幻想甲虫録   作:さすらいのエージェント

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かませ虫(最初)DEAD END(犠牲虫)

リリカと日花が魔法の森に出かけているその頃、彼女たちの住処である廃洋館にて。

廃洋館にはリリカの姉にして種族は同じく騒霊である『ルナサ・プリズムリバー』、『メルラン・プリズムリバー』が住んでいる。もちろん彼女たちにもパートナーである甲虫がおり、ルナサは朱色のラコダールツヤクワガタ、メルランは赤いヒメカブトをパートナーとしていた。

ラコダールツヤクワガタの方は『フォルテ』、ヒメカブトの方は『奏』。姉2人と2匹の甲虫は魔法の森へ出かけた妹とタイゴホンヅノカブトが心配でならなかった。

 

 

ルナサ「大丈夫かな、リリカ。確かリリカってあそこでメンガタカブトとサビイロカブトに襲われたんだよね?」

 

フォルテ「ああ。リリカを連れてきた時あいつ『俺っちが助けてやったぜ』って言ってたしな」

 

メルラン「でもなーんか嫌な予感がするんだよねぇ………」

 

奏「気にしすぎだよメルラン。大丈夫、大丈夫」

 

メルラン「大丈夫って言われても……」

 

 

相棒とは対照的に妹が心配でたまらないルナサとメルラン。とりあえず夕食までには帰ってくるだろうと思い、そのまま待つことにした。

 

 

フォルテ「ところでお前たち、今日の夕食はどうする?」

 

ル・メ・奏「「「カレーでいいよ」」」

 

フォルテ「カレーか………材料あったかな?」

 

 

 

 

 

カレーの材料は全て揃っていた。日はすっかり暮れ、カレー作りがてらリリカと日花の帰りを待つ一同。

ところがいくら待ってもリリカと日花が帰ってこない。どれだけ練習に夢中になっているのだろうかとフォルテは思った。

時は刻一刻と過ぎ、完全に日没してしまった。時刻は午後6時半過ぎ、カレーはすでに完成している。リリカと日花が帰ってきたら食べようかと思っていたが、あまりにも遅すぎる。

 

 

奏「あ~、お腹空いたよぉ!もうこんな時間なのに帰ってくるの遅スギィ!早くカレー食べたいよぉ!」

 

ルナサ「私だって食べたいわよ!!いくら何でも遅すぎるよ!!やっぱりあの虫たちに襲われてるんじゃないの!?

 

フォルテ「……………」

 

メルラン「ていうかフォルテだけ何で落ち着いてるの!?リリカと日花が心配じゃないの!?」

 

 

空腹のあまり駄々っ子のように足をばたつかせる奏、悪態をつくルナサとメルラン。

そんな中フォルテは目を閉じ、微動だにせずじっとしていた。しかし突然目を開け、ルナサたちに目と体を向けたかと思うと。

 

 

フォルテ「空腹ぐらいで何をガタガタ抜かす!!俺は考え事をしてるんだ、少しでいいから黙ってられないのか!!気が散るだろうが!!

 

 

怒鳴ったフォルテは再び背中を向けて目を閉じ、落ち着いてあることを考え出す。

一方で怒鳴られたルナサたちは身震いしていた。空腹でイライラするのはわかるが、考え事?非常事態だというのに。

 

 

フォルテ(あいつは練習のために魔法の森に行った………日花も心配してあいつの後を追って………ん?待てよ?チンピラ共は自分をボコボコにした日花を恨んでいるん……だよな?それにリリカをレ○プしようとしてたとも言ってたが………)

 

 

フォルテは不穏の空気に包まれた。もしそれが本当なら今頃リリカと日花は。

再び目を開けると、ルナサたちに再び目と体を向けた。

 

 

奏「こ、こ、こ、今度は何?八つ当たり?

 

フォルテ「……さっきは怒鳴ってすまなかった。それよりルナサ。さっき何と言った?あの虫たちだと?」

 

ルナサ「う、うん…そうだけど…どうかしたのフォルテ?」

 

フォルテ「あの虫たち……つまりあのチンピラ共、メンガタとサビーのことか……リリカを襲った虫……魔法の森でメンガタとサビーに………ん!?」

 

 

目を大きく見開くフォルテ。窓の方まで飛び立ち、開けると、地面に降り立った。

 

 

メルラン「どうしたのフォルテ?こんな時間にお散歩する気?」

 

フォルテ「誰がお散歩と言った。リリカと日花を迎えに行くだけだ。それにあいつらに何かあったらすぐに助けなきゃならないだろう。もし日花が言ってたあのチンピラだったら………ダメだ、説明してる暇はない。留守を頼むぞ、お前たち」

 

 

自身の体を高速回転して土煙を起こし、地中に消えていった。先ほどまでフォルテがいた場所には大きな穴がある。

 

 

奏「確かリリカと日花が行ったトコって…………」

 

ルナサ「魔法の森って言ってたわね。フォルテが行っちゃったけど、もう手遅れなんじゃ―――――」

 

メルラン「やめてよ姉さん!それ以上不安にさせないで!今はあの子たちの無事を祈ろうよ!」

 

ルナサ「……うん。それもそうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ところ変わってリリカと日花がいる魔法の森の奥にて。

悪い予感は的中していた。日花以外にもルナサ、メルラン、フォルテの予想は当たっていた。リリカを襲ったチンピラ甲虫ことメンガタとサビーが練習中の最中に急襲してきたのだ。

 

 

日花「お前ら、マジで懲りる気ゼロなんだな。バカなの?いい加減諦めて―――――」

 

メンガタ「諦める?そいつはどうかな?」

 

日花「何?」

 

サビー「『ダンガン』!」

 

 

きりもみ回転しながら日花に体当たりしようとするサビー。日花は余裕綽々で吹き飛ばそうと構えるが。

 

 

日花「バーカ、見え見えだぜ!」

 

サビー「その気になっていた君の姿はお笑いだったよ」

 

リリカ「え………?」

 

 

 

ブーーーーーーン

ガツンッ

 

 

 

リリカ「!!!」

 

日花「なっ!?リリカァ!!」

 

 

そう。最初こそ日花が優勢に立っていたが、サビーが卑怯な手口を使い始めたせいで劣勢に立たされるという展開に陥ってしまった。

ダンガンを食らい、吹き飛ばされたリリカは大木に激突。そのまま崩れ落ちた。

 

 

メンガタ「隙あり!!『ローリングスマッシュ』!!」

 

日花「ブッ!フゲッ!ガハァ!?」

 

 

ローリングスマッシュで日花に左右コンビネーションを決めた後、立て続けに彼を下から担ぎ上げ。

 

 

メンガタ「まだ終わってねぇぞ!『サイドロックボム』!!」

 

日花「グフォ!?

 

 

横に飛び上がって日花を頭から地面に叩き落とした。

 

 

リリカ「うう……ひ、日花…………」

 

メンガタ「食らえ、『ランニングカッター』!」

 

日花「アダダダダダダダダダダダ!!熱い熱い熱い熱い熱い削れる削れるーっ!!

 

 

攻撃の手を緩めることなく立て続けにハサミ技『ランニングカッター』で日花を引きずり回し、とどめに飛び上がって地面に叩きつける。

彼が宙を舞ったところをサビーが回転しながら襲いかかってガッシリとつかみ、地面をタイヤのように転がった。

 

 

サビー「『ダイシャリン』!!」

 

 

当然避けられず、サビーのナゲ技を食らった日花はそのまま空中で放り投げられた。

放り投げられる際、サビーはまるでリリカに狙いを定めたかのようにニヤリと笑ったようにも見えた。

 

 

 

ドオオオオオオオオン

 

 

 

放り投げられた日花はリリカもろとも大木に激突。同時に大木はメキメキと大きな音を立てながら倒れてしまった。

地に倒れ伏した日花とリリカにメンガタとサビーがジリジリ近づいてくる。彼らの目はまるで見下すかのように冷たかった。

 

 

メンガタ「どうだ………このメンガタ様を怒らせるとどうなるか思い知ったか………!

 

サビー「ねえメンガタ、もういっそのこと……見せしめにこいつの前であの女の子を殺した方がいいんじゃないかな?

 

日花「な…………!?」

 

リリカ「ふぇ…………!?」

 

 

殺す!?日花は信じられなかった。憎らしい笑みを浮かべるサビー。

見るとメンガタにも憎らしい笑みが浮かんでいた。

 

 

メンガタ「殺しか……ヘヘ、考えたこともなかったなぁ。こいつは甲虫界の喧嘩番長という看板に泥を塗ったんだ。ついでだから日花もじっくりとなぶり殺すってのも悪くねぇなぁ?

 

サビー「でしょでしょ?僕たちに逆らったらどうなるかこいつらの体に刻ませる……最高のチャンスだよ

 

リリカ「い……いや………待っ……殺さ…ない…で………!」

 

日花「て、テメェら………リリカに手出したら……ただじゃ………」

 

 

なんとかして立ち上がろうとするが、ダメージがよほど大きかったのか、全身に走る痛みで体が思うように動かない。

 

 

???「お前たち、ずいぶん楽しそうなことをしているな。殺しだと?俺も混ぜてくれよ」

 

 

誰かの声が聞こえてきたのはその時だった。まるで地中から聞こえてきたようにも感じる。

だがサビーは何の疑問を抱えることもなく、謎の声にこう返事をした。

 

 

サビー「ん~?誰かは知らないけど、君もこいつら殺したいの?

 

メンガタ「手伝いてぇなら好きにしろ。だがこのメンガタ様の興を冷ますような真似をするなら………って、何だ?」

 

サビー「どうしたのメン……あれ?急に固まってどうしたの?」

 

 

地中から聞こえてきた謎の声にメンガタの動きが止まった。

謎の声を聞いたのはメンガタとサビーだけではない。リリカと日花もしっかり聞いていた。

 

 

リリカ「あ………あの声って………」

 

日花「まさか………」

 

サビー「え?え?」

 

メンガタ「??????」

 

 

リリカと日花にとっては聞き慣れた声だった。状況が飲み込めないメンガタとサビーが首をかしげたその瞬間だった。

 

 

???「オォォォラァァァ!!!

 

 

 

バゴオオオオオオオオオン

 

 

 

サビー「ボヘェェェェェェェェェェェェイ!!?

 

メンガタ「サビィィィィィィィィ!?」

 

 

声の主と思われる謎の物体が地中から飛び出し、サビーを吹き飛ばした。

 

 

???「………『サブマリンアタック』

 

リリカ「あ…あなたは……!?」

 

日花「……その赤っぽい体………お前……まさか………!」

 

 

声の主にしてサビーにサブマリンアタックを決めた物体の正体。一番上の姉が使うパートナーだったのですぐにわかった。

 

 

朱色のラコダール「大丈夫か?リリカ、日花」

 

リリカ「ふ……フォルテさん………!」

 

日花「フォルテ……来てくれたのか………!」

 

 

朱色に染まったラコダールツヤクワガタ、彼の名はフォルテ。ルナサのパートナーにして、あることを何よりも嫌う甲虫だった。

 

 

メンガタ「ウガァァァァ!!誰だ、せっかくいいトコを邪魔しやがってぇ!!」

 

サビー「邪魔も何も、あいつ……」

 

メンガタ「うるせぇ!!ギッタギタのメッタメタにしてバラバラに引き裂いて……や……!?」

 

 

地中から飛び出した物体ことフォルテに目をつけ、睨みつけた途端、驚いて目を丸くした。

 

 

メンガタ「ゲェー!?お、お前は………卑怯なことが大嫌いなクワガタ……フォルテ!!」

 

サビー「ぷ、プリズムリバー三姉妹の怖いクワガタが何でここに来たの!?」

 

フォルテ「リリカ……!」

 

 

痛めつけられてボロボロになったリリカが信じられなかった。

なんてことだ。もう少し早く気づいていれば。フォルテの心境はまさにそうだった。

 

 

リリカ「ご、ごめんね……し…心配かけちゃって……」

 

日花「悪りぃ……俺っちのせいでリリカがボロボロになっちまって……こりゃルナサとメルランと奏に顔向けできねぇな………」

 

フォルテ「何を言うんだ日花。よくやったじゃないか。お前はあのチンピラたちを追い払おうと…リリカを守ろうと全力を出して戦ったんだろう?何も落ち込むことはない……むしろ『自分はよく頑張った』と誇ってもいい。ポジティブになるんだ。自分に自信を持て」

 

日花「フォルテ…………」

 

 

一方で突如現れたフォルテに困惑するメンガタとサビーは。

 

 

サビー「あのクワガタ……もしかしてあの女の子の仲間なんじゃ……」

 

メンガタ「その前にお前、さっき何つった?プリズムリバー三姉妹だと?日花が言ってたリリカって女……まさか…………っ!?」

 

 

甲虫界の喧嘩番長と自称するメンガタもさすがに不安を感じてきた。だがその不安はすぐに恐怖に変わった。

 

 

サビー「ヒェ!?」

 

 

それはサビーも同じだった。フォルテがすでにメンガタとサビーに目を向けており、血走った目で睨みつけていた。

彼の目にこもった色ははもはや憎悪と殺意。抹殺すべき存在として認識していた。同時に彼の体から漂い、立ち上る赤黒いオーラがさらに恐怖を煽らせていた。

 

 

フォルテ「貴様ら………ずいぶん死に急いでるみてぇだなぁ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

メ・サ「「ひ、ヒィィィィィィィィ!!?」」

 

 

フォルテから立ち上る赤黒いオーラはまるで般若のような悪魔のような形をなしているようにも見えた。

すさまじい威圧感とドスの効いた声に畏怖し、震えるメンガタとサビー。

 

 

サビー「や…ややややヤバババババババ…!?これヤバイよメンガタ……!」

 

メンガタ「お、おおおおお前があの女を殺そうとか言うからじゃねぇのか…!?」

 

サビー「な、何言ってるんだよメンガタ……!?き、君が……!」

 

メンガタ「おい!?俺じゃなくてお前だろ!?」

 

フォルテ「ほう………?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

責任をなすりつけ合うチンピラ2匹をよそに、フォルテが日花に目を向けた。

 

 

フォルテ「日花、立てるか?

 

日花「あ、ああ……ま…まだ行けるぜ……(こ、怖ぇぇぇ!!こんなにブチギレてるフォルテ見たことねぇよ!!)」

 

 

日花もフォルテの威圧感に内心恐怖していた。だがそれを表に出さず、おぼつかない足取りで立ち上がり、グッと踏ん張る。

 

 

フォルテ「よし、ならさっさとあいつらをぶっ殺すぞ。二度と俺たちの前に立てねぇようにしてやろうじゃねぇか

 

 

目に憎悪と殺意の色を込めたままフォルテはジリジリとメンガタとサビーに近づく。

同時にフォルテについていくように日花も彼らに近づいた。

 

 

サビー「や、ヤバイ…どうしよう……こっち来たよ……!」

 

メンガタ「………ち、チクショォォォ!!こうなったらやってやらぁ!!サビー、もうヤケクソだ!!ヤケクソであいつらをぶっ殺すぞ!!

 

サビー「え゛!?え゛え゛え゛え゛えええええええええええ!?」

 

 

準備が整っていないことを機会に、フォルテは地中に潜って姿を消した。まるでリリカと日花を探しに行く時と同じように。

そして突然現れた時と同じように地中から飛び出し、サビーを吹き飛ばした。

 

 

フォルテ「『サブマリンアタック』!!」

 

サビー「アラァァァァァァァァァァ!?」

 

フォルテ「いちいちオーバーなんだよ、かませ犬が……いや、虫だからかませ虫か」

 

サビー「こ、このぉ!」

 

 

羽を広げ、ダンガンを食らわせようとするが、真っ先に突撃したのはフォルテだ。

 

 

フォルテ「遅い。『サイクロンホイップ』

 

 

 

ブォンブォンブォンブォンブォン

 

 

 

サビー「ギニャアアアアァァアァアア!!目が回るゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

相手を軸に懐に入り、竜巻のように回転する技『サイクロンホイップ』。サビーが目を回したのを確認すると、そのまま放り投げた。

宙を舞い、なす術もなく地に落ちるサビー。彼が翻弄されている一方でも日花はメンガタと対峙していた。

あれだけのダメージを受けたにもかかわらず、メンガタの攻撃を何度もギリギリでかわしている。

 

 

メンガタ「動くのがやっとなくせに、ちょこまかちょこまかと俺様をバカにしやがって!」

 

日花「元はと言えばお前らがリリカをあんな目に遭わせやがったんだ………覚悟はいいか?俺っちはできている!!

 

 

目をカッと大きく見開き、次の攻撃に備える日花。

 

 

メンガタ「ほざけ!!『サイド』―――――」

 

日花「『アクセルグライド』!!」

 

 

メンガタが放とうとしたサイドロックボムをアクセルグライドでかわし、円を描くようにメンガタの様子をうかがう。

背後に回ったところで飛び上がり、上から挟み込んで地面にねじ込んだ。

 

 

メンガタ「ゴヘェ!?」

 

日花「さあ、立てよド三流!お前らは戦いを舐めてるから言っても無駄かもしれねぇけど……フォルテが言ってた『誇ってもいい』、俺っちの務め『リリカを守る』…そうさ、負けて何が悪い!負けたからこそまた戦う時、次は勝つと信じれば必ず勝てるんだ!!リリカは誰にも殺させない!俺っちのリリカを守る気持ちがある限り、俺っちの不屈の炎は無限大だ!!」

 

メンガタ「笑わせるな!!戦いごっこと友情ごっこなら向こうで仲良く遊んでやがれ!!『ランニング』―――――」

 

日花「『ヘッドスピンラッシュ』!!」

 

メンガタ「ガダァァァァァ!?」

 

 

技の名前を言い切る前にヘッドスピンラッシュで攻撃。もはや日花の攻撃は先ほどの仕返しと言わんばかりだった。

 

 

サビー「い、痛いよぉ………」

 

メンガタ「くっ……これはマジでヤベェな……」

 

 

共に翻弄された2匹のチンピラ甲虫は日花に負けないぐらいボロボロ。いつ降伏してもおかしくない状態だった。

 

 

メンガタ「やっぱり……サビーに従うべきだったか………?やっぱり……ここは逃げるべきだったか………?」

 

フォ・日「「逃がすとでも思ってんのか?」」

 

メ・サ「「ゲェ!?」」

 

 

全て聞こえていた。フォルテはサビーの前に、日花はメンガタの前にいつの間にか立ちはだかっている。

 

 

フォルテ「貴様ら……ついでに言っておくがな、『ぶっ殺す』と思った時点でなぁ……

 

 

再びドスの効いた声を出し、それと同時に大顎でサビーの首を挟む。

 

 

サビー「ガッ!?」

 

フォルテ「すでに終わってんだ!!『デビルスリーパー』!!

 

 

 

ゴギャアッ

 

 

 

サビー「グギャアアアァァァァアアアァアァアァアアアアァァアアァァァァァァアアアアアァアァァァァア!!!!

 

メンガタ「サビィィィィィィィィィィィィィ!!!!

 

 

大顎で相手の首を挟んで一気にへし折る痛々しいハサミ技『デビルスリーパー』。

サビーの首がへし折られたのを見て絶叫したメンガタ。だがそれが大きな命取りとなった。

 

 

日花「オラァ!」

 

 

隙だらけとなったメンガタに日花が襲いかかり、メンガタをかち上げ、かつぎ上げたのだ。

 

 

日花「これに懲りたらぁ!」

 

 

メンガタを担ぎ上げたまま横に飛んで頭から地面に叩きつけ、その反動でさらに高く飛び上がり。

 

 

日花「二度と俺っちとリリカの前に現れるなぁ!!『スーパーサイドロックボム』!!」

 

 

 

ゴシャアッ

 

 

 

メンガタ「ぐわらば!!

 

サビー「ギャス!?

 

 

とどめと言わんばかりにサビーめがけて叩き落とした。これが日花のナゲ技にして究極必殺技『スーパーサイドロックボム』である。

 

 

日花「い、イテテテテテ………」

 

 

こればかりは無茶が祟ったのか、足をふらつかせて転んでしまった。

 

 

メンガタ「ち、チクショォォォォォ!!フォルテさえいなければァァ!!覚えてろォォォォ!!」

 

サビー「ま、待ってよメンガタァァァァ!」

 

 

もはや彼らにはチンピラという言葉はどこにもなく、かませ犬ならぬかませ虫に成り下がっていた。

かませ虫の遠吠えをしながら逃げるメンガタ、逃げる彼を追うサビー。フォルテと日花にとっては耳に心地よい声だった。

 

 

フォルテ「ハッ、二度と俺たちの前に現れるな」

 

 

それからフォルテは負傷したリリカと日花の元に寄り、安否の確認のため声をかけた。

 

 

フォルテ「おい日花、リリカ、生きてるか?しっかりしろ」

 

日花「ヘヘ……ちょっと…無茶しすぎちゃったよ……」

 

リリカ「私も……なんとか大丈夫……」

 

フォルテ「ならよかった…命に別状がなくて何よりだ。さあ、帰ろう。今夜はカレーだ、姉さんたちが腹空かせて待ってるぞ。立てるか?」

 

リリカ「ご心配なく………」

 

日花「奏の奴『お腹空いたよー!!』ってスッゲェ騒いでるだろうなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、敗走したメンガタとサビーだが、香霖堂のシグルドに頼んで新しい技を手に入れようとしていた。日花のように究極必殺技を使えられるようになれば勝てるかもしれないと思ったのだろう、求めていたのは『スーパーローリングスマッシュ』と『スーパーダイシャリン』だった。

サビーを外で待たせ、メンガタが鼻息荒く扉を乱暴に開け、店内に入る。

 

 

和長「いらっしゃいませー」

 

メンガタ「おい!!技屋はどうした!!シグルドのおっさんはどこだ!?いつもここにいたじゃねぇか!!」

 

霖之助「ああ……彼なら住み込みで仕事してるけど、移動販売に行ったっきり帰ってきてないよ」

 

 

机に置かれたサクランボの形をした紙にはこう書かれている。

 

 

 

【店内にてご用がある方は移動販売が行われていない日に】

 

 

 

メンガタ「ざけんな!!あいつがいねぇと困るんだよ!!俺たちには新しい技が必要なんだ!!『スーパーローリングスマッシュ』『スーパーダイシャリン』を出しやがれ!!」

 

和長「新しい技かぁ……そんなこと言われてもこっちが困りますよ。えっと、メンガタさんだっけ?あなたカルシウム足りてないんじゃないですか?牛乳あげますから、それ飲んで落ち着いてくださいな」

 

メンガタ「もういい!!」

 

和長「ありがとうございましたー」

 

 

乱暴に扉を閉めて出ていった。その様子を見ていた霖之助はため息をついた。

 

 

霖之助「やれやれ…彼にはビタミンも摂取してほしいんだけどね……」

 

 

香霖堂を出たメンガタだったが、店から出るなりすぐに異変を感じた。

誰かに連れ去られたか?サビーがどこにもいないのだ。

 

 

メンガタ「サビー?おい、サビー!?どこ行きやがったあいつ!」

 

 

その時だった。闇の奥深くから悲鳴が聞こえてきたのは。

だがその悲鳴はサビーのものではない。もしかすると人間か?メンガタは悲鳴が聞こえた場所へすぐさま向かうことにした。

 

 

 

 

 

これが彼を巻き込む悲劇とは知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンガタ「確かこの辺だよな?悲鳴が聞こえたのって………」

 

 

辺りを見回すと、ふとある甲虫に目が止まった。

香霖堂の前から姿を消したサビイロカブトのサビーだった。

 

 

メンガタ「サビー、何してんだこんなトコで。急にいなくなったからびっくりしたぞ」

 

サビー「……………」

 

 

だがサビーは何かに怯えている様子だった。メンガタに声をかけられてもただ震えるだけで何もしゃべらない。

 

 

メンガタ「そんなことより技屋がいなかったから探しに………おい、さっきから何黙ってんだ?」

 

サビー「……………」

 

メンガタ「黙ってちゃわかんねぇだろうが。あっちに何かある………!?」

 

 

サビーが怯えながら向けていた視線にはある恐ろしい光景があった。その視線に目を向けたメンガタも愕然とした。

 

 

 

グチャッ

ズズズズッ

 

 

 

彼らが目の当たりにしたものは血を流しながら倒れている人間。

そして1匹のギラファノコギリクワガタ………遺体の血をすするディアボロの姿。

 

 

ディアボロ「チッ、こいつもまずい。どうして幻想郷にはこんなまずいものばっかしかねぇんだ………!」

 

サビー「あ、あわわわわわ……!」

 

メンガタ「あいつ………噂で聞いたことがあるぞ………ディアボロ……だったか?」

 

ディアボロ「あ?」

 

 

血をすすることに夢中でメンガタとサビーに気づかなかったディアボロだが、話し声を聞くや否や彼らに視線を向けた。

 

 

ディアボロ「……何だ、クソガキ共か。ちょうどいい…まずい奴の血ばかりで飽き飽きしていたところだ、次は貴様らを食らうとしよう」

 

サビー「ひ、ヒエエエエエエエエエエエ!!に、逃げようよメンガタ!!」

 

メンガタ「いや、この際あいつを殺せば……あるいは……」

 

サビー「何言ってんのメンガタ……!?ね、ねえ……これホントに逃げた方がいいよ……!」

 

メンガタ「バカ野郎!!今さらこんなところで尻尾巻いて逃げられるか!!ここで殺せば―――――」

 

 

 

ガォンッ

 

 

 

メンガタ「!?」

 

 

突然の風圧がメンガタを襲った。気づけばディアボロが間近におり、サビーがまた大顎に挟まれていた。

 

 

メンガタ「サビー!?」

 

ディアボロ「甲虫以下風情が俺を殺せると思ってんのか?ヴァカめ……!」

 

サビー「い…嫌ぁ…メンガタ……助けて……!」

 

ディアボロ「痛すぎて失神すんじゃねぇぞ?いや、貴様はこれから殺されるから失神の『し』の字もねぇか。訂正だ」

 

 

 

ギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコ

 

 

 

サビー「!!!

 

 

内歯で首を切断しようと挟んだまま大回転。だがゲイツのギコギコスラッシュとはまるっきり違う。ディアボロは本当に切断するつもりだった。

ディアボロが使うハサミ技、ゲイツのギコギコスラッシュの上位版。

 

 

ディアボロ「粉砕されねぇだけありがたく思えィ!!『スーパーギコギコスラッシュ』*1!!」

 

 

 

ブシャアアアアアアアアッ

 

 

 

メンガタ「サビィィィィィィィィィィィィィ!!!!

 

 

サビーの切断された頭が宙を舞い、胴体が地に崩れ落ちた。

 

 

ディアボロ「フン、ウォーミングアップにもならねぇな。カスが………!」

 

メンガタ「……………こんの、クソ野郎ォォォォォオオオオォォオオオォォォォオォオオオォオオォォォォオオオオォォオォオォ!!!!

 

 

呆然と立ち尽くしていたメンガタだったが、我に返って何が起きたか改めて思い出した。サビーが殺されたのだ。

怒りを爆発させ、その身に任せてまずはランニングカッターで距離を詰める。怯んだところをさらに追い討ちとして左右コンビネーションを放った。

 

 

メンガタ「クソがァァァァァァ!!『ローリングスマッシュ』!!」

 

 

だが渾身の一撃が決まる前に避けられ、隙ができたところを大顎で挟まれた。

 

 

メンガタ「なっ!?」

 

ディアボロ「こそばゆいな!その程度の攻撃でハサミだのダゲキだの笑わせやがる!」

 

 

そのまま空中へ放り投げ、自身も空中に舞い上がり、メンガタを逆さの状態で抱え込む。

 

 

ディアボロ「『ローリングドライバー』!!」

 

メンガタ「グブゥ!?

 

 

ドライバーで板にネジを入れるかのように回転しながら落下し、メンガタを頭から地面にねじ込んだ。

しかしすぐに地面から抜け出したものの、ディアボロが次の技を出そうと距離を遠めに置いていた。

 

 

ディアボロ「弱すぎる。木偶ごときが俺に挑もうとはな。貴様に本当のハサミ技というものを教えてやろう……そして精神もろともへし折ってくれる」

 

 

大顎をギラリと光らせるディアボロ。とどめの一撃を食らわせようとばかりに満身創痍のメンガタに突撃する。

 

 

ディアボロ「ブルルァァァァァァァァ!!

 

メンガタ「何が本当のハサミ技だ………ふざけんじゃ―――――」

 

ディアボロ「『G・ネックブリーカー』*2!!

 

 

 

ゴリュウッ

 

 

 

大顎がメンガタの頭を挟み、一気にねじり上げた。メンガタの頭が変な方向に曲がった。

 

 

メンガタ「んなこと…………ある………か………よ………………

 

 

精神がへし折られたどころか生命まで失った。

 

 

ディアボロ「最高にぬるい奴らめ………口ほどにもねぇな」

 

 

かくして2匹のかませ虫もといチンピラ甲虫のメンガタとサビーはディアボロに圧倒的な力を見せつけられ、一生を終えた。

ディアボロは夜空に浮かぶ月を見上げると、こんなことを呟いた。

 

 

ディアボロ「………カブトムシのソウゴか。自称ムシキングになるとかほざきやがる小僧に俺の強さを思い知らせてやろう。そして博麗の巫女の血肉を食らってやろうじゃねぇか………!

 

 

不気味な風が辺り一面に吹き、木の枝を揺らした。

*1
元はサバゲノコギリクワガタの技。アダー完結編に登場。YouTubeに転がってるけどメッチャ痛そう。

*2
Gの意味は『ジャイアント』と『ギラファ』の2つ。この技以外にもS・A・S(サタン・エア・スピン)のようにアルファベットで略したものがいくつかある。

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