IS~人と怪獣の境界線~   作:妖刀

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クラス対抗戦を行っていた一夏と鈴。そんな彼らの前に現れた謎の機体。それはいったい何者なのか。そして何が目的なのか。一夏と鈴の運命は!




では本編どうぞ


襲来 上

 ソレが現れたとき、誰もがわけがわからないと固まっていた。だがしかし、それを現実に戻すかのようにアリーナと観戦席を遮断するかのように展開される防護シャッター。それが発動したことによってあたり一帯が暗くなり、それと同時に赤色灯が観戦席を照らした。

 

「ねえ、いったい何が起きたの!?」

 

「分かんないよ!これ、どういうこと!?」

 

 あちこちで悲鳴が上がり、文字通り阿鼻叫喚となる観戦席にいる生徒たち。次の瞬間、大きな音と衝撃が観戦席を揺らし、それによって多数の生徒たちがこけたりすることで、悲鳴やついには泣き声も響き渡り、それによって不安が伝播していく。

 その中航と楯無は先ほどアリーナの中に入り込んできたモノについて話し合っていた。

 

「航、見えた?」

 

「ああ、一瞬だけだが」

 

「アレ、侵入者よね」

 

「間違ってなければ恐らくな」

 

「航、私アレの鎮圧に向かうわ」

 

 グッと扇子を握りしめる楯無。先ほどまでしてた楽しそうな顔は消え真剣な顔、“仕事”をするときの顔になってるのを見るや、航もスゥと眼つきが鋭いものになる。

 

「“楯無様”、それなら私も──」

 

「航はここに残って。もしアレがここを突き破って来たらそれを止められるのは専用機持ちだけよ」

 

「……わかりました」

 

「あとちょっと待ってね……『簪ちゃん、聞こえる?』」

 

 楯無は片手を耳に当ててそう言った。恐らく黙秘回線(プライベート・チャンネル)を用いて妹に呼びかけているのだろう。そして何度か相槌を打った後、通信を切って再び航の方を向いた。

 

「航、簪ちゃんはここから丁度真反対のところにいるわ。そこで2人でセンサーで監視、観客がい無くなり次第、場合によってはここから無理やり突入して鎮圧するわよ」

 

「……彼女の機体はまだ未完成だったのでは?」

 

「婆羅陀魏がやってのけたわ」

 

「……そうですか。失礼いたしました」

 

「別にいまはそのことはいいわ。ただ今は『聞こえるか、更識』はい、織斑先生」

 

 その時、楯無の元に千冬から通信が入る。だがこれは航にも聞こえており、航も黙ってそれに耳を傾けた。

 

「織斑先生、現状を教えてください」

 

『ああ、現在アリーナ内に所属不明機が1機侵入。そして織斑と凰が応戦中だ。観戦席での現状はどうなっている』

 

「はい、現在いきなりのシャッターなどにより中はパニック状態となっており、それに全出入り口のゲートが閉ざされています。そちらで操作は出来ますか?」

 

『すでに試しているが何者かに寄るハッキングによって操作がこちらからはできない。場合によっては専用機で扉を破壊、そして生徒たちに避難誘導を頼む』

 

「先生、あの所属不明機はどうするのですか?正直織斑君と凰さんには荷が重いかと」

 

『教員を集めた鎮圧部隊を編制中だ。それが終わり次第即突入させる』

 

「わかりました。ではこちらも避難誘導が終わり次第、鎮圧に向かいます」

 

『ああ、頼んだぞ』

 

 通信が途切れ、そのまま再び航の方を向く楯無。

 

「航、今の通信は専用機持ち全員に聞こえてるはずよ。だから場合によっては扉を壊してでも避難させて」

 

「かしこまりました」

 

 そして航は別の扉の方へと向かい、楯無も同じく近くの扉を目指し始めた。

 

 

 

 

 

 

 ここは管制室。そこには千冬と真耶がおり、今現状を整理しながらあちこちに指示を飛ばしていた。

 

「よし、更識が動けば少しは観客の方も落ち着くはずだ。山田先生、現在アリーナ内はどうなっています」

 

「はい、すでに織斑君と凰さんが所属不明機と戦闘開始していますが、今のところは2人とも目立った損傷はないようです。ただ、お互い先ほどの試合でシールドエネルギーを消費していますから、あまり長い戦闘はできないかと」

 

「鎮圧班はどうなっている」

 

「そちらも現在ISを受け取り、ピット入り口の方に……織斑先生、ピットのゲートが閉ざされてるとの報告が」

 

「構わん。壊してでも突入するように言え」

 

「は、はい!」

 

 これで一夏たちの負担も減るはずと思っている千冬だが、アリーナの遮断シールドがレベル4、それにアリーナに通じる扉も全部閉ざされているため、最短の扉破壊による直進も正直どれほどの時間がかかるのか……。千冬は小さく歯噛みする。

 観戦席の方では楯無たちも避難誘導を始めているが、いつそちらに攻撃が向くか分からないため、そちらの方も不安だ。

 

「織斑先生、焦る気持ちは分かりますが今は彼らを信じましょう」

 

「ああ、そうだな。山田先生、ここはコーヒーでも飲んで落ち着くとしよう」

 

 それで飲むも、味が分からないほど千冬は焦っている。実際こんな事件も初めてだし、その指揮をこのように行うのも経験が少ないため、千冬はとりあえず顔だけは平常を保っていた。

 だがそんな状態でも状況は変化していく。千冬はただ、こう指示することしかできない自分を恨んでいた。

 

 

 

 

 

「なんなのよコイツ!」

 

「くそ、仕掛けにくい!」

 

 アリーナ内、一夏と鈴は所属不明機もとい敵ISと交戦状態になっていた。先ほどふたたび自分たちにビームを放ってきたため、躱すのを皮切りに2人はお互い得物を構えてそのまま急接近、そしてお互いに得物を振り下ろす。

 

「速い!」

 

「だけど!」

 

 それに反応して下がる敵IS、即座に鈴は追いかけ、そのまま追い打ちを掛ける。遅れながらも一夏も追い打ちに入る。

 だがしかし、両腕のチェーンソーでそれを防ぎ、逆に歯がまだ動いてないチェーンソーで殴りかかる。鈴はそれをどうにか受け流しているが、腕の長さを見誤った一夏は反応が遅れてしまう。

 

「しまっ……!」

 

 そのまま勢いよく押される一夏。だが雪片を盾にしてたため彼自身にダメージは入らず、どうにか防いだと思い込んでいた。

 その時だ。チェーンソーの束が大きく開くと、それはまるで指の様に動き、そのまま雪片弐型を掴んだのだ。

 

「なっ……!」

 

「一夏!剣を格納して!」

 

「っ!?」

 

 格納すると同時にチェーンソーが一斉可動する。もしこれで少しでも遅れていたら、雪片弐型は巻き込まれて粉々に砕け散ってただろう。一夏は一気に冷や汗を流すが、距離を取って再び雪片二型を展開する。

 

「あっぶねぇ……くそ、これじゃ下手に攻撃しても防がれちまう。あんなのに巻き込まれたらただじゃ済まねえぞ」

 

「全く、アンタが龍砲を壊さなければまだ牽制できたのに……!」

 

「そう言っても仕方ないだろあの時は試合だったんだから!」

 

 だが言い争っても埒が明かない。お互いの武器は手に持ってる己の剣だけ。お互い目が会いコクリと頷くや、鈴が真正面、一夏はサイドに回る。

 

「はぁ!」

 

 鈴は2本の青龍刀の柄頭を連結し、そのまま回転させて敵IS目掛けて投げる。だがそれをひらりと躱し、指を開いて無防備な鈴目掛けてチェーンソーの付いた腕を伸ばす。そのまま掴むかと思われた時、敵ISは急に横に逃げ出した。それと同時にその後ろから先ほど投げた青龍刀が戻ってきて、鈴はそれを掴んで再び二刀流にする。

 

「一夏、そっちに!」

 

「ああ、分かってる!」

 

 一夏は零落白夜を起動し、そのまま逃げる相手と速度を合わせて雪片で薙ぐ。

 

「くそ、当たらねえ!」

 

 雪片は空しく空を斬り、お返しと言わんばかりに敵ISは腕を伸ばして指を閉じたまま一夏を殴る。それにより吹き飛ばされた一夏が見たのは、自分目掛けて手からビームを放とうとする敵ISの姿であった。

 鈴は急いで妨害しようとするもすでに遅く、一夏めがけてビームは放たれる。

 

「一夏ぁぁぁ!」

 

「うおぉぉぉ!」

 

 一夏は何を思ったのか、零落白夜を発動。そのままビームが当たろうとする直前に振った瞬間、ビームは霧散し、一夏は何とか距離をとり、鈴と合流する。

 

「アンタ、何無茶してんのよ!」

 

「お、おう、すまな……あぶなっ!?」

 

 2人の間をビームが通過する。急いで離れた2人は再び敵ISを睨みつけるが、それを歯牙にかけずダラリと腕を下ろし、無防備な姿をさらけ出した。

 

「何なのよ、その挑発むかつくわね……!」

 

「くそ、あのチェーンソー硬過ぎだろ。まじで刃が通らねえ……」

 

 明らかに手数が足りない。このままじゃジリ貧と分かってる2人だが、だからと言ってすぐに妙案が思いつくわけでもなく、お互いににらみ合い状態になってしまう。

 

「なあ鈴。なんでアイツ、俺らがこうやって話してる時突っ込んでこないんだ……?」

 

「アンタ、いきなり何言ってんのよ」

 

 いきなり聞かれたためか、鈴は呆れた顔で一夏の方を向く。

 

「だってよ、さっきからアイツ、何か挙動がおかしいんだ。それにこうやって俺らが話してるとさ、まるでそれを聞いてるかのような感じでさ」

 

「だからって……そうね。たしかにこうやって話してるけど、明らかにこっちは意識散漫になるのに仕掛けてこないわ」

 

「……あれ、本当に人入ってるのか?」

 

「もしそうだとしたらどうするのよ」

 

「零落白夜を本気で使える」

 

 チラッと奴の方を見るが、チェーンソーがたまに動く程度で仕掛けてくる様子はない。あまりにも不気味だが、今はそれをチャンスとわかるやお互いに目配せをし、コクリと頷く。

 

「行くわよ!」

 

「おう!」

 

 そして再び仕掛ける2人。それに反応するように敵ISも動き出し、再び近接戦が行われる。先ほどより激しく攻撃する2人だが、的確に相手は対応してくる。そう、まるで機械のように。

 その時だ。一夏を払いのけた敵ISは鈴の元へと向かい、そのまま右腕のチェーンソーで鈴に喰いかかろうと大きく開く。

 

「一夏っ!」

 

「応えろ、白式ぃ!」

 

 次の瞬間、鈴と所属不明機の間に割り込んだ一夏は零落白夜が発動し、伸びた光の刀身が敵ISの右腕を銃口から貫く。そして一夏に触れようとしたチェーンソーも止まり、それと同時に右腕数か所から小爆発が起きる。だがとっさに左腕で一夏を殴り飛ばし、敵ISは距離を取った。

 

「よし、一矢報いてやったぜ……!」

 

 吹き飛ばされた一夏だが、すぐに体勢を立て直して再び雪片を構える。その口元からは笑みがこぼれており、逆に敵ISは壊された右腕を庇うようにして左腕を突き出し、そこからビームを連射する。

 明らかに焦っているように見え、そのまま畳みかける一夏たち。敵ISに徐々に攻撃が当たるようになってきており、このままなら倒せる。そう思っていた。

 

「これでトドメだ!」

 

 一夏は零落白夜を発動させ、敵IS目掛けて突っ込む。

 その時だ。チェーンソーを束ねたと思った瞬間、急に腕が高速回転し始めるや、そのまま敵ISは一夏めがけて突っ込んできたのだ。そのまま一夏がチェーンソーに巻き込まれるかと思ったその時。鈴が一夏にぶつかり、そのまま跳ね飛ばした。

 

「鈴!?」

 

「きゃああぁぁ!!」

 

 チェーンソーに巻き込まれ、跳ね上げられた鈴はそのまま地面に叩きつけられ、そして甲龍は解除されてぐったりとしてしまう。

 

「お前、お前だけはぁああ!」

 

 一夏は怒りに飲まれてたのかもしれない。ただ殺意だけを乗せた刃は敵IS切り裂き、そのまま相手の左腕が宙を舞い、血であなくオイルが噴き出す。

 

「おらぁあああ!」

 

 一歩踏み出して右肩から胴に向けて袈裟斬り。それにより敵IS……無人機のカメラアイの光が消え、そのまま仰向けに倒れる。

 一夏はそれを見届けるや、急いで鈴の元へと向かった。

 

「鈴、大丈夫か!?」

 

「一夏……倒した?」

 

「ああ、やったよ。俺たちの勝ちだ」

 

「そう……一夏、後ろ!」

 

「えっ……?」

 

 振り向くと、そこには片腕を失いながらも一夏に攻撃を加えようとする無人機の姿だった。まだ動けたのか。半壊した右腕を振り上げ、そのまま攻撃しようとする無人機。

 一夏は鈴を抱きかかえ、そのまま逃げようとしたが次の瞬間、無人機が横にいきなり吹き飛ばされた。

 

「え?」

 

「え……?」

 

 いきなり何が起きたのかわからず、ポカンとする2人。その時、ハイパーセンサーがとある反応を拾った。

 

「間に合い、ました……!」

 

 それは日本の量産機である打鉄2機とフランスの量産機であるラファール・リヴァイブ1機に乗った教員たち3人で、打鉄の右腕に装備された弓状の巨大なパイルバンカー……の杭を射出し、それで無人機を吹き飛ばしたのだろう。

 そしてラファール・リヴァイブに乗った教員が彼らの元へと寄ってきた。

 

「織斑君、凰さん、大丈夫ですか?」

 

「は、はい……え、えっと……」

 

「二人とも、よく耐えてくれました。後は私たちに任せてください」

 

 そして再び凛とした顔を浮かべるや、そのまま敵ISの元へと向かう。ライフルで牽制してくる教員たちに対し、腕部のビーム砲を向けて単発のビームを放つがひらりと躱され、そのまま1人の教員が敵IS目掛けて一気に近づく。

 それに反応した敵ISは右腕を振うが、教員はそれも躱し、自身の右腕に69口径パイルバンカー“灰色の鱗殻(グレー・スケール)”を展開。

 

「援護よろしく」

 

「任せて!」

 

 打鉄に乗ってた教員たちの腕部からワイヤーらしきものが放たれるや、そのまま無人機の右腕と胴に絡み、動きを制限する。それで逃れようとする無人機だが、対巨大生物用に作られた頑丈なワイヤーの前ではびくともせず、胸部に杭を押し当てられ、引き金を引かれた。

 2発3発と何度も放たれた一撃により、次第にぐったりとする無人機。そして全発撃ち終え、無人機がうつ伏せに倒れるとライフルを展開して頭に突き付けた。

 

「それ以上の抵抗は無駄です。そのまま投降しなさい」

 

 機械の人形がいうこと聞くかわからない。そのためか安全装置を解除し、いつでも引き金を引けるようにする教員。

 

「終わった……?」

 

「学園の教師ってとても強いのね……」

 

 これらを見ていた一夏と鈴はあっけないながらも、この騒動が落ち着いたことに安堵する。

 あとは教員たちが処理するだろうと思い、完全に脱力したときだ。ハイパーセンサーがはるか上空、そこに対していきなりロックオンするや、警告音(アラート)を鳴らす。

 それは管制塔の方にも届き、千冬や真耶が驚きの顔を上げた。

 

「っ!?上空、新たなIS反応!」

 

 それは上空からミサイルの雨を降らしながら現れた。四方八方にばらまかれたミサイルはランダムに起爆し、その爆圧がアリーナのを大きく揺らす。

 

『きゃあああ!!!???』

 

 いきなりの攻撃に教員たちが悲鳴を上げ、同時に一夏たちも爆風で吹き飛ばされる。いったい何者が攻撃したのか全員が見上げると、そこにヤツはいた。

 それはある機体に似通っていたが、般若を思わせる顔つき。胴体はずんぐりと丸みを帯びており、たくさん打たれているリベットはまるで、旧世紀の兵器と思わせる風貌だ。

 二の腕部の装甲にはMGと書かれており、手首を回転させながらその黄色いカメラアイはあたり一帯見渡している。

 時折虹色に光る銀色の装甲が眩しいのか、一夏は少し目を細めてソイツを見ている。そしてハイパーセンサーがその機体を明確に捉えたとき、全員が次第に驚いた顔になっていく。

 そう、何より普通のISより大きく、最初の所属不明機より大きな身体なのだ。ただ一夏はその姿を見たとき、とても見慣れたその機体の名を呟く。

 

「機龍……?」

 

「キシェァ―!」

 

 機龍に似て似つかわぬソイツは機械的な咆哮を上げる。そして指、膝、足の指からなる多数のミサイルを一夏たち目掛けて放った。




次回「目覚め」




では感想等待ってます。
※5/10、さっそく一部修正行いました。
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