幻想甲虫録   作:さすらいのエージェント

6 / 19
広まった噂

魔理沙「霊夢、ソウゴ!今日の新聞読んだか!?」

 

ソウゴ「何だようるせぇな。もうすぐ朝ご飯なのに」

 

霊夢「ていうかまだその新聞取ってたの?飽きないわねぇ…」

 

ギルティ「飽きないも何も、これ見てくれよ!」

 

 

翌朝、朝食の準備をしていた霊夢とソウゴだったが、ギルティに乗った魔理沙が慌てた様子で飛んできた。

魔理沙の手には幻想郷各地で起こった様々なニュースが載っている新聞『文々。新聞』。一体何だと言わんばかりに霊夢とソウゴは新聞の記事をひと通り読んでみることに。

しばらく無言でいた霊夢とソウゴだったが、やがて目に驚愕の色が現れた。

 

 

霊夢「なっ!?」

 

ソウゴ「……な、何なんだよ……これ…………」

 

 

 

【博麗神社に住むカブトムシ、夢は甲虫の王者にして魔王!?】

 

 

 

霊夢とソウゴは言葉を失った。思い当たる節といえば昨日ソウゴが青太郎を倒し、こいしとウォズによる勝利の儀が行われたことだ。

喧伝すると言っていたウォズだが、あの場にいたのは霊夢、魔理沙の2人とソウゴ、ギルティの2匹。いくら未来から来たウォズでもあっという間に各地にそんな噂を広められるのは不可能な話だ。となればこんなことをするのはあいつしかいない。

ふとソウゴに目を向けた魔理沙とギルティ。どういうわけか歯を食い縛り、体を震わせていた。

 

 

ギルティ「お、おいソウゴ…?」

 

魔理沙「……話しかけない方がいいんじゃね?よく見たらこいつ………怒ってんじゃ?」

 

ソウゴ「…………レだよ」ボソッ

 

霊夢「ふぇ?」

 

ソウゴ「正当ギレだよ!!!いくらウォズでも幻想郷各地に『俺がムシキングになる』って噂広める力持ってると思うか!!?みんな聞いてねぇだろ!!!霊夢も、魔理沙も、こいしも、俺も、橙も、ケイジロウさんも!!!ギルティだってそう思ってただろ!!?

 

ギルティ「朝から声デッケェな……ひと目見てすぐわかっちまったよ。てことは………あの噂広めたのは………あの天狗なんじゃねぇのか?白狼と電波使う奴じゃない奴」

 

ソウゴ「そうかそうか、あの烏天狗か…………

 

 

改めて噂を広めたであろう烏天狗への殺意を飛ばすソウゴであった。

 

 

魔理沙「………後でゼリー買ってやるから落ち着いてくれ」

 

ソウゴ「え、ゼリー!?マジで!?何味!?」

 

 

魔理沙のゼリーという一言で一変したソウゴ。目を輝かせながら何味のゼリーを買ってくれるのか問うた。

 

 

霊夢「何でソウゴたち甲虫ってゼリーとか果物とかで怒りが鎮まるのかしら」

 

ギルティ「悪りぃ、その辺は俺も知らん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、地底にて。

 

 

さとり「ん?どうかしましたかウォズさん?」

 

 

旧地獄のほぼ中央に建てられた巨大な屋敷、地霊殿。その当主でありこいしの姉であるさとりが急に箸を止めたウォズに声をかけた。霊夢とソウゴが新聞を読んでいた頃、さとりたちは朝食の最中だった。

 

 

ウォズ「失礼、どこからか我が魔王の殺意が飛んできた気がしてね。ところで君たちは新聞を読んだのかい?我が魔王の件なんだが―――――」

 

八咫烏「うにゅ?『ちり紙を食ったのかい』?」

 

赤紫のタランドゥス「え!?ちり紙食べたのお空!?」

 

火車「いや、何でそうなるの?」

 

さとり「そこじゃないわよお燐」

 

 

どこをどう聞き間違えたらそうなると言わんばかりの八咫烏と彼女の相棒であろう、それに乗ってしまう赤紫のタランドゥスツヤクワガタ。お気に入りだろうか、彼の右の大顎には赤いスカーフが巻かれている。

名は八咫烏の方は『霊烏路空』。タランドゥスツヤクワガタの方は『ライジングキャッスル』、コードネームは『赤羽』。灼熱地獄跡の温度調節の仕事をしているペットと甲虫だった。

 

 

ベレー帽のクロゴホンヅノ「素で言うからな、お空は。ハハハ」

 

 

お燐と呼ばれた猫耳と三つ編みの火車の相棒であり、ベレー帽を被った青白いクロゴホンヅノカブトがいつものことさといった表情をし、笑いながらジュースを飲む。

名を『キュアノスリュコス』、コードネームは『青羽』。お燐と呼ばれるゴスロリ風のペットこと火車『火焔猫燐』と共に旧地獄で死体運びの仕事をしている。だが本人曰く、慣れないとのこと。いつも運び終えるたびに燐に見えない場所で吐いているんだとか………。

 

 

ニット帽のファブリースノコギリ「それでウォズ、何の話?」

 

 

そしてさとりの相棒であるファブリースノコギリクワガタがウォズに問う。黄色いニット帽を被り、緑と黄色の美しいグラデーション。その名は『キトゥリノセイレーン』、『黄羽』というコードネームを持っていた。

 

 

ウォズ「我が魔王の件だよ。確かに私は勝利の儀をした……幻想郷中の皆に伝わるのはいいのだが、私はそこまでの影響力はあっただろうか?」

 

こいし「うーん、でもこの新聞書いてる人って『射命丸文』なんだよね」

 

さとり「……またあの烏天狗か

 

ウォズ「………ちょっと急用を思い出した」

 

 

箸を置いたウォズは飛び上がると、こいしの肩の上に乗る。

 

 

ウォズ「こいし、その射命丸の家に案内してくれ」

 

こいし「はーい」

 

セイレーン「ちょちょちょちょちょ!?ウォズ、何しに行くの!?」

 

ウォズ「何って、今から射命丸の家に行って、彼女とじっくりO☆HA☆NA☆SHIしてくるだけだよ。もちろん二度と新聞を作れない程度で説教するつもりさ

 

 

 

ヤリスギィ!

 

 

 

さとり「それ天狗たちにカチ込みしに行くって言ってるようなものよね!?」

 

セイレーン「落ち着いてよウォズ!?いくら何でもまずいよ!」

 

 

ニンマリと悪魔のような笑みを浮かべるウォズにセイレーンは思わず大顎でウォズを挟み、共にこいしの肩から転げ落ちてしまった。

 

 

空「え?『カチ込みゼリーを食べに行く』?」

 

リュコス「いや、どういう耳してるんだ?」

 

ウォズ「全く、黄羽君。なんと乱暴な…」

 

セイレーン「自分でも結構痛い……背中が……」

 

 

体についたホコリを落としながらウォズは再びテーブルに着いた。

だがお互いダメージはあったようだ。セイレーンも床に落ちた際、背中を強打していたのだ。

 

 

燐「ウォズ?後でデザートにゼリーあげるからまずは落ち着こう」

 

ウォズ「安心したまえ。私はいつだって冷静。説教だけで済ませる」

 

さとり「心の中で『射命丸死スベシ、慈悲ハナイ!』って思ってる時点で説得力ないですよ!?」

 

キャッスル「てか、飯の後に行けばいいんじゃねぇのか?こっちは早くお空と一緒に灼熱地獄跡の温度調節しなきゃなんねぇんだから」

 

リュコス「おいおいリーダー!?」

 

ウォズ「………それじゃあ朝食を食べてからにしよう」

 

こいし「その後出発だね~!」

 

燐「………一応…止まった……のかな?」

 

セイレーン「いや、まず止める方法を考えようよ……赤ちゃんと空ちゃんはダメっぽいし………」

 

リュコス「だよなぁ………俺たち地霊殿三羽烏でしっかりしてるのは俺しかいねぇし……リーダー、あんなんでいいのかな………」

 

空「うにゅ?」

 

リュコス(いつも思ってるけど『うにゅ?』じゃねぇよ!よけい心配になるわ!)

 

 

ちなみに赤ちゃんとはセイレーンがキャッスルに対して呼んでいる愛称。リュコスに対しては『青ちゃん』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、人里の鈴奈庵。

 

 

カルボナーラ「………ソウゴ、『王者』と『魔王』の意味わかってるのかな」

 

小鈴「いつもムシキングになるための本読んでたからわかってるんじゃないかな?不吉なことが起こらなければいいんだけど……」

 

 

どうやらこのコンビもあの新聞の記事を読んでいたようだ。

もしソウゴが本当に悪の魔王として君臨したら?カルボナーラはそんなことを想像したが、思わず悪寒で身を震わせてしまった。青ざめると同時に元から青い体がさらに青くなり、青黒い体となった。

 

 

カルボナーラ「……………」ガタガタガタガタガタ

 

小鈴「どうしたのカルボナーラ?風邪でも引いたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、とある場所では………。

 

 

天邪鬼「へー、こいつがねぇ?」

 

オオクワガタ「やっぱり疑って正解だったか…」

 

 

建物の陰で1人の天邪鬼と1匹のオオクワガタが霊夢とソウゴが読んだ同じ新聞の記事に目を通していた。

赤いメッシュが入り、サンダルを履いた天邪鬼の方は『鬼人正邪』。ある異変がきっかけで幻想郷のお尋ね者となった少女だった。黄色い大顎と赤い体が特徴的なオオクワガタの方は正邪の相棒『ゲイツ』。お尋ね者の正邪と手を組み、共に逃げている甲虫である。

記事に目を通したゲイツが真剣な眼差しで正邪に顔を向け、こう言った。

 

 

ゲイツ「あいつは魔王になる。正邪、俺の言いたいことはわかるな?」

 

正邪「わかるわかる。こんな奴が強者に成り上がったら、多くの弱者たちが横たわってしまう。なら、やることはひとつ…」

 

 

正邪の口元がニヤリと不気味に歪む。

 

 

ゲイツ「あいつがいる博麗神社を襲撃するぞ!」

 

正邪「オッケー!」

 

 

自分を倒した博麗の巫女への下克上にもちょうどいい。

すぐに新聞を丸めて地面に投げ捨てた後、正邪とゲイツは見つからないようにその場を去った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。