敗したんですけどどうしてクラス代表に」
「ああ、それはですね―――」
「それはわたくしが辞退したからですわ!」
ガタンと音をたてながら立ち、腰に手を当てて一夏の方を指さしながらそう言うセシリア。さすがに訳が分からず一夏は目を丸くしており、コホンと軽く咳をしてセシリアは改めてその説明に入る。
「まあ、勝負は貴方の負けでしたが、そもそもこれは仕方のないこと。むしろ代表候生をあそこまで追い詰めたのは十分に称賛に価いたしますわ」
そこまで言われて少しムズ痒いのか頬を掻く一夏。それを見てセシリアは小さく微笑み、話を続ける。
「あの時はわたくしも大人げなくあんなことを言ってしまったのは謝罪いたします。ですので自ら辞退いたしまして、織斑さんに代表を譲ることにいたしましたの。それに代表となれば出る試合も数多。実戦となればより多くの経験値が積めるでしょう」
「そ、そうか。あ、それと俺のことは一夏でいいぜ。それとセシリアと呼んでもいいか?こう、名字で呼ぶのなんか苦手でさ」
「ええ、よろしくてよ。ではよろしくお願いしますね、一夏さん」
「おう!……あれ?」
何か乗せられた気がする一夏。この時一夏は改めて自分と他の2人の勝率を思い出す。自分は全敗。セシリアは1勝1敗。そして航は2勝。
それを思い出すや、即座に航の方を向いた。
「航!お前2勝したよな!?どうして!」
隣に居る航にの机を強くたたき、顔を一気に詰めかけるが、航は少し申し訳なさそうな苦笑を浮かべ、右手を軽く振って返す。
「あー……すまんな。あの試合の後楯無に医務室に引きずられながら連れていかれて、結果肋骨3本、右腕に罅入ってるのが判明した。だから辞退させてもらう」
「えっ……?」
航の右手を見ると、長袖の制服に隠れているが手首の方に包帯が見える。いったい何があったのか、一夏はそれが不安でたまらなかった。
他の生徒や副担任の真耶もそれに気づくや、怪訝な顔を浮かべている。
「あの機体はじゃじゃ馬すぎてな、パートナー……の俺のことも信じてないらしい。だから跳ね返ってくるだとさ」
「だとさって……それ誰が言ったんだよ」
「え、機龍の開発者に言われた。だから死なないように気を付けろってな」
「えー……」
最初から死ぬ前提と言わんばかりの仕様に誰も何も言えない。この空気の中、千冬が手を叩いたため全員がその方を向く。
「さて、篠栗はこのような理由だから辞退。織斑、貴様がクラス代表になるがいいな?」
「は、はい!」
千冬からの圧もかけられ、一夏はYES以外の返事することはできなかった。そしてクラスの全員から拍手が送られ、一夏はひきつった笑みを浮かべながら、内心すごい落ち込むのであった。
そしてホームルームが終わり休み時間。一夏は改めて航の状態を見る。
「おいおいホントに大丈夫なのか?」
「これならまだ問題ない。そういえば一夏、クラス代表頑張れ。応援してるから」
「お、おう……そうだけどさ……何で俺なんだよ……ISの実力も低いし……」
「まー、そこはひたすら乗るしかないな、うん」
「そうだけどさー!」
「ちょっとよろしくて?」
「「ん?」」
そこにいたのはセシリアだった。何かデジャヴを感じるが、前の時とは違い、彼女は温厚な笑みを浮かべている。それにしてもいったい何の様なのか。2人は首をかしげていた。
「一夏さん。それならわたくしが練習相手をしてあげますわ」
「本当か!」
試合であれだけ強かったのだ。一夏に取ってはまさに渡りに船だった。セシリアもその反応が嬉しいのか微笑みを浮かべており、そして日程などを組んでくことに。
「なら今日の放課後から早速いたしますわよ」
「ああ、それならよろしくたの―――」
「ま、待て!一夏は私が教えるのだから問題ない!」
間に入り込んできたのは箒だった。いきなり入ってきたことに一夏は驚いているが、箒は一夏が捕られると思ったのか、必死に彼と一緒にいるアピールをセシリアに行う。それでセシリアは嫌な顔をするかと思われたが、少し驚きを浮かべるも自然とその顔には笑みが浮かんでいた。
「まあ、あらあら。それなら篠ノ之さんも一緒にいかがです?わたくしとしては2人になったところで何も問題ありませんわ」
「なっ、その、それは……」
「ふふっ、冗談ですわ。ですが気が乗ったらその時は一緒に教えてあげますわ」
「む、むぅ……その時は頼む」
少し申し訳なさそうに答える箒。一夏はいったい何だったのか首をかしげていたが、なんか解決したなら問題ないかと一人頷いている。
その時余鈴が鳴り響く。航たちはそれぞれ分かれ、自分たちの席に着く。
そして1分ほどして入ってきたのは燈だった。
「はい、今日最初の授業は怪獣学ですが……皆さん、聞いてます?」
「はーい」
航たちなどやる気のある生徒はちゃんとしているが、他の生徒はパッと見ちゃんとしているようで、心あらずという雰囲気を出している。
流石に燈も眉をしかめるが、小さくため息を吐いた。
「……えー、今回の怪獣学はコレですね」
諦めた燈はリモコンを操作し、いつものように画像を出す。
それは黒だった。巨大な灰色の背びれに長い尻尾。誰もが写真などで見たことある姿。
「今回の怪獣もゴジラ。厳密に言うなら2体目のゴジラですね。身長は55m。体重約2万5000トン。1954年に現れたゴジラと同種で、遺伝子から最初のゴジラの子どもであることが判明しています。そして今回のゴジラこそが、今日本海溝で眠ってる個体となっています」
今も眠っている。それを聞いて何人かごくりと喉を鳴らすが、大変の生徒はヘラヘラとしており、そんな大げさとか言っている。
それに一瞬目を細める燈だが、いつものようにニコッと笑みを浮かべ、画面を操作する。
「……さて、ゴジラについてですが、まずはこの写真を見てください。これは5年前に撮られた深海7500mの海底の写真ですが、このままじゃ全く何もわかりませんね?」
そして出された写真だが、真っ暗な空間に明りが灯されたかのような光景だった。それが何なのか分からず、生徒たちは首をかしげている。
「ではこの写真にある加工を行われたものを映します。はい」
そこに映し出されたのは海底だった。暗さはさっきより明るくなっており、地面のおうとつや岩石などが薄緑の線で映し出されており、その中でひときわ目立つ山のようなものがあった。
明らかに他のとは違う、いくつも生えた
「これって……」
「はい、これが皆さんの知ってるゴジラの姿です。この姿が捉えられたのは今から15年前となっており、この写真は5年前に撮られた最後の記録となっています。今は体のほとんどが海底に埋もれていますが、当時の記録だとまだ生体反応があることが確認されています」
「先生、1つ質問いいですか?」
その時手を挙げたのは航だった。
「はい、篠栗君どうぞ」
「最後に記録されたのが5年前って言ってましたけど、それ以降の記録って無いんですか?」
その時、燈は気まずそうに目を逸らす。何か行けないことなのだったのだろうか、航は少し苦い表情を浮かべた。
「……実はですね、このような海底探査等の予算は全てIS関連に吸われ、今となってはこのような深海探査などを行ってる組織はほぼありません。ISは当初、宇宙進出を目的としたため宇宙とは真逆の暗闇の世界、深海調査にも使われる予定だったそうですが、そのようなことが行われた記録が一切なく、結果として今の深海は何があるのかすら全く分かってない状態となっています。そのためゴジラが今もこの場で眠っているか、それとも活動開始してるのかすら一切分かっておりません」
“彼女”たちにとって深海探査は全く重要とは思ってないだろうが、このような調査でどれだけ国防にかかわるか重要な問題なのだ。だがISの登場はそれらすら忘れさせ、目の前の利益ばかり追求するようになってしまった。
とんでもない事実。ISがこのような影響を及ぼしていたのを知らなかったらしく、生徒たちは驚きを隠せない。
それを確認するや、燈は授業を進めることにする。
「では本題、もとい説明に入りますね。ゴジラは1999年、ここから遠くない房総半島に上陸、そこでこの固体と自衛隊による初の戦闘が行われますが、大敗。その後自衛隊は三式機龍を開発し、完成同年の2003年にゴジラと激突します。最初にゴジラ横浜にあった八景島と呼ばれる人工島を破壊し、横浜市本土に入ったとき―――」
「せんせー。ここって横浜市ですけど、その八景島ってここからどれぐらいの距離なんですかー?」
その時1人の生徒から質問があった。
「そうですね。距離は全く離れていません。というか同じ横浜市金沢区で、ここから1キロ未満の場所にありました」
「ありました……?」
「はい。ゴジラによって壊された八景島は今となっては姿かたち無くなっており、その土地の一部がこのIS学園に使用されています」
それを聞いて一気にざわめく生徒たち。そんな近くにゴジラが現れたという驚きを露わにしており、そして燈が指さした方を見る。
その後出された写真には三角形の屋根を持つ施設をゴジラが吹き飛ばす姿であった。
「さて話に戻りますが、横浜市本土に上陸したゴジラはそのまま街を蹂躙しつつ侵攻。そこに三式機龍が現れそこで戦闘となります」
そして新たに画像が映し出される。そこに映し出されたのは航の専用機である四式機龍に酷似した銀色の龍の姿であった。
「三式機龍。これについての説明はまた今度しますが、この戦闘にゴジラは敗走。ですが、ゴジラがその時に挙げた咆哮により機龍が暴走。それによって横浜市が火の海になってしまいます」
「え、人が作ったロボットなんですよね?なんでそれが暴走を?」
「良い質問ですね。その理由はこの機体、ゴジラのDNAを使ったDNAコンピューターという物を用いてるのですが、これがゴジラの声に反応し、そのまま暴走したとされています。さてこの説明もまた今度しますが……後日ゴジラは東京都品川に上陸。そこで自衛隊総力を駆けたゴジラ迎撃作戦が展開されます」
そこに映し出されるのは、ゴジラに攻撃する戦車や戦闘機の写真、三式機龍と激突しているゴジラの写真などだった。どれも昨日撮ったのではないかというほど鮮明で、とても臨場感のあるものばかりだ。
だがいくら数をそろえようと戦車も戦闘機も破壊されていく。ただその中、三式機龍はゴジラに挑み、そして出された写真は海上にそびえる巨大な氷柱と、胸元に大きな傷を残すゴジラの姿であった。
その戦いは熾烈を極めるも、三式機龍の3式絶対零度砲を浴びせ、結果ゴジラを撃退することは成功しました。ですがゴジラには絶対零度の攻撃も致命傷を与えるまででしかならず、この1年後の2004年にに再びゴジラは東京に現れます。それがこの姿です」
そこに映し出されたのは先ほどと同じ個体のゴジラであるが、胸部には大きな傷跡が残っており、品川での戦闘の傷が癒えてないことがよくわかる。だが1年で致命傷であった傷をここまで治すとはどれほどの生命力なのか……。
「その後ゴジラは東京湾の品川沿岸から上陸後、巨蛾“モスラ”の成虫と激突。その後に前回の戦闘によって損傷した箇所を直した三式機龍改と激突します」
そこに出されたのは極彩色の翼をもつ巨大な蛾とゴジラが戦ってる姿であった。顔の付近で足で引っかいたり、翼から黄金の粉をゴジラに向けてばら撒いてる姿などがある。
だがしかし、それらが効果ないのかゴジラの熱線に焼かれ、巨蛾は墜落。だがそこに現れた三式機龍改との激突の写真が出された。
「ゴジラは三式機龍改との戦闘に入り、最初はゴジラ優勢でしたが、モスラの幼虫2匹が戦闘に参加。それによってゴジラは徐々に不利に追いやられます。モスラの成虫を倒すも、それによって幼虫たちの怒りを招き、結果ゴジラは機龍の攻撃によって腹に風穴を開けられ、モスラ幼虫の吐く糸によって完全に動けなくなってしまいます」
そこに映し出されたのは糸でグルグル巻きにされ、地に伏すゴジラの姿であった。このままトドメが刺されるのかと思っていたら、三式機龍改がゴジラを抱きしめ、そのまま空へと去る写真が映し出され、生徒たちはどういうことかと唖然とした表情を浮かべる。
「この時三式機龍改にはある感情が芽生えたらしく、そのままゴジラを抱きしめ飛翔。そしてゴジラは三式機龍改に抱かれたまま、そのまま日本海溝に姿を消しました。これが丁度50年前に起きた出来事です」
近いことは日本史で学んだのだろうが、こんなことがあったのか。改めて女子たちはゴジラの事を知るが、これが今更何になるとかと言わんばかりの目で燈を見てくる。だが燈も分かってるのか、小さく肩をすくめるや、軽く時計を見て締めに入ろうとしていた。
「ちなみにゴジラが東京を目指していた理由ですが、八王子駐屯地目指して移動しており、そこには、三式機龍がいたからです」
「リベンジマッチですか……?」
生徒がそう言うが、燈は否定するようにゆっくりと首を横に振る。そうでなければ一体何なのか。生徒たちは首をかしげる。
「ゴジラの目的は、……三式機龍を取り戻すことだったんです」
「取り戻す?先生、機龍は人が作ったロボットじゃ?」
「……三式機龍は格闘戦も重視するため、1954年、死んだゴジラの骨をそのまま利用して作られています。ゴジラは自身の親の遺骨を取り戻しに来ただけなんです」
「えっ……」
誰もが言葉を失った。ゴジラの骨が使われているということがどういうことか頭に入らず、生徒たちはただ唖然とすることしかできなかった。
「まあ、いきなりのことで混乱してるみたいですが、『キーンコーンカーンコーン』あら、チャイムが鳴ってしまいましたね。これについては次回の怪獣学にて説明します」
そして挨拶の後、燈が出ていく。生徒たちはそのまま周りのことおしゃべりを始める中、航は手元に開いていた教科書に目を向ける。
「ゴジラ、か……」
そのつぶやきは誰にも聞こえない。航は教科書を閉じ、小さくため息を吐いた
艦これイベでE-2-2ラスダンが終わらず、結果こっちを進めることにした妖刀です。硬過ぎでしょあの姫たち。どうしろっていうんだ。(初甲挑戦並感)
今回の怪獣学はリメイク前では書かれてなかった2代目ゴジラこと釈ゴジの解説となります。釈ゴジ、あの子はとてもかわいそうな子と思うんですよね。親が殺された挙句、その親の骨を使ったロボットに殺されかけるんだから……。
ただそんな釈ゴジですが、自分はとても大好きです。とてもカッコイイですし。
ちなみにIS学園の立地ですが、バリバリの神奈川県横浜市です。理由は多々あれど個々の方がいろいろと都合がいいと判断し、この場所にしました。(リメイク前もそうだった気がするけど気にしない)そして八景島、彼は犠牲になったのだ……。