あれから翌日。航は朝の日課を終え、1人で学園の食堂へと赴いていた。刀奈は生徒会長としての仕事があるということで、一緒に朝食を食べることがかなわないことを嘆きながらも、何やかんや食堂で朝食を受け取るや、どこに座るか席を探していた。その時、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「ここのご飯、とても美味しいな!」
「う、うむ、そうだな」
そこにいたのは朝食に舌鼓を打ってる一夏の姿であった。箒も合わせるように相槌をしているが、たまに見せる一夏のほわわんとした顔に胸を撃たれ、少し朝食の味を感じることができずにいたりする。
邪魔しては悪いと思い航は他の席を探すが、周りを探しても席がそこしか空いてないため、航は相席させてもらおうと一夏たちの元へ向かうが、そこに複数の女子たちが群がりだす。いきなりのことで航も困惑しており、仕方なく別の席を探そうとその場から離れようとした時だ。一夏が彼に気付き、声をかける。
「お、航おはよう」
「ああ、おはよ一夏」
女子たちも彼に気付くや、そそくさと1人分の席を開ける。座れということなのだろう。それを無碍にするわけにもいかず、航はおとなしくそこの席に着く。
そして盆をテーブルの上に置いた時だ。一番最初に口にしたのは箒だった。
「そんなに食べるのか……?」
そこにあったのは山盛りのご飯と山盛りのおかずだった。それをみた他の女子も固まっており、一夏もキョトンとしている。
「まあ、朝練してたからお腹空いたし」
「それなら仕方ないか」
それでいいのかと思う女子たち。だが男たちはそんなの関係なしにご飯を食べ始めたため、いまいち納得いかないが一緒に食べ始める。
「そういえば織斑君と篠栗君って仲いいけど友達とかだったの?」
不意に一緒にいた女子に聞かれた。
「ああ、そうだな。俺が小学3年生の時に一夏と箒のいる学校に転校し、そして中学の途中で俺が引っ越したんだ。だから一夏とは一年少しぶりってところか。箒とは……何年ぶりだ?」
「5年ぶりだな」
「ああそうか。時の流れは早いなー」
「だなー。まあ、またこうやって会えたのは嬉しいけど」
「嬉しい?そ、そうか……」
そう言われ顔を赤くする箒。一夏はどうしたんだ?と彼女に顔を近づけたとき、箒の頭から煙が出ており、そのまま箒は一目散にこの場を後にしてしまう。
それにぽかんとする一夏に呆れる航。女子たちは呆れたり楽しそうな顔してたり十人十色で、その後この面子でいろいろ話しながら朝食を食べるのであった。
「怪獣学かー」
「怪獣学だな」
ホームルームも終わり休み時間。現在男2人はお互い席に着いて次の授業の準備をしていた。
「なあ航。怪獣学ってどんなのか分かるか?」
「えっと、たしかゴジラ襲撃後にできたやつで―――」
航が話そうとしたときに余鈴が鳴り、他の生徒たちも席に着いて授業の準備をする。いったいどんなのか、そのことについて話してるのか周りの生徒もひそひそと何か話している。
そして扉が開き、そこに1人の女性が入って来た。黒い瞳に黒髪のショートヘアーの日本人の先生教師であるから20代だろうが、その柔和な雰囲気は少し彼女を幼く見せる。そして先生は教壇の所に着くと、ぺこりとお辞儀をした。
「みなさんこんにちは。この怪獣学を担当する
「はーい」
これに返事したのは航だけだった。他のクラスメイトは何も言わず、流石に航も驚いたのかつい後ろを振り向いてしまった。
燈はこれが毎度のこととなれているのか愛想笑いを浮かべ、何事もなかったかのように説明に入っていく。
「では怪獣学というのはどういうのかという概要を話していきますね。そもそもこれが出来たのは最初のゴジラ襲撃後ラドン、モスラといった巨大怪獣が現れたことで―――」
―――怪獣学―――
それは日本にしかない対巨大生物用の座学と言える内容の物である。元々日本では1954年のゴジラ襲来から何度も怪獣が出現し、幾度となく窮地に立たされてきた。だがしかし、自衛隊の頑張りもありほとんどは撃退し、それによって得た知識などを今の新しい兵器などを用いて新たな戦術を練られている。
だが2004年のゴジラ襲来を最後に怪獣の出現報告は一気に激減。それによってこれらは少しずつ廃れていってるように思えていたが、IS登場後にできた“いす自(IS自衛隊)”に目をつけ、それによってさらに変化を遂げ今も存在してるのだ。
そして現在もISが多数保有されているIS学園ではこれまで現れた怪獣の紹介、過去の出来事、そして再び現れた際の極力できるであろう対処などを学ぶのである。
「――――ということになります。わかりましたか?」
一部除いてほとんど返事しないが、燈は顔色1つ変えずそのまま説明に戻る。
「そしてゴジラ襲撃から50年経ち、ずっと怪獣が現れてないと思われてますが、実際はそうではありません。ニュースになっていなくてもこのように怪獣はまだ存在しており、ただ人口密集地などに現れないからこちらから攻撃しないだけで、一応今も発信機などを使って居場所が特定されてます。これがその一部ね」
そう言って映しだされたのは、甲の幅が30mはありそうな蟹。鮮やかな翼をもつ2体の巨大な蛾。100mもありそうな巨大な龍のような生物の姿が映し出されていた。
今もこんなにいるのかと驚く生徒たちだが、誰もがとあることが気になっていた。
「どうして攻撃しないのですか?」
「下手に刺激して反撃をもらった際の被害が計り知れないため、現状放置という形にはなっています。ですが何か行動を起こした際にIS数機を使って牽制、鎮圧を行うようにされてます。これがそのISですね」
そして先ほどの画像の上から出された画像は、フランスが作ってる量産型ISラファール・リヴァイブの姿だった。だが通常のラファール・リヴァイブとちがい、スラスターの大型化、頭部に特殊なバイザー、背中にISであまり見られない様なマウントラッチが備え付けられており、色も迷彩色が主となっていた。
「これらは対巨大生物用として暫定的に作られた兵装で、
気を引き付ける。それを聞いたとき何人かピンと来たのか少し顔を青くする。だが大半は気づいてないのか「それならさっさと倒せばいい」「それじゃ税金の無駄」と言っている。毎年の事なのか燈も小さくため息を吐いて肩を落とし、さっさと授業に入ることにした。
「……では今回の怪獣はこちら。今から丁度100年前に登場した怪獣、1954年に日本に上陸したゴジラですね。身長50m。体重は推定2万トンとされており、ジュラ紀に生息していた陸上過渡期の水生生物がビキニ環礁の核実験で目覚めた姿、と通説では言われてますね」
そして燈は白黒であるがゴジラの画像を何枚も展開する。燃え上がる東京を蹂躙するゴジラの姿は見る者を圧倒するかのような姿をしているが、今の子にとってはそれが分からないのか、だいたいが少しつまらなそうな顔だ。
「そしてゴジラですが、マーシャル諸島ラゴス島にいたこの恐竜が度重なる核実験であの姿に変貌したとも言われており、それを裏付ける証拠もあります。それがこの画像ね」
そこに映し出されたのは古ぼけた写真の画像であるが、1体の恐竜が映っていた。黒くゴツゴツとした地肌。ティラノサウルスみたいに肉食獣にしては頭の比率が小さい。そしてその手は他の肉食恐竜と違って太くがっしりしており、4本の指が生えていた。
「ゴジラザウルス。身長12mの恐らく肉食で、先ほど言った通りマーシャル諸島のゴラス島に生息していた生物ね。この恐竜が初めて発見されたのは1944年太平洋戦争の真っただ中で、当時ここを防衛していた日本軍が一番最初に発見したと言われてます。ただこの時の姿から戦艦の主砲を数発食らうもそれに耐え、この島に上陸したアメリカ軍兵士をすべて倒したと言われてますね。ただその後、マーシャル諸島では核実験が行われ、それによってゴジラザウルスはゴジラに変貌したと言われてます。ちなみに砲撃した戦艦アイオワからの写真もちゃんと残ってるのですよ?」
その画像は白黒でとても荒いものであったが、2本足で立ったナニカの上半身が砲撃による煙で覆われた姿が写されていた。だがしかしそれでも健在である画像も出され、誰もがその姿に驚いた。
彼女たちもISの知識を持っている。そのため砲の威力はとても高いというのは誰もが分かっているが、この時から耐えるとは……。
「では54年に登場したゴジラについて戻りましょうか。目覚めたゴジラは小笠原諸島大戸島に上陸。そこを蹂躙した後再び海に消え、フリゲート艦隊によって機雷攻撃が行われるけど2度目は日本本土、東京に上陸。最初に品川を中心に街を蹂躙し、その後海に消えますが、再び現れたゴジラは戦車などの攻撃をものともせず皇居をぐるりと回るように東京を火の海にし、再び海に消えました。それにより東京は壊滅。死者行方不明者多数で、1945年の東京空襲の二の舞となったのです」
その時出された画像は、まるで戦争映画を見てるような錯覚を覚えさせるほどの凄惨なものだった。東京は火の海と化し、その中を1体の怪獣が口から火を吐きながら闊歩している。
これがゴジラ。戦後9年で復興を遂げていた首都東京は再び焼かれ、地獄絵図と化していた。
「ですがこのゴジラは人間の手で葬られます。その薬品の名前はオキシジェンデストロイヤーと呼ばれ、今展開された画像の物になります、これは酸素破壊剤とも呼ばれてましたが、これを浴びたゴジラは絶命、白骨化。そして後にこの骨を使い、2体目のゴジラを駆逐するため三式機龍が作られます。……ここまでがこのゴジラの現れてから最期までの記録ですね。ちなみにこの時のゴジラの皮膚は戦車の砲撃でびくともせず、5万ボルトの電流を浴びても怯みもしなかったと言われています。そして口から出す白熱光は、当時の現行するどんなものも焼き払うだけの火力と多量の放射能を帯びており、離れていても被爆するという恐ろしい物でした」
彼女たちにとってはいろいろと衝撃だった。正直彼女たちは怪獣というものを舐めていた。たかが大きな火を噴くトカゲとしか思ってなく、1体でここまでやるのは知らなかった。
だがしかし、それでもISの方がと思うのが多数で、納得いかなそうな顔を何人かしている。
「さて、次回は1999年に現れた2体目のゴジラとなります。では最後に質問のある生徒はいますか?」
この時手を挙げたのは一夏だった。
「はい、織斑君」
「えーっと……先生はISでゴジラを倒せると思いますか?」
「それは……」
沈黙が襲った。正直これは誰もが気になってることだった。いや、大半の女子たちはISの方が強いと思っており、正直この質問は聞くだけ無駄と思っていた。
「……どうでしょうね。過去現れた怪獣の中でならISで倒せる、迎撃できるのは多々いますがゴジラはわかりません。この54年現れたゴジラも、核実験に耐えたのならそれだけ核攻撃に耐える頑丈な皮膚も持っており、それにダメージを通すには砲弾などを用いなければなりません。ただこのゴジラならISを用いれば撃退するのは難しくはないと思います。ですがその後現れた2体目のゴジラについては、私もまだそこまで答えは出てませんね……。正直、場合によっては迎撃も難しいかと」
「先生!ISが弱いって言うんですか!?」
「そんなの間違ってると思います!」
いろいろと文句を言う女子生徒たち。その声は次第に大きくなっていき、静かにしていた子たちはそのうるささに震えだしていた。そして誰かがうるさいと叫ぼうとした時だ。
パァン!
燈が強く手を叩いたのだ。それで一気にシンと静かになる教室。
「さて、少し静かにしてください。私はISが強い弱いとは言ってません。正直ISについては適材適所だとは思っています。ただ問題はゴジラ。この50年でどれだけ成長しているか全く予想が付かず、なおかつ今も完全な所在地もつかめていません。
皆さん?今も日本は薄氷の上の平和だということを忘れないでくださいね?」
「……どうしてそこまでゴジラを危険視するんですか」
ブスッとした顔で尋ねる生徒の1人。だが燈はスゥと薄く笑みを浮かべる。
「そうですね……私の祖母が当時、三式機龍の操縦士をしたことがあるから、と言っておきますね。……では少し時間が空きましたので、あとはチャイムまで復習などをしていてくださいね」
また優しい口調に戻るが、生徒たちはぽかんとしてるだけで、正直勉強してる子は少ない。
何とも言えない空気の中、授業終わりのチャイムが鳴り響くのであった。
リメイク前のもあって、どうやって新しく書くかすごい悩みましたが、どうにかこうにか書きあげることができました。
正直このラファール・リヴァイブ、AGPの山田先生+ラファール・リヴァイブを買ってそれで作り上げてみたいと思ってたり。
では感想等々待ってます。