IS~人と怪獣の境界線~   作:妖刀

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クラス対抗戦

それから時は経ち、クラス対抗戦当日。アリーナの観客席は熱気に包まれており、今か今かと試合が始まらんと待っている。

そんな中、最初の試合である1組対2組に出る一夏は、自分の出番である試合に向けて休憩室でストレッチを行っており、応援のためか箒とセシリアも同じ部屋にいた。

そんな中一夏は近くにあったモニターに顔を向け、今の状況を見る。

 

「それにしてもホント観客多いな。満員御礼ってやつか?」

 

「世界に2人しかいない男性搭乗者のうちの片割れの試合。そうとなれば誰もが見たいものですわ。そして入れなかった人たちは校舎内のモニターで観戦するんだとか」

 

「うぇ、そんなに……プレッシャーかかるなぁ……」

 

「情けないぞ一夏。そんなことで怖気づいている!」

 

いきなり箒に背中を思いっきり叩かれ一瞬顔をゆがめる一夏。

 

「しっかりしろ!胸を張って堂々と行け!」

 

「そうですわ。あれから一夏さんは強くなられました。その成果をしっかりと発揮してやるのです」

 

「箒、セシリア……」

 

一夏の緊張が解けたことに微笑みを浮かべる2人。だがこの時、セシリアは航がいないことが不思議に思ったのか、周りを見渡す。箒もずっと不思議に思っていたのか、少し首をかしげていた。

 

「そういえば航さんは?」

 

「そういえばいないな。あやつなら何か言いそうな気がしたが」

 

「航?あいつは楯無さんと一緒に見るから観戦席にさっさと行っちまった」

 

「全く……一声ぐらいかけていってもよかろうに……」

 

箒がため息を吐くが、一夏はそんなのを気にしてる様子もなく、むしろ小さく笑みを浮かべている。

 

「いいよ。あいつから“勝ってこい”って言われてるしな」

 

「……いいのかそれで?」

 

「ああ、問題ない」

 

そんな少ない言葉でいいのかと疑問に思った箒だが、一夏は分かってるのか小さく笑みを浮かべているため、箒はこれ以上何も言えずため息を吐く。

その時、不意に時計を見た箒は試合開始の時間がすぐそこまで迫ってることに気付く。

 

「一夏、こうやってのんびりしてるが大丈夫なのか?」

 

「ん?あぁ、そうだな。箒、セシリア、行ってくるよ」

 

「行ってこい!」

 

「健闘を祈りますわ」

 

「ああ、勝ってくる」

 

ピットに向かう時に高くつきあげた拳。それを見た箒は熱い息を漏らし、セシリアは楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはアリーナ中央。そこにはお互いISを纏った一夏と鈴がおり、お互いすでに得物を展開したまま向き合っていた。

 

「待たせたな、鈴」

 

「逃げないで来たのね。今なら謝ればまだ優しくしてあげるわ」

 

「手加減何かいらねえよ。全力で来い」

 

「……そう。ならアンタをボコボコにしてあげるわ」

 

ギンと一夏を睨みつける鈴。その迫力に一瞬押されそうになる一夏だが、こちらも真剣な顔で雪片弐型を構える。鈴もそれに応えるように右手に持ってた青龍刀を両手で構え、互い戦う姿勢になったのを確認したのかアナウンサーの声が響く。

 

『それでは両者…試合開始!』

 

「はあぁぁ!」

 

アナウンスと共に鈴は青龍刀を大きく振り構え、一夏目掛けて全速力で突っ込む。それに驚きながらも反応した一夏も雪片弐型で受け構え、お互いの刃がぶつかり合って火花を散らす。

 

「アンタの試合見たわよ。たしかに零落白夜は凶悪だけど、初心者の付け焼刃でこの私に勝とうなんて1000年速いわよ!」

 

だが力技で無理矢理押され、一夏はそのまま吹き飛ばされるがすぐに姿勢を整える。だがその間にも鈴が迫り、青龍刀を振り下ろす。それを受ける一夏だが、完全に上から押さえつけられてしまい、身動きを取ることができない。

 

「ぐっ……!」

 

「どうしたの一夏!あの威勢は最初だけなのかしら!」

 

「まだ、だぁ!」

 

「なっ……きゃあ!」

 

一夏は雪片を格納し、それによってバランスを崩した鈴の手を取り、そのまま背を彼女に向け勢いよく投げようとする。

 

「させな……きゃあああ!?」

 

「おおお!?うおおお!」

 

この時、鈴がむりやり解こうとしたためか、一夏がバランスを崩し、そのまま2人そろって地面に向けて真っ逆さまに落っこちる。いや墜ちている途中、一夏が急加速し、一気に2人は地面に向けて叩きつけられた。

その衝撃で轟音と土煙が広がるが、その中で再び金属同士がぶつかり合う音が響く。そして土煙が晴れたとき、そこには再びお互いの得物でつばぜり合いを行っている2人の姿があった。

 

「アンタねぇ!落とす背負い投げとか初めてよ!?」

 

「航に教えてもらったからな!投げ技は投げるのではなく落とすって!」

 

「アイツぅ!何とんでもないこと教えてんのよぉ!」

 

そう叫ぶ鈴だが、その間に一夏がスラスターを全開にし、無理矢理鈴を壁側に押しやる。

 

「うっそ、私が押されてる……!?」

 

「うおぉぉおおおお!」

 

そのまま壁に鈴を縫い付けた一夏は、そのまま零落白夜を発動し、じりじりと鈴を追い詰めた。

 

 

 

 

 

ここは観戦席。そこで航は周りからの視線に、居心地が悪そうにしていた。彼の隣に座っている楯無もジト目で航を見つめており、必死に目線を逸らそうとする航。

 

「航……?」

 

「まあ、たしかに言ったし教えたけどさ。俺が機龍に乗ったらあんな風の投げになるけどさ。だからって早速やるか……?」

 

それを聞くや楯無はため息を吐く。たしかに航が教えてるのは見てたが、正直アレはどうかと彼女自身も思っていた。だがしかし、それを一夏がやってしまったのだから仕方ない。

なおそれを聞いていた箒とセシリアも呆れているが、それよりも一夏が押していることを喜んでいた。

 

「いけ、一夏!そこだ!」

 

「箒さん、まだ油断できませんわ。向こうはまだ手数を残しています」

 

「それはこちらとて同じことだ!だが近接は先に優位をいかに取るかが大事なのは知ってるだろ!」

 

「ええ、それはもちろん知っていますわ」

 

興奮してる箒とまだ冷静なセシリア。だがしかし、この後箒が悲鳴を上げるのはすぐであった。

 

 

 

 

 

「なめんじゃ、無いわよっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

密着されていたため、鈴は一夏の腹を蹴り飛ばすや、そのまま上昇して距離を取る。肩で息をする鈴だが、その顔はとても嬉しそうなのか口角が上がっている。

 

「やってくれたわね一夏……。初心者だからすこし優しくしてあげてたけど、もう止めるわ」

 

そう言うと、彼女は左手にもう1本青龍刀を展開し、そのまま柄頭を連結させてバトンの様に回す。

 

「じゃあ一夏、まだ付き合ってもらうわよ!」

 

「ああ付き合ってやるよ、いくらでもな!」

 

「っ……!いくわよ!」

 

一夏の付き合うという言葉に一瞬頬を染める鈴だが、それを振り払うように一夏めがけて突っ込んで、そのまま青龍刀を振り下ろす。一夏はそれを躱して雪片で切り上げようとするが、

すでに連結解除されたもう1本の青龍刀が一夏の側頭部目掛けて振られており、それに気づいた一夏は急いで鈴から距離を取る。

 

「逃がさないわよ!」

 

その時、甲龍の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)の装甲がスライドしたと思った瞬間だった。一夏は何もない空間からいきなり殴られたかのような衝撃を味わい、そのまま吹き飛ばされる。

 

「なぁ……!?」

 

“航から聞いてたはず”なのに、いったい何が起きたのか分からない。

だが鈴はそのまま追撃してきたため苦し紛れに雪片を振う。だが鈴はその場でバク転して躱し、そして青龍刀で一夏を斬りつけた。

 

「く、そ……!あれが衝撃砲ってやつか……!」」

 

「あら、知ってたのね。どう?甲龍の第三世代兵装“龍砲”は。見えない弾で狙われるのは恐ろしいでしょ」

 

完全に防戦一方の一夏に対し、鈴は獣の様な笑みを浮かべながら青龍刀を振う。そして逃げようものなら龍砲で動きを鈍らせ、再び追撃に入る。

一夏は必死にその2本の青龍刀を捌き続けていた。だがしかし、鈴はそれをあざ笑うかの如くその上を行こうとする。そして二刀流を駆使して一夏の雪片を弾くと、そのまま青龍刀を両手で持つや、一気に一夏の腹目掛けて振り下ろした。

 

「がふ……!?」

 

モロに食らった一夏はそのまま流星のごとく落ち、地面に叩きつけられそのまま仰向けで地に伏す。その傍に鈴は降りたち、勝ち誇ったような顔で一夏を見下していた。

 

「ねえ知ってる?雪片じゃなくても攻撃力の高いISなら、絶対防御貫いて本体に直接攻撃を与えられるのよ。つまりね……」

 

高らかに掲げ挙げられる青龍刀。あとはシールドエネルギーがなくなるま刻み続ければ、鈴の勝利が確定する。ここまで追い詰められ、観客は誰もが万事休すかと思っていた。

だがしかし、この時一夏が小さく笑みを浮かべたため、鈴はピクリと止まる。

 

「ああ、知ってるよ……それぐらいな!」

 

「えっ、きゃああ!?」

 

鈴はいきなり跳ね上がった一夏の足に驚き、そのまま顎を蹴りあげられてしまい、一瞬意識が飛ばされる。

一夏はこの時の反動でそのまま起き上がり、同時に零落白夜を発動させた雪片弐型で鈴を斬りつける。

すぐに我に返った鈴は急いで離れたためかすめた程度で済んだが、それを逃がさんと一夏は一瞬で距離を詰め、そのまま右の龍砲を真っ二つに斬り裂く。それによって鈴は驚きの顔を浮かべた。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)!?初心者のあんたが!?」

 

「俺はいつまでも初心者じゃないられないんだよ!」

 

舞台は再び上空へ移り、再びお互いが斬り結び合う。だがしかし、先ほど零落白夜を食らったおかげか、鈴の動きが少し消極的にも見える。

 

「うおぉぉおおお!」

 

「くっ……!」

 

おかげで先ほどとは違う、一夏が優勢となって動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「航……ホントにいろいろ教えたのね」

 

「一夏、こういう体術……武術の飲み込みすごい速いからな。前に武道場で軽く組手したしたときにちょこっと教えた。ただISであんな風に出すとは思わなかったけど」

 

クックックと笑う航。楯無は呆れながらもあの技を使う一夏に軽く感心していた。

 

「でも大丈夫なの?あれ、家の(わざ)でしょ?」

 

「一夏が使うアレは技であって業じゃない。……というか楯無も実際あれぐらい簡単にできるだろ。裏含めてさ」

 

チラッと彼女を見ると、ニコッと笑みを返されたため、航も小さく笑う。

だが航は少し顔をしかめると顎に手を当て首をかしげる。

 

「それにしても……いきなり顎を狙うとか一夏も中々容赦ないな。まあ、喉狙わないだけまだ優しいが」

 

「航……ここでそんな恐ろしいこと言わないでよ」

 

「ん?あぁ、そうだったな」

 

周りをチラッと見るや、彼に対して若干ドン引きしてる生徒が数人いたため、流石に自重しておく航。そして再び視線をアリーナに戻すと、一夏が鈴目掛けて雪片弐型を振り下ろしていた。

 

 

 

 

 

「もらったぁ!」

 

「きゃああああ!」

 

斬りつけられ、鈴は悲鳴を上げる。だが彼女は無理矢理一夏を斬りつけて隙を作ると、そのまま距離を取る。

 

「はぁ……はぁ……」

 

戦いの中、一夏が少しずつ成長してきている。それをこの手で実感してる鈴は、彼に対して少し恐怖を感じていた。

 

(なんでここまで強くなってきてるのよ……!私だって1年で代表候補生になるまで頑張ったのに、一夏はそれを越え……認めない、認めないわ!)

 

鈴の中で黒い感情が駆け巡る。自分より少ない努力で自分を越えられてたまるかと思い、青龍刀を握る力が強くなる。

だが龍砲は片方は破壊され、もう片方も斬りつけられたおかげで出力が下がっており、今となってはまともに使える武器が青龍刀だけだ。

まだ射撃武器がやられただけだが、零落白夜によってシールドエネルギーが大幅に削られており、正直もう1発零落白夜をくらえば確実に負けるほどにまで追い詰められていた。

 

「鈴、決めさせてもらうぜ」

 

「ええ、来なさい一夏」

 

一夏は零落白夜を発動させ、雪片弐型を大きく振り構えて瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動させ、鈴目掛けて突っ込んだ。

だが鈴は見逃さなかった。一夏が先ほど手の平を握ったり放したりしてるのを。明らかに浮ついてる。そしてそれを裏付けるように大振りになって突っ込んできたのだ。

 

「もらったわ!」

 

「やべっ……!?」

 

その動きに合わせたカウンター。止まろうとしたがもう遅く、一夏はそのまま青龍刀に直撃する……と思われていた。

 

 

ドォォォン!

 

 

 

アリーナのシールドを貫く灼熱の光。そして響き渡る轟音。それによって鈴は反射的に動き、結局一夏はそのまま素通りし、急いで止まるや轟音のした方を向く。

 

「な、何なんだよいったい!?」

 

「い、一夏あれ……!」

 

鈴が指さした方向。先ほど降り注いだ光によってできた土煙の中、ハイパーセンサーがナニカを捉えていた。その中から覗く赤い双眸。それを見た2人は一瞬びくりと震えるも、お互いに得物を構える。

 

「何よ……侵入者?」

 

「何者だよお前は……」

 

お互いの問いかけにも何も答えず、侵入者は煙の中でじっとしていた。いったい何者なのか。そう思った時、ユラリと煙の中でナニカが動いた。その動いた先、何やら光が集まり始め……。

 

「……っ!?鈴!逃げろ!」

 

「えっ、きゃあ!?」

 

一夏が鈴の背中を押して飛ばした瞬間、2人の間に先ほどと同じ閃光が走り、そのまま壁にあたるや大爆発を起こす。

あまりの威力に驚愕の表情を浮かべる2人。そして煙を破り現れる大きく長い腕。その先にはチェーンソー複数のチェーンソーが付いており、時折不気味な金属のこすれる音が響く。

その後、土煙が去って現れたその姿もまた異形だった。

全身は黒く、大きさは3mほどだが、先ほどの太く長い腕に普通のISに近い脚部、そして胴と一つになったかのような頭部には複数の赤く光るカメラアイが備え付けられており、時折ギョロギョロと周りを見渡すかのように動いている。

それはISと呼ぶには禍々しく、とても異様な姿となっていた。

 

「何よこれ……」

 

あまりの不気味さに息をのむ鈴。

 

「おい、お前何者だ!」

 

一夏はその侵入者、人の形が見える部分に向けて叫ぶ。だがそれに応える様に返ってきたのは、複数のカメラアイの不規則な点灯だった。

そのカメラアイのうちの1つ。それが観戦席の方を見たとき、その目がもう1人の男子生徒の姿を捉える。その目はアリーナの観戦席がシャッターで閉じられるまで見続けていた。

 

 

 

 

 

 

──目標発見──

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