(やばい……つらい……!)
ここはIS学園1年1組の教室。その教室の一番前の中央に織斑一夏は座っていた。彼の周りにいるのは女子、女子、女子。そんな彼女たちから好機や奇異の視線を浴び、そのプレッシャーからかガチガチに固まってしまっていたのだ。
そして誰か助けになる人はいないかと周りを見渡すと、見覚えのある長い髪とリボンを付けた1人の女子と目が合った。
「箒……?」
だが女子は一夏と目が合うや、少し挙動不審になるやそのままそっぽを向く。さすがに人違いかと諦め、一夏は不意に隣の誰も座っていない席を見た。女子の数と自分の数を合わせても席1つだけ余っており、いったい誰が来るのか……そう思ってたときだった。
プシュンと教室の扉の開く音がし、そちらに目を向けるとそこにいたのはスカートではなく、ズボンを履いた自分と同じ男子生徒がいたのだ。
「え、もう一人男子……!?」
「うそ……!?」
「そんな情報あった!?」
一気に教室はざわめきだすが、男子はジロッとそれを一瞥した後、そのまま一夏の前を通り過ぎて彼の隣に空いていた席に着く。
「わた、る……?」
一夏は彼に見覚えがあった。いや、見覚えとかではなく確信があった。だが人違いだったらどうしようと一夏はどう挨拶しようか悩んでいた。
「……久しぶりだな、一夏」
その時彼から話しかけられ、一夏は驚いた顔で彼の方を向く。
「航、なのか……?」
「ああ、そうだ。小学3年から中学の途中まで一緒だった篠栗航さ」
「……なら問題だ。99年、現れた2体目のゴジラはどこに上陸した?」
「房総半島だが?それで千葉県館山市を中心に破壊した、と言った方が正しいか」
それを聞いたとき、一夏は心底からとても嬉しそうな笑みを浮かべ、席を立つやそのまま彼を抱きしめ、背中をバンバンと叩く。
「航!久しぶりだな!元気にしてたか!」
「ちょ、一夏、いきなりやめろそれ!」
それに気づいた一夏はさっさと離れ、少しばつの悪そうな顔をする。
「あ、あぁ、やりすぎた。すまん」
「別にいいさ。まあ、とりあえず今は元気にしているよ。一夏は?」
「俺?俺はずっと元気にしてたさ。ただ鈴も引っ越して少し寂しかったなとは思ってたけど」
「え、鈴引っ越したのか?」
「ああ、中国に帰った」
「まじかー……で、一夏、後ろからジッとこっちを見てる女子でさ……」
「あれ、箒だよな……?」
「たぶん箒」
チラッと後ろを向くと、そこには先ほどの女子がじーっとこちらを見ているのだ。まあそんな彼女は入学式から教室に戻ると、一夏がいることを知るやすごい焦って壁に顔をぶつけていたが。
なお男子2人は入学式に参加していない。理由は周りの混乱を防ぐとともに、嫌男派の女子にいちゃもんを付けられないようにするための措置でもある。
だが一夏は女子たちが入学式に行ってる間に教室に入たため周りからの視線にさらされていたのだ。まあそんな航も現在同時に色んな視線にさらされており、とりあえず一夏と会話するという選択肢でそれから逃げていた。
だがしかし、余鈴が鳴ったため生徒たちは急いで自分の席に戻る。男2人もそれに習って席に戻り、後ろの視線を我慢しながらも待つ。
そして1人の背の低い緑色の髪の女性が入って来た。
「はい、皆さん揃ってますねー。今から
彼女の名前は山田真耶。このクラスの副担任を担当する教員だが、身長と顔の雰囲気から生徒に見えないこともない。そんな彼女は自己紹介を行っており、周りはちゃんと聞いている、様に見えていた。
「それでは皆さんこれから1年よろしくお願いしますね」
シンとした教室。それによって真耶が涙目になってしまうが、そのままどうにか自己紹介するように言ったため、そのまま自己紹介が始まった。そのまま順調に進んでいってたが、一夏が緊張してしまい、そしてあまりにも短い自己紹介に周りがずっこけてしまうという珍事が起きたのだ。航もさすがにこれには苦笑いを浮かべており、一夏もやっちまったと苦い顔をしている。
その時だ。パァンといい音が響くと同時に、一夏は頭に強い衝撃が入って痛みで頭を抱えていた。
「でっ、千冬姉!?」
一夏が顔を上げたとき見たのは、黒のスーツに黒髪の女性、自分の姉である織斑理冬の姿だったのだ。だが千冬は「織斑先生だ」と言って一夏の頭を出席簿で叩き、再び一夏は頭を抱える。
「きゃー!千冬様よー!」
「私千冬様に会いたくて北海道から来ました!」
毎度のことか呆れたようにため息を吐いて小言を言う千冬。だがそれでも女子たちは黄色い悲鳴を上げるのを止めない。
「静かにしろ!……篠栗、次はお前が自己紹介をしろ」
「え、自分ですか……?」
「面倒ごとはさっさと済ませた方がいい。だから次はお前だ」
「は、はぁ……」
いきなりの指名に航はちょっと困惑しながらもそのまま教卓に向かう。身長は170センチ半ば、瞳の色は黒く濁った金色で、眼つきは少し鋭いためちょっと怖さが出ており、初見だと少し遠慮してしまう雰囲気がある。髪の色は黒で少しボサッとしてるが短めに切られていた。
体つきは割と鍛えてるのか少しがっしりしており、背筋はピンとしているためその分少し迫力があるように感じる。
「えーっと、俺は篠栗航。見てのとおり男で、テレビに出てないけど一夏同様ISを使えます。だけど全くの初心者だから周りに迷惑かけるだろうけどその時は温かく見守ってくれると、助かります。あと眼つき悪いらしいけど、気にしないでください……以上です」
そう言って航は席に戻る。
そして自身の自己紹介も終わり、そのまま順調に進む。その後の休み時間に入り、この時一夏が航の席の方に体を向けてきた。
「それにしても航がIS使えるようになってるとか思わなかったぜ。テレビでも情報なかったしさ」
「いろいろあったんだよ。というか政府もそれでいろいろ振り回されてるらしいよ、知らんけど」
「知らねえのかよ」
お互いに笑い合い、そのまま雑談に入ろうとするが……。
「ちょっといいか?」
不意に1人の女子に声かけられた。それに2人が振り向くと、そこにいたのは先ほど2人をじっと見てた女子だったのだ。
「箒、か……?」
「久しぶり、箒」
名前を呼ばれた女子、篠ノ之箒は小さく笑みを浮かべて彼らの元へと向かって一夏の机の元に体を寄せる。
「久しぶりだな……っと言いたいところだが、一夏、航みたいにもうちょっとはっきりとしてくれ」
「いやー、目をそらされて別人と思って……」
「そ、それは……」
ばつの悪そうに眼を逸らす箒。久しぶりにあえて、そしてカッコよくなってたから何て言えるはずもなく、少し頬を赤らめていた。
「だけどさ、箒がここまできれいになってるとはなぁ。だけどその髪型で箒て分かったぜ」
「き、綺麗……私が、綺麗……」
箒はそのまま顔を真っ赤にして動きが止まる。
この時航は一夏の無意識の口説きに溜息を吐く。覚えてる限りでは小学生のころからこんな感じだったため、偶にこの無意識口説きで修羅場に巻き込まれるのだ。そのため一夏に口を酸っぱくして言っても結局は何も変わらないため、こういう時は諦めるしかない。
「航、ちょっと一夏を借りてもいいか?」
「え、まじで?」
まさかの一夏を連れていく発言。それに航が少し眉をひそめた。
「その、ダメか……?」
箒の困ったような顔にこちらも困り顔が浮かんでしまう。この中で男子1人になってしまうとすごい心細い。だが箒の潤んだ瞳に頭をバリバリと掻いた後、OKと言ったことにより、一夏が箒に腕を引っ張られて教室から消えていった。
それによって女子の半数がそちらに付いていくが、残った半分はまだ航の方を見ており、とりあえず逃げ出したい気分に駆られてしまう。
「わーたんわーたん」
「ん……?え、本音?」
「もー!どうしてきづかないのさー!」
その時不意に呼ばれ、彼が見たのは袖の長い女子だった。彼女は布仏本音。航の幼なじみである。彼女は航に名を呼ばれるなり、頬を大きく膨らませていた。
両手を挙げてぷんすかっ!と怒る本音。その姿に苦笑いを浮かべた航はバッグの中に入れていたお菓子を彼女に渡す。すると本音の顔はへにゃぁと嬉しそうなものに変わっていき、周りはそれでいいのかと軽く呆れてたりする。
「そういえば本音も学園にいるって聞いてたけど、同じクラスとは思わなんだ」
「良かったね~これから1年よろしくね~」
「ああ、よろしく。……本音、IS分からないところいろいろあるからその時教えてくれない?」
「いいよ~。でもね~……ふふっ」
本音が笑みを浮かべた理由が分からず、航はただ首をかしげる。まあその後は少しだけ本音からいろいろ教えてもらっていたが余鈴が鳴り、軽く別れを言ってお互い席に着く。その後一夏たちがバタバタと入ってきて急いで席に着いた後、千冬と真耶が教室に入って来て授業が始まった。
「あ゛~頭の中がガンガンしてふわふわする……全く分かんねえ……」
授業が終わり現在休み時間。一夏は授業に全くついていけておらず、それに参考書を捨てたということもあって千冬に出席簿で頭を3度ほど叩かれたのであった。
「一夏、参考書捨てるってのは中々思いつかない行為だぞ。実際分かんねえのは同感だけど」
「だってよ、俺あんなの送られてきたのいまいち覚えてねえし……。そういえば航の、なんかへこんでたけどアレ何かぶつけたのか?」
そう、航の参考書の背表紙が大きくへこんでおり、まるで何かぶつけたかのようになっていたのだ。
「ああ、アレ?あれで兄貴から殴られた」
「うぇ……あの人から?」
一夏が思い出すは氷のように冷たい目をした男の姿だった。航はあの男がとても苦手……いや、嫌いと言ってもいいだろう。
「どこ殴られたか分からないけど大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない。本が破れるんじゃないかってひやひやしてた」
「そっち!?」
一夏が目を剥くが、航はケラケラと笑う。
「正直あれぐらいで音を上げてたら、強くなれないしな……」
「っ……」
少し寂しくも冷たい目。未だにコレはどう言葉をかければいいのか分からない一夏。そのためとりあえず話題を変えることにしたのだが……。
「そういえば―――」
「ちょっとよろしくて?」
「うぇ?」
「ん?」
その時、声かけられたため2人は声のした方を振り向く。するとそこにいたのは金色の髪を青のヘッドドレスで留めた、制服をロングスカートに改造した女子だった。パッと見から英国系なのだろうが、先ほどの少し高圧的な態度からか若干航が眉を顰める。
「あ、あぁ、何の用だ?」
「っ……何ですのその返事は?このわたくしに話しかけられたことに栄光だと思わなくて?」
一夏の返事に彼女はイラッと来てたが、冷静を装って先ほどより圧をかけながら2人に接する。
「すまんな。てかさっき自己紹介あったけど、俺ら全員覚えきれてないしさ」
航がそういうが、彼女からしたら関係ない話なのだろう。さすがに我慢の限界か、わざとらしい態度で反応した。
「知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして入試主席のこのわたくしを?」
「あ、ちょっといいか?代表候補生って何?」
一夏の質問に周りにいた生徒たちがガタタッと崩れ落ちる。セシリアも開いた口が塞がらないのか、一夏をありえない者を見たとばかりに目を見開いており、若干プルプル震えている。
「な、なな……代表候補生を知らないですって!?」
「お、おう、すまないけど知らない」
セシリアの剣幕に怯む一夏。それを聞いた航はさすがに頭を抱えており、本気でこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。
「なあ航。代表候補生って何なんだ?」
「一夏、あれだ。分かりやすく言うと国家代表になれるかもしれないエリートの1人だよ」
「へー、そりゃすげえや」
一夏の興味なさそうな返事。さすがにイラッと来たのかセシリアの顔は険しいものになっていく。
「貴方、男でISが乗れるからって調子に乗っていませんこと?それだから男性というのは嫌なのですわ。貴方も織斑先生の弟だから少しは何か知識とかあると思いましたが、常識はずれでしたわ」
「……俺にそんな期待されても困るんだが」
一瞬一夏の目が険しいものになり、航も同様にセシリアに厳しい視線を向ける。航の鋭い目つきで一瞬セシリアはたじろぐが、それでも先ほどの余裕を取り戻す。
「ですが、わたくしも優秀ですから貴方たちに優しくしてあげてもいいですわよ。ISのことであれば、まあ……泣いて頼れば教えてあげなくてもありませんわ。わたくし、ISで唯一教官を倒したエリート中のエリートなのですから」
「え、俺も倒したけど」
「えっ?」
一夏の言葉に固まるセシリア。航も一夏の事をありえない顔で見ており、当の一夏は分かってないのか首をかしげている。
「なあ、航はどうだったんだ?」
「俺?負けたけど……一夏、ホントなのか?」
航は怪訝な顔で一夏を見ており、セシリアはやっとであるが正気に戻る。
「ま、まあそういうものですわ。ですが、貴方はいったいどうやって倒したって言いますの!?」
「ま、待て。俺は倒したというか―――」
「ならいったい―――」
その時だ。チャイムが鳴り響き、強制的に試合は終了となる。セシリアは納得いかないと彼らを睨みつけるが、しぶしぶと自分の席に戻っていった。
彼らも一緒で自分の席に戻り、次の授業に使う教科書とかを出していく。
「てか一夏やオルコット、あの試合で現国家代表倒したのか……マジか」
航のつぶやきはチャイムの音と共にかき消されるのであった。
さてさて、航は試験でいったい誰に当たったのでしょうねぇ……。
では感想等待ってます!
そういえばここ最近、この作品に出る予定の機龍をアオシマの三式機龍を使って製作し始めました。まあ、リメイク前の奴だと三式機龍とほぼ変わりませんが、こちらだとチョイいろいろ変わる予定です。ではこちらの完成もお楽しみに。