幻想甲虫録   作:さすらいのエージェント

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この話は『奇跡の真実』、『いざ、紅魔館へ』の間の話になります。
そして天羽々矢さん、お待たせしました。いよいよアダー完結編のラスボスの登場です。


幕間2:白狼天狗のクワガタは変態という名の紳士?害虫?

???「鎧丸とツルギが完治したのはいいものの、またどこかで襲撃に遭ったりしないだろうか……」

 

蓬莱人「まーだエクスはそんなこと気にしてるの?」

 

 

いかにも姫といったようなドレスを着た長髪の少女を背中に乗せ、空を飛ぶカブトムシ。リッキーブルーのように前翅が青白いが、彼の種類はリッキーブルーではない。

 

 

蓬莱人「それにしても驚いたなぁ。永琳に助けられた虫がヘルクレスの亜種……それもあの伝記に載ってた『悪の妖精が最初に出会ったカブトムシ』だったなんて」

 

エクス「何度も言いますが、姫。その虫は外の世界で森の妖精たちと敵対した虫。姿形は似ていても、全くの別人ではありませんか」

 

 

別個体でも悪の妖精ことアダーが最初に出会ったといわれるカブトムシ………彼はヘルクレスエクアトリアヌスブルー。元月の都出身の蓬莱人こと『蓬莱山輝夜』をパートナーとする甲虫である。

輝夜が悲しき過去と罪を背負っていることはエクス自身も知っていた。地上の暮らしに憧れていた輝夜が教育係だった賢者に『蓬莱の薬』を作らせ、それを飲んで罪人となり、輝夜自身が憧れていた地上に賢者と共に追放された過去を背負っていることは全て聞かされていた。

 

 

エクス「永遠亭の手伝いとして……姫を守る者として、誰の指1本も触れさせんぞ。触れさせてなるものか……!」

 

???「ウゾダドンドコドーン!!!ウェェェェェェェェェイ!!!

 

 

叫び声がした方向に目を向けると、ある1匹のヘルクレスオオカブトが山に落ちていくのが見えた。

 

 

輝夜「また守谷神社の虫の不幸体質ね」

 

エクス「厄神が使うクワガタの方がもっと恐ろしいんだがな……後でパワーストーン買ってやろうかな?」

 

 

 

 

 

守谷神社の虫といわれるヘルクレスが落ちた山へ向かい、彼を探すことになった輝夜とエクス。

だが山といってもただの山ではなく、『妖怪の山』と呼ばれていた。

 

 

輝夜「確かこの辺に落ちたはずなんだけど………」

 

エクス「姫、それよりも何よりも妖怪の山には幻想郷きっての変態という名の紳士?害虫?とにかく、奴がどこかに潜んでいるかもしれませんので気をつけてください」

 

輝夜「ここにはあのクワガタなんかいないわよ」

 

 

輝夜は平然と答え、エクスは心配になってしまった。

だがすぐに機転を変えると、こんなことを問う。

 

 

エクス「……ところで姫。姫は私のことをどう思っていますか?」

 

輝夜「頼り甲斐のある虫って思ってるわよ。それにあなた、前に私の過去聞いた時………ボロ泣きしてたじゃない。それにパートナーとして私を守ってくれてることは感謝したくてもしきれない。あなたが私のパートナーになった時のこと、私が永琳から外出許可もらったこと覚えてる?」

 

エクス「今でも鮮明に覚えていますが、それが何か?」

 

輝夜「最初あなたみたいなヘルクレスの亜種はすごく珍しいと思ってたけど、永遠亭の手伝いとして一生懸命働いてくれたり、いろんな野良虫の襲撃から守ってくれたり……そして今みたく私を遊覧飛行で楽しませてくれて嫌なこと全部忘れさせようとしたり、私たちはあなたのことを邪魔なんて一度も思ってないわよ?あなたがいるだけで永遠亭はとても賑やかなの」

 

エクス「姫………」

 

 

言葉を紡ごうとしたエクスだが、輝夜の背後からある1匹のクワガタが迫ってきているなどまだ知らなかった。エクスと話している輝夜ももちろんそのクワガタの存在に気づくわけがない。

 

 

???「下着見せてー!!

 

輝夜「ギャー!!//////」

 

 

輝夜の背後から現れたのはどこにでもいる普通のミヤマクワガタだった。

スカートをめくられ、スラッとした足とパンツがあらわになると同時に悲鳴をあげながら顔を真っ赤にする。

 

 

エクス「姫!?」

 

ミヤマクワガタ「今日は白か……いや~、やっぱり永遠亭のお姫様って見た目もパンツも上品で最高ですな~!どれ、もっと拝見させてもらいましょうか!『センプウ』!」

 

 

ミヤマクワガタは羽を広げると、地面を滑るように輝夜の周りを高速で飛び回る。

するとどうだろうか、輝夜のスカートが先ほどより大きくめくれ上がり、輝夜の上半身が隠れる。

 

 

輝夜「いやあああああ!!何するのよー!!やめてぇ!!パンツ見ないでぇぇぇ!!//////」

 

ミヤマクワガタ「フッハハハハ!スカートめくりなぞこの『夜摩』様にとって赤子の手をひねるより楽な作業よ!お姫様のスカートよ、もっともっと舞い上がれ!このまま脱げる勢いで舞い上がれぇぇぇぇ!!」

 

 

夜摩と名乗るミヤマクワガタはさらに速度を上げ、輝夜はめくれ上がったスカートを押さえようとする。

だが夜摩は全く知らない。輝夜のスカートめくりに夢中になりすぎたその天罰が下ることを。

 

 

夜摩「俺はパンツの他にもジャイアントなパイオツも好きだー!!白パンツ万歳!!!ピンクパンツ万歳!!!ジャイアントパイオツ万歳!!!万歳!!!万歳!!!バンザーイ!!!!バンザァァァァァイ!!!!

 

輝夜「~~~~~~~~~~!!//////」

 

 

 

バゴンッ

 

 

 

夜摩「ドギャス!?

 

 

唐突に中断される高速回転。体に激痛が走ると同時に数メートル吹き飛ばされた。

 

 

夜摩「ちょ……痛いんですけど!誰ですか!せっかくの楽しみを邪魔する奴は!」

 

エクス「…………姫に手を出す奴は何者だろうと断じて許さん」

 

夜摩「ゲェ!?え……えええエエエ………エクアトリアヌヌヌスブルルルルゥゥゥ!?

 

 

そう、スカートめくりを楽しむ夜摩を吹き飛ばせるのはエクスしかいなかった。

 

 

輝夜「え、エクスゥ……!//////」

 

 

輝夜は赤面しながら涙目でめくられたスカートを押さえている。

 

 

エクス「夜摩、貴様………俺の前でよくそんなことが堂々とできるなァァァァァァ!!!

 

 

激昂しながら吹き飛ばされた夜摩めがけて突進するエクス。そのまま自身の巨体を夜摩にぶつけるのかと思いきや、彼を踏み台にして空中に舞い上がった。

エクスは空中で宙返りすると、そのまま自身が踏み台にした夜摩めがけて落下。

 

 

エクス「『サマーソルトプレス』!!」

 

夜摩「ブナシメジッ!!

 

 

動くこともできないまま夜摩はエクスの巨体に押し潰された。

 

 

夜摩「い、痛い……」

 

エクス「戦いとは痛いものだ。調子に乗るのも大概にしろよ?この女にとっての害虫という名の変態め!」

 

夜摩「が、害虫だって!?違うもん、害虫でも変態でもないもん!仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ!」

 

エクス「やっぱり変態じゃねぇか!!ふざけんじゃねぇぞ!!テメェのその首引きちぎってやろうか!!

 

 

エクスは頭角と胸角で夜摩を挟み込むと、そのまま振り回し、空中へ放り投げる。

 

 

エクス「野郎オブクラッシャァァァァァアア!!『クロスダイブ』!!」

 

 

そして羽を広げ、地に落ちる直前の夜摩を回転しながら飛びかかってつかみ、地面に押さえ込むように引きずった。

 

 

夜摩「な、何なんだよ……この強さマジで半端じゃねぇ……!しかもさっきからずっとあいつのターンって……俺がいつもパイタッチに使ってる技も究極必殺技も何もかも出せねぇ……!」

 

エクス「オラ、立てよクソ野郎………覚悟しろよド変態クソビッチ野郎………テメェは俺を怒らせた………!

 

夜摩「わっ……許してくださーーーいッ!!」

 

 

追い討ちをかけるようにすさまじい剣幕で夜摩にジリジリと近寄るエクス。彼の激しい怒りに恐怖しながら許しを請う夜摩。

 

 

エクス「許しはテメェが泣かせた姫に請いな。俺は最初からテメェを許す気はねぇんだ

 

夜摩「お、お願いです!!今回だけはマジで見逃してください!!見逃してくれたらうちのパートナーの100の秘密全部教えてあげますから!!幻想郷の住人たちのバストサイズも教えてあげますからぁぁぁぁ!!

 

エクス「やれやれ……テメェ、正真正銘の史上最低な変態虫だぜ……

 

 

エクスにはもはや憎悪と殺意しかなく、抹殺すべき存在として見ていた。

男たちが聞けば興奮しそうな夜摩の命乞い。だがエクスは当然それを飲み込むはずもなく、夜摩をつかむ。

 

 

エクス「テメェのツケは!!!そんなんじゃ払えねぇぜ!!!

 

 

夜摩をつかんだエクスは走り出す。

 

 

エクス「ウォオオオオオオオオオオオ!!

 

夜摩「ひょえええええええええええ!!」

 

エクス「その癖を直してしっかり反省してから出直してこいクソカスがァァァァァ!!!!『ジャベリン』!!!!

 

夜摩「ギィィィィィィヤァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

槍投げのごとく助走をつけ、相手を一気に投げ飛ばす技『ジャベリン』。投げ飛ばされた夜摩はそのまま地面に突き刺さってしまった。

 

 

エクス「この輩め……」

 

 

吐き捨てるように言うと、輝夜の元へ駆けつける。

 

 

エクス「姫、無事ですか?」

 

輝夜「なんとかね。それにしてもあの白狼天狗のミヤマクワガタ、本当にしつけがなっていないわね。どうにかならないのかしら?」

 

白狼天狗「夜摩!仕事サボってこんな所で遊んでたんですね!」

 

輝夜「あら、噂をすれば…」

 

 

夜摩のパートナーである白狼天狗が駆けつけてきた。彼女の名は『犬走椛』といった。

 

 

エクス「夜摩はお前の相棒だろう。あの性格はどうにかならないのか?」

 

椛「それができたら苦労しませんよ……ただあの癖がなければ……もう少し変態でなければ………まあ考えられる程度の優良物件なんですがね………」

 

 

椛はそう言ってため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、妖怪の山に落ちたヘルクレスはというと………。

 

 

???「あのー、俺のこと全部忘れていませんか!?俺の存在空気ですか!?オンドゥルルラギッタンディスカー!!!

 

 

エクスと輝夜が救助に向かったにもかかわらず、夜摩のせいで忘れられ、ずっと地面に突き刺さったままだった。

そのヘルクレスは目が赤く、スペードが刻まれた銀の甲と角を持ち、そこに青と金の差し色が入っている。『ブレイド』、それが彼の名前だった。

 

 

ブレイド「誰でもいいから俺を助けてくださぁぁぁぁい!!!


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